ウクライナが泥沼化する現況についての雑感

 ウクライナで起きている内戦は周知の通り、米国とロシアの代理戦争となっている。日本の主要メディアは「政府軍による掃討作戦」が順調に進んでいるという文脈で報じられているのが大半のようだ。確かに親露派は、一部の都市から撤退したようだが、戦力を集中させることと農村部へのゲリラ戦という方向に作戦変更しただけなので、「順調」とは言えない状況のようだ。むしろ気になるのは、政府軍による掃討作戦によって、都市部の居住地に砲爆撃を加えるのを含め、住民や自国民の有無に関係なく無差別的に武力行使を行っていて、逆に、東部住民の反発を強めてしまうのではないかという印象を受ける。ベトナム戦争やアフガニスタン戦争の反省もない。なぜここまでキエフ政府がエスカレートするのか、度を越すと、民族浄化のための虐殺ともなりかねない。
 キエフ政府にNATO介入を求める気でもあるんだろうか?そのための意図的な親露派挑発で、その先に、ロシア軍による暴発や部分的介入の誘発という目論見でもあるんだろうか。
 キエフ政府というと、存立の基盤は脆弱で、常に西側諸国に色目を使っているという印象がある。対露戦略として支配基盤を強化するためににも、西側による直接介入を望んでいるのではないだろうか。ただ、独仏はおろか米国の本音は、ウクライナに肩入れする気はさらさらなく、キエフ政府を煽っているのは、周辺のポーランドやバルト三国、ハンガリーといった米軍の進駐を切望する国々という背景があるのかもしれない。
 この辺は1980年のポーランド危機を思えば、軍事介入を一貫して否定した旧ソ連に対して、東ドイツやチェコスロバキアが介入を強く主張した時と酷似している。つまり、キエフ政府は欧米の介入を促すために自国の危機を煽るというマッチポンプになっているんじゃないだろうか。
 武力制圧の強行がもたらすのは、東部の離反独立とロシアの支援を促進させるだけで、ウクライナの一体性維持のためには何の貢献も生まないのは明らかだ。
 このキエフ政府の動きはロシアにとってはどうかというと、迷惑極まりない話となっているんじゃないだろうか。東部のロシア系住民の死傷が急増し、難民となってロシアに流入した50万人を思えばそういう解釈は容易だ。ロシア政府がこれを放置すれば、国内で、ロシア系住民保護という人権尊重の国論が湧き上がり、これを無視できなくなるロシア政府の困惑が想像できる。クリミアで手打ちとしたかったロシアは、このままウクライナの内戦が激化したらしたで、軍事援助をせざるを得なくなるのではないだろうか。

 マレーシア旅客機撃墜事件では、いまだに分からないことが多すぎるので、前段のウクライナ問題との混同は避けたい。意図的か、そうでないか、真偽があいまいな盗聴情報くらいしか現時点ではない。日本政府は「安易な制裁強化には同調しない」としているらしい。「安易」というのは、オバマの平和的解決は、制裁を課して相手が降参するのを待つというパターンしかなく、それも米国の一方的な正義感なので「安易」がついて回っている。日本にとってはロシアは、エネルギー供給国としてなくてはならない存在でもある。

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