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David Royer氏の生み出したダイナミックマイクMA-D
PR記事であることを最初にお伝えしておきますが、僕がかれこれ8年間RoyerやMojaveのマイクをメインで使い続けているRoyerファンであること、MA-Dが国内入荷したら直ぐに使いたい旨を昨年の夏から宮地楽器さんにご相談していたこと併せてお伝えすることで、この記事の真剣度を感じ取って頂ければ幸いです。
さて、名機R-121を生み出したRoyer LabsのDavid Royer氏の名前は、音楽家なら知らない人が居ないくらい有名ですが、そのRoyer氏のマイクブランドMojaveからこの度初のダイナミックマイクMA-Dが発売されました。
本記事では「ギターを録る」という観点でMA-Dがどのように作用するかをレビューしていきます。
期待と不安の入り交じる海外からの情報
発表されたのは2022年8月で、その時点では
ダイナミックマイク特有のハイミッドのレゾナンスが無いスムースなマイクであること
ボイスやボーカルだけでなく楽器のレコーディングにも使えること
が明かされていました。
先に海外でリリースされ少しずつレビューが集まって来ましたが、動画やオーディオで確認する限りは非常にブライトで、ともすればチープな音という印象だったため、これは今流行りのポッドキャスト用のエントリー層向けのマイクなのではという推察(危惧)をしていました。
価格も$159(最終的に日本円で税込み¥28,600)というリーズナブルな数字だったため、同社のその他のマイクが割と高価格帯であることを考えるとそこも若干の不安ポイントでした。
実際に使ってみて
とりあえず自宅のBognerキャビの前に立ててみました。ポジションはTelefunkenのM81をいつも置いている位置です。数テイク録ってみて分かったことは
やはりブライトに感じる
が、それ以上にハイミッドの威圧的なレゾナンスが居ない開放感が凄い
ローもしっかりと録れているので軽いという印象は無い
危惧していた安っぽさは無い
ということでした。トーンが明るいというよりは、アタックへの食いつきの良さで明るく感じるイメージです。なので、鋭いトランジェントをしっかり拾えると言うことも出来そうです。最終的にはM81よりもやや暗い音 + 距離感のある音を録る気持ちでマイクを立てると丁度良く感じました。
御託はいいから音を聴かせてくれ
と言われそうなので比較動画をどうぞ。ハイライトは冒頭の歪んだギターをGreenbackの前で拾った時のナチュラルな音です。これは今までのエレキギターの録音にあまり無かったタイプの録り音ではないかと思います。
Quad Cortexでも吸ってみましたが非常に弾きやすく、またピッキングが耳に刺さることもないので心地よい音です。リードはこれをメインにしてもいいかもしれない。
MA101fetとMA-Dの関係性が結構面白いなと感じていて、どちらも鋭い音を的確に拾ってくれるのですが、MA101fetの方が上まで伸びているため歪んだエレキギターを録る場合はちょっと邪魔になるかもしれません。その点MA-Dはロックギター向けだなと感じます。
Vintage 30とMA-Dの相性はあんまり良くないかもと思いましたが、他のマイクもまあまあチリチリするのでV30がそういうスピーカーユニットなんだと改めて実感しました。このチリチリは録りの段階で抑えるのが難しそうなので、録ってからDynamic EQ等で削るかいっそユニットをWGSのVeteran 30のようなものに換装するのも手だと思います。
アコースティックギターはMA-Dだとピッキングが鋭めに録れてしまいましたが、もしこの鋭さが邪魔になる場合はR-121を使えば問題ないと思います。鋭い音が欲しい場合は同じくMojaveのSDCのMA100やMA101fetの方が使いやすい音だとは思いますが、MA-Dと主張しているポイントが違うので使い分けも出来そうです。ただSDCはディスコンになってしまったのが非常に悲しい…。
ローの量感はギターとマイクの距離で調節出来ますが、ダイナミクスが均一に録れる感じではないので演奏のムラや粗は目立ちやすいかもしれません。
個人的にはアコギにはJosephsonのe22Sがまとまりがよく一番バランスがとれていて使いやすいと感じています。距離はe22Sが一番離して立てていたのですが、本当にしっかりローを拾いますし、オフアクシスの除去にも優れています。
結局R-121は万能
特にクリーンギターでそう思うのですが、R-121の音は本当にリアリティというか説得力があるので、困ったらまず手を伸ばすのはR-121だなあと改めて認識しました。
とはいえR-121は2023年1月現在で税込み22万円もするので、そう考えるとMA-Dはとりあえずで入手しやすいマイクだなとも思います。音は別物ですが。
もしマイクを組み合わせるとしたら
2本以上のマイクをギターの録音に同時使用することは僕個人はやらないのですが、試しに色々混ぜてみると
R-121 + MA-D
R-121 + MA101fet
はアリだなと思いました。Royer氏のマイクだからなのか「Royer氏が作ったマイクだ」という情報からバイアスを受けて僕が勝手にアリだと感じているのかは何とも言えませんが、混ぜていった時にどちらのキャラも感じられないキメラ的な瞬間があまり無いので、時間と位相さえ合わせてしまえばミックスはしやすいと思います。
ちなみにミックスするとしたらR-121を主体にしてMA-DやMA101fetを足していくのが好きです。MA101fetと組み合わせた方がソリッドになって、MA-Dと組み合わせた方がファットで若干ゆとりのある音という印象でした。
また、うちのBognerキャビの場合2種類のスピーカーユニットが載っているので、V30側をMA-D、GB側をR-121みたいに組み合わせても面白い結果が得られました。
SM57の歪さとM81の使い勝手の良さ
こうして比較するとSM57がいかに歪な存在かがよく分かりますし、これだけ特徴的な音は他のマイクで代用出来ないとも思います。だからこそロック、メタルミュージックで今日もSM57が必要とされ続けているんだろうなと。
SM57が初めてのマイク、というミュージシャンは沢山いると思いますが、SM57以外のマイクを手にした時に初めてSM57の音がどういうもので、何故これが今も定番とされているのか理解出来るかもしれません。
一方ダイナミックマイク的なレゾナンス、クセを持ちつつある程度の使い勝手の良さを両立しているのがTelefunkenのM81です。かれこれ3年ほど使っていますが「57を立てるか〜? いや、うーん…」みたいな時は大体これが解決してくれます。MA-Dは57とは路線があまりにも違うので57と用途が被ることは無さそうです。
まとめ
色んなマイクに触れてしまいましたが改めてMA-Dの印象を纏めると
明るく感じられるが安っぽいわけではない
寧ろローはがっつり録れるのでソースとの距離は気をつけたい
ダイナミックマイク特有の高圧的なレゾナンスが居ないスムースな音
Greenbackと組み合わせた時に抜群に良い
暗めの音を録るつもりで立てるとGood
ただもう少し暗めのトーンだと楽器には使い勝手が良かった
スネアに誰か立ててみて欲しい
という感じでした。これまでのダイナミックマイクとはかなり毛色の異なるマイクなので、これからマイクを集めていく方も既に無数にマイクを持っている方もチェックしてみて下さい。ハマる人には抜群にハマると思いますし、何よりお手頃価格なので導入しやすいと思います。
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