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ノンミュールジングウールのはなし

goenのウールニットは、ノンミュールジングウール100%の糸を使用しています。

ノンミュールジングウールとは、「ミュールジングをしていないウール」ということです。
では「ミュールジング」とは何か、それは羊の臀部が土や糞で汚れたり、ウジ虫が湧くのを防ぐために、羊の臀部の皮や肉を切り落とす行為です。
麻酔もせず、その後の手当てや処置もされません。
想像するだけで、ぞっとします。

そんな残酷なことをする理由は、「生産効率のため」です。

汚れた毛を刈って選別するより、最初から毛が汚れないように、臀部の皮膚を切り落としておこう、という考え方です。

「生産効率」や「コストパフォーマンス」は、仕事や生活をする上で、必ずついてくる考え方だと思います。
「手間」と「時間」と「金額」を天秤にかけて、何を重視するかを考え、今の自分にとって良いと思う方法を選択する。

安価で、早くて、手間が少ない選択肢があるとしたら、それは忙しい現代人にとって魅力的です。
でも、もしかしたらその背景に、臀部を切り取られる羊のように、大きな犠牲が隠れているかもしれません。

その犠牲に目を向けられるか、自分にとってだけでなく、多くの人やものごとに対して、良いと思える選択肢を選ぶことができるのか、それはその人の想像力や共感性もさることながら、「余裕」も大きく関わってくると思います。

忙しくて、疲れていて、いつも何かに追われているような状態では、目の前のことをこなしていくのが精いっぱいで、目に見えないことに思いを馳せる余裕などないのではないでしょうか。
私も、忙しくて余裕のない時は、ささいなことにイラついて、自分の思い通りにならないことに憤って、他の人やものごとを思いやることが出来なかったことがあります。

自分に余裕がないと、他の人やものごとに、やさしくするのが難しくなると思います。

だからこそ、「手間」と「時間」と「金額」と一緒に、「楽しさ」や「心地よさ」や「クオリティ」も忘れずに天秤にかけて、心が潤う選択をしていきたいと思っています。
そうすることが、他の人やものごとに、思いやりを持って接することにつながるのではないでしょうか。

自分が自分を大切にしたら、他の人やものごとに対しても、やさしくなれるような気がします。

世界は、人やものごとは、円のように循環していて、今日の自分がした選択は、きっといつか自分に帰ってくると、私はそう思っています。

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