市民社会でアベノミクスが成功するためのポイント(考)

 今回の選挙では、安倍政権はまた勝利を得る事になりそうだ。それも、3分の2議席以上かもしれない。「消費税即時増税と公共事業を含めた歳出削減」という「正論」を述べる政党がないのだから、「本来あるべき姿」を描いていた有権者の投票先はない(参照)。また、棄権したとしてもおそらく、大本営発表に踊る人やわずかな利害関係者の支持だけでも、100%、現政権が支持される結果となる。

 結局、第三の矢はどこにもなかった。この選挙は、アベノミクスを問うということになっているが、飛ばなかった第三の矢の不存在を塗りつぶすべく、解散総選挙にでた感は拭えない。これが現政権の大きな問題で、アベノミクスの成果を問うというのは聞こえはいいけど、このまま信任されれば第三の矢は永久に飛ばなくなる可能性もある。

 そこで、だったら安倍政権による(あえてそういうことに)大掛かりな異次元緩和を長期的に成功させるしかない。そこで、私なりに中身をまとめておこうと思う。

 まず単刀直入に言うと、国民の気分を良くすること。成功への鍵は、これに尽きる。
 これまで確実に、ごく一部の産業や、ごく一部の資産所有者にとっては極めて有利な施策だった。そこから生み出された利益をベースに企業が富を増やす施策をとっていけば、徐々に全体が豊かになっていくだろうことは理解できる。残念ながら、そのごく一部の輸出企業の収益が社会に還元されるまでには相当時間がかかるはずで、ある論考によると最低4年(参照)とあった(げっ)。過去の長期の円高で相当痛めつけられた輸出企業にとって、ちょっとぐらい(120円)円安になったからと言って国内に生産拠点を戻すことはまずない。企業収益が上がってもなかなか分配しないのもその根拠になっている。また、その分配も、株式の保有比率の低い日本の年金や個人に対しては、インパクトは低い。国民全体から、所得や支出に影響するような「気分良さ」がまったくない気がする。その空気すら感じられない。これじゃー、アカン。

 次に、長期戦を構えると今はいわば「時間稼ぎ」に過ぎない。と見ると、それを活かさない理由はない。皆さんの大好きな「構造改革」に駒を進めること。その一つが消費税増税と歳出削減による財政再建という話。同時に高齢化社会に広がる様々な問題を踏まえた「税と社会保障の一体改革」が必要だという認識が共通理解だったはず。

 そもそも「消費税増税」と大規模緩和は同じ次元で論じるべきだったという悔恨が残っている。大規模緩和をやった以上消費税増税は不可避というのが大儀だった。人口問題に手をつける前提に、若者の将来への「希望」が重要で、老人の既得権や不平等な年金、投票制度等に着手すべきだ。あろうことか、最高裁が「違憲状態」と、何度も口を酸っぱくして言っていることでもあるが、選挙定員のもとで総選挙をし、自らの正統性を主張しようとしている現政権は、改革に取り組む気持ちがないことが明らかである。このままではまた、構造改革などは後回しにされる。たまったものじゃない。と、不信任したい気持ちが満々である。

 どうだろう?大規模緩和は経済情勢を見ながらの長期戦になるのは間違いないのだが、日本の復活に結びつけるポイントがきちんと満足に進まなければ、ひっくるめて、アベノミクスは失敗したと言わるようになる。それだけならまだしも、国民から笑みが消えてしまう。

 政権党には心して、「信認」を受け止めて欲しい。くれぐれも自民党のご都合による一部の「信認」で逃げないように。

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