書きたいことがなくなってしまったライターの話

久々にプライベートな文章を書いた。

編集者・ライターという仕事柄、日常的に記事を書いたり校正したりしているが、プライベートで何かを書くことなんて、とんとなかった。版元にいたときは週に2・3回はブログを書いていたが、独立してからは週に1度になり、月に1度になり、数ヵ月に一度となり……と、なし崩しに減っていった。

最後に書いたプライベートな文章は、昨年の9月。岩手・北海道へ4泊5日のひとり旅をしたとき、電車での移動時間が長く退屈だったので、ノートパソコンで旅の日記をつけていた。旅の日記の中で、自分は「書きたいことがなくなってしまうのがこわい」と記している。自分の人生が、無感動で、ひどく色あせたもののように思えてしまったのかもしれない。

言葉とは、溢れ出るものだ。時に焦がれるような羨望を込めて、時に世界がバラ色になったような愛を込めて、時に筆舌に尽くしがたいほどの憎しみを込めて、心の底から湧き上がるものだ。だから、やっぱり、自分はうつ病で無感動な日々を送っていたのだろうと思う。認めたくなかったけれど、書きたいことがなかったのだ。

「書きたいことがなくなってしまっていた」という事実を受け入れられたことがうれしい。それでも、どんな感動もやがては色あせてしまう。記憶にから消え去っていく何かを必死に留めたくて、言葉を綴った。

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