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人間の顔面

最近10代の頃に好きだったもの・影響を受けたものに立ち返るような機会が多くあり、幼い脳で自分は何を考え、感じていたのかあらためて知りたくなりました。 

「D[di:]」というアーティストが思春期の自分の神様だったので思い出せる範囲で書き連ねます。
田舎で暮らしていた中学の頃、雑誌でD[di:]さんの絵を一目見て言葉にできない魅力に引き込まれ、居ても立っても居られなくなり過去作を調べて全て取り寄せ貪り読みました。

クレヨンや色鉛筆で重ね塗りして描かれた歯のキャラクターや着ぐるみ姿の醜い少年、なによりツノの生えたパンクな女の子「駄利亜」が大好きでした。

駄利亜ちゃん
バンド・デシネっぽいお洒落さがたまらん可愛さ

キぐるみ、ドニーダーコ、ファンタスティックサイレント、Dさんが当時出していたCDの楽曲、歌詞カードのアートワークに至るまで、全てにかなり影響を受けています。

歌詞カード今見てもめちゃくちゃ可愛い

その中でも1番好きな作品がAngel meat pieという漫画作品。

読みすぎで表紙が汚いです

表紙も装丁も、今見ても全く古くなくて素敵です。

7才の誕生日に天使の肉のパイを食べてから、自分以外の人間全てが“顔面に紙袋を被った姿”に見えてしまう少女エナの物語。大人になりクラブで出会った無垢な少女リカだけが人間の顔面で自分の目にうつり…というあらすじです。

天使の肉のパイ

私は割と小さな頃から人間の姿形、性別、特に皮一枚であるはずの人間の顔面が個々の人生や他人の感性に及ぼす影響(言葉に置き換えるのが難しい)について考えており、人類全員に個別の顔面というものが与えられず全てがフラットであれば、どれだけ楽に動物としての生を全うできるのであろうというような事をよく思索していました。

これらは単純に自身の姿形をうまく受け入れる事が出来ない、思春期特有の感覚ではあるけれど、皮一枚の顔面や容貌で他人を無意識にジャッジする人間の愚かさを描き、破滅から小さな希望に向かっていくこの物語は、当時の自分にとって一種の救いであったように思います。 

(加えて田舎特有の平均的でなければ後ろ指さされる、というような空気感の中に育った故に、他人の目が恐ろしく、また不本意に見世物にされるのはこの世の地獄であるという感覚が私の根底にあったのだと今では思います)

細かいところですが、漫画の下部がパラパラ漫画(?)になっていて、Dというデザイン文字がユラユラ上下に動いて消えるだけなのですが、こういったディテールの細かさと少女的な感性がものすごく好きでした。 

成人してヴァニラ画廊にお世話になりはじめた頃にちょうど画廊でDさんの個展が開催されていて、世界というものは全て地続きだったのかと感動したのを覚えています。

そして世界を分断しているのは自分の意識のみであるという事を悟りました。

#漫画  

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