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ZOOM G2 FOURが起こした革命

IRでギタースピーカーの挙動を再現することの問題点については下記の記事で触れました。本記事では、その問題を解決したZOOMのG2 FOUR/G2X FOURという製品について紹介します。

IRによるスピーカーシミュレーションの問題を解決

数年前から個人的に「音量で音色が変わると分かっているのに何故音量別にIRを録って切り替えないんだろう」とずっと疑問に思っていたのですが、ついにZoomがそれを製品として実現しました。

2022年12月に発売されたZoomのG2 FOUR / G2X FOURという低価格帯のマルチプロセッサーに注目されている方はまだ少ないかもしれませんが、この機種ではマルチレイヤーIRという上記の問題を解決するIRの実装が行われています。

詳細は製品紹介をご覧頂ければと思いますが、簡潔に言うとIRを様々な音量で収録しておいて音量に応じて切り替えるというものです。音量によってスピーカーの音色が変わってしまうのであれば、それぞれの音色のIRを全部録ってしまえということです。

楽器屋で見かけたらぜひ試してみて欲しいのですが、従来のIRを使った製品と明らかにレスポンスが異なります。生のアンプを弾いた経験が多い人であればあるほどこの違いを感じると思います。

収録IRは全てViViXクオリティ

いくらIRの挙動が現実に近づいたとしても、IR自体の品質が良くなければ効果は半減します。IR収録というのは詰まるところマイキングの技術をデータ化する行為なので、マイクを立てた人間の技術や経験値によって音が大きく変わります。

今回ありがたいことにZOOMから開発協力依頼をいただき、G2 FOURのIR収録を私が全て監修させて頂きました。アンプによってRoyer R-121とShure SM57を使い分けています。

なので、実質ViViX製のIRがよりリアルな挙動で楽しめるプロセッサだと捉えて頂いて概ね間違いありません。

肝心の出音

どれだけ理屈の上で良い音が出ことが予測できたとしても実際の音が良くなっていなければ意味がありません。なので音を聴いて確かめてみて下さい。マルチレイヤーIRはあくまで弾いた時に最も強く違いを感じる技術ではありますが、録音されたものの中でも確かに生々しさは残っているのではないかと思います。

この動画ではギターとオーディオインターフェースの間にはG2X FOURしか挟まっておらず、エフェクター直の音を録音しミックスしています。ただし空間系はDAW側でかけています。バッキングギターにはJCM800のモデリングを使用していますが、JCM800のようなアンプこそIRがダイナミックに制御されることの恩恵を強く受けやすいと感じました。

正直この音が出るならライブで気兼ねなく使えると感じます。G2X FOURはエクスプレッションペダルまで含めてわずか900gほどしかないので、ヘッドレスギターと合わせれば合計約3kgの極悪トラベルリグセットの完成です。

今回録音では使いませんでしたがディレイとリバーブ1種類ずつくらいならギリギリDSPも持つので、よほど込み入った音作りをしない限りはこの1台で事足りそうです。

G2 FOURだけあればいいのか

これに関しては当然NOです。何故ならG2 FOURはあくまで初心者をメインターゲットとして作られているからです。より強力なDSPを搭載しより複雑な処理が出来るプロセッサーはマーケットに沢山ありますし、例えばQuad CortexやTONEX、Kemperのように実物のアンプの音をそのまま取り込むことが出来るわけでもありません。他にも細かいことを言えば

  • MIDI制御ができない

  • センドリターンが無い

  • PCエディタが無い(モバイルエディタはある)

  • 流行りのハイゲインアンプモデル(EVHやFriedman等)が無い

  • アンプブロックとキャビブロックは一体化して切り離せない

と言った点はある程度機材に慣れた人にははがゆいポイントかもしれません。しかし、

  • マルチレイヤーIRという誰も真似していない技術があること

  • それがサウンドクオリティに甚大な影響を与えていること

  • 3万円以下という低価格帯のエフェクターでそれを実現していること

G2 FOURをゲームチェンジャーたらしめています。

ZOOMの技術はこれから時間をかけて世に広まっていき、世界はマルチレイヤーIRの重要性に気付いていくのだと思います。


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