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ダサいバンドアレンジを避ける/狙う方法

大原則

バンドものの中でもとりわけロック、メタルはさじ加減を間違えると致命的にダサくなるという宿命を背負っています。しかもダサくなる条件が文脈によるため、これをしたら必ずダサくなるみたいな禁則を定義しづらいです。

勿論ダサいから駄目というわけではなく、売れてるからダサくないというわけでもありません。20〜40年前のメタルではダサいとクサいは表裏一体で半ば褒め言葉みたいな部分もありますし、ポップロックにおいてはダサいことがフックになって人気に繋がるケースも少なからずあると思います。とは言え、おそらく本人が狙っていないところで生じてしまったダサさはネガティブに捉えられがちです。

この記事では主にクラシックやDTM畑の作曲家がバンドアレンジを行う際ドラム、ベース、ギターについてこれをやる際には注意が必要といったアレンジを列挙した上で、最後にバンドアレンジを身につけるために効く方法をご紹介します。

ドラム

魔のBPM帯150〜170

このBPM帯の8ビートはコミカルに、または古臭くなりがちです。面白い感じの曲にしたい時には絶大な効果を発揮しますが、緊張感が欲しい場面でこのBPM帯を使うとギャップで笑いが生まれることも。例えるなら2時間サスペンスで犯人を追い詰めるシーンでドリフの盆回りをかけるようなチグハグさです。どうしても使いたい場合はハーフテンポに落とす、パターンを複雑にする等なにかしらの工夫をするのがいいでしょう。レコーディングでドラマーに託す場合でもデモが普通の8ビートだったら中々変えづらいと思います。勿論、コントのオチのようなちょっと面白いテンションにしたい時であれば抜群にハマります。

4つ打ちの扱いは慎重に

生ドラムの4つ打ちは出てくるタイミングや上半身のパターンによってかっこよくなったりチープな印象になったりします。良いところで4つ打ちが来るとかっこいいですが、基本的にはスネアとキックは同時に鳴っていない方が無難です。

ドッチータッチー(正式名称ご存知の方教えて下さい)

表拍にキックやスネアとクローズハイハット、裏拍にオープンハイハットがくるパターンは、BPM帯によっては(100〜140くらい?)凄く気持ち良いです。ちょっとハネてもかっこいいですね。ハットじゃなくてライドのカップとかでもいいと思います。が、これを更に早くしていくと前述の魔のBPM帯と4つ打ちの悪い部分が悪魔合体して、突如強烈な幼さに発展します。例えるならオリンピックの400mリレー決勝でクシコスポストや天国と地獄をかけるような違和感です。聴く人によっては強い共感性羞恥を感じます。しかも、このパターンは魔のBPM帯より上までテンポを上げても違和感は無くなるどころかより強くなっていきます。場面が適切であれば勿論問題ありません。

腕と脚の速度限界を考える

腕の本数や脚の本数の限界突破は誰もが最初にやってしまう分かりやすいミスですが、腕と脚がそれぞれどのくらいの速さまでなら動くのか、またその場合1発あたりの強さはどうなるのかは中々イメージしづらいポイントだと思います。2発までなら腕も脚も結構速く動きますが、3発以上は一気に辛くなります。16分3連のキックを片足で3連打させたり16分のハットの刻みの中にスネアを混ぜてみたり、というのは現実味が無くなるので気をつけて下さい。また、連打が速くなればなるほどハードヒットは難しくなります。

ずっと同じことをしない

キックはずっと4分、スネアはずっと2拍と4拍、金物はずっとオープンハイハットの8分、みたいな動きのないパターンはたとえデモだとしても避けた方が良いと思います。楽曲をどう動かしたいのかデモ段階から意思表示するようなドラムトラックを作っておくとドラマーも良い仕事をしてくれます。細かく指定し過ぎるとそれはそれでドラマーのパフォーマンスを下げてしまいますがそれはまた別のお話。

フィルイン1つで楽曲全体が子供っぽくなり得る

これもまた魔のBPM帯に近いのですが、例えばスネアを16分音符でゴースト無しで8連打するフィルインは入れ方を誤ればそれだけで一気に楽曲がチープで子供っぽい雰囲気になります。入れても大丈夫な文脈は経験則で分かってくるものですが、確信が持てない時は避けるのが無難でしょう。フィルインに悩んだらかっこいい曲を分析するのが一番だと思います。

ベース

アクセントの位置を超大事にする

特にキックやギターとアクセントがズレていると仲の悪いバンドなのか心配になります。シンコペーションには十分注意して下さい。

休符の重要性

休符の入らないルート弾きが延々続くと楽曲全体が平坦な印象になります。一回止めることで曲のインパクトが強化され呼吸するようになります。コントラバスやチューバがずっと鳴ってたら変だよねというのと同じです。

繰り返すくらいなら無理に動かなくても大丈夫

ずっとルートにいるのもつまらないですがかといって小刻みに同じ動きを繰り返すとそれはそれでコミカルになります。そうなるくらいならいっそ音程を動かないか、もしくはちゃんと動かしてあげて下さい。(ドラムと息を合わせつつ)

ギターとの関係性

ギターも動く、ベースも動くが成立するのはギターとベースが同じ動きをしている時だけです。ポップスでギターが上の方でコードやアルペジオ、カッティングをしていれば問題ないですがロック、メタルでギターが歪んでいる時はベースとギターは合わせて一つの楽器くらいに思っておいた方が良いです。運指上ギターとのオクターブユニゾンが難しければルートに張り付いているか休符を入れる方が自然です。

ギター

パワーコードには頼り過ぎない

歪んだギターでは3度を抜いても成立する楽器ですが、成立するだけであってそれが望ましいわけではありません。どちらかというとパワーコードバッキングは箸休め的に使った方が楽曲もギターも活きるでしょう。少なくともギターが目立つ場所でのパワーコードバッキングは、これだけロックギターの演奏技法が多種多様に進化した現代となっては避けるべきだと考えられます。アイデアが無ければモックアップすら作らず、譜面でギターが必要な区間を指定するだけでも場合によっては上手くいくかもしれません。

現実的な最低音

昨今のロック/メタルギタリストは多弦ギターを持っている可能性が高いので、ローAあたりまでは恐れずに下がっていいと思います。ただ、6弦ギターでドロップC#以下に下がる必要のある曲についてはギター側のセッティング変更や弦交換が必要になる場合があるので事前にギタリストに確認する方が安全でしょう。

メロディの音価が長くて均一だとギターの良さが出ない

ギターは非常に柔軟な動きが出来る楽器で、鍵盤と違い同音連打にもすこぶる強いですが、音価の長いメロディを弾かせると退屈になりがちです。ゆったりした弦やピアノとのユニゾンで雄大なテーマを弾くみたいな用途には不向きなので、もう少し細かい動きのあるフレーズを任せた方がらしさが出るでしょう。中にはギターで歌い回すのが上手すぎてどんな白玉でも美しく聴かせられるギタリストも存在しますが、それはごく一部のギタリストにのみ与えられたギフトに近いものなのでギタリスト全般に求めるのは避けるべきです。

4度は本当に辛い

ギターでは2〜3弦間の移動を除き基本的には異弦同フレットのインターバルが4度になります。上昇下降問わず1度の跳躍程度であれば問題無いですが、例えばC > F > Bbのようにどんどん4度で上がっていくフレーズやC > F > Cのように4度で往復するような動きはクリーンに音が出しづらいかスピードが出せない可能性が高いです。鍵盤とユニゾンさせる時等は特に気をつけて下さい。(例外的に物理法則を無視する上手さのギタリストもいます)

効果的な訓練法

かっこいいバンドアレンジを身につけるにあたって

・最近のかっこいいバンドの曲を聴く
・バンドを組んでみる

これ以上の訓練法を僕は思いつきません。かっこいいアレンジをかっこいいと感じ、ダサいものをダサいと感じられる肌感覚が無ければどれだけ書籍や記事を読んでもバンドアレンジは身につきません。

でも安心して下さい。オーケストレーションよりは絶対に覚えることは少ないです。

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