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森鴎外著『百物語』読書感想文
『百物語おじさん』
成金は俗世の刺激に飽き足らず、我々庶民には到底理解に及ばない遊びをやっているに違いない、という事実か妄想か定かではないこれらの噂話は、漫画や映画の世界だけにはとどまらず、現実社会でもそれと疑わしいものをよく目にする。気がする。
現代日本には、お金配りおじさん、というお化けが実在する。お金に困っている人をゼロにし、寄付文化を広めようとしている彼のその笑顔は、なんか不気味だ。そ
信州読書会によるトーマス・マン著『トーニオ・クレーガー』の読書会を終えて。
若い頃にあれほど感動したものが、歳を重ねてから触れるとつまらんものになっている事がままある。あれだけ自分の中で輝き続けていたものが、歳を重ねてから触れたばっかりに、ゴミ同然に自分の中で変わってしまった、ということがある。これは結構モチベーションが削がれる。わざわざ触れなければ良かった、と思う。
昔聴いていた音楽をたまに聴く事がある。音楽はあらゆる聴き方があるが、そういう時は大抵ノスタルジーで聴い
ポー著『モルグ街の殺人』読書感想文
『遊び』
そのあまりにも有名な結末だけは以前から耳にしていた。結末を知っているが故に感想文に悩んだ私は、先日の信州読書会による雑談"『モルグ街の殺人』における画期的な形式"を拝聴し、宮澤氏による"結末ではなく、レ・ミゼラブルにおけるジャヴェールとデュパンの違いに注目せよ"、"世界初の推理小説の所以となったその巧みな構成に注目せよ"という言葉を頼りに、改めて本書を読み直した。
両者は共に、謎を解