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森ガキ侑大監督作品『愛に乱暴』(8/30公開):記事では書かない個人的所感篇

「3連休、何しよるん?」
と聞かれて初めて連休であることを知った2024のお盆前。
SNSでも少し書いたのだが、制作系の仕事には「盆前進行」「年末進行」と言われる魔のタームが存在する。

大手はこの時季に長期休暇に入るため、早めに納品する、または休暇明けすぐに必要なことは先に確認を取らねばならない。
特に印刷関係は、工場が止まるのでにっちもさっちもいかないことが多々ある。

(かつてサラリーマン時代、色校正という「色味を確認する」見本を急ぎで届けねばならず、しかも航空便でないと東京まで間に合わないというケースがあり、印刷会社さんに車を出してもらって空港まで持ち込んだことがある。懐かしい。)

そんなわけで、落ち着いて考える仕事を後回しにして原稿やら企画書やらを送る作業で今週はあっという間に終わってしまった。

という1週間だったのだが、追って林田社長から告知があると思うが、今週は、初期TAOのお客さんであり、現在映画監督として活躍されている森ガキ侑大氏に、オンラインで取材させてもらう機会を得た。

8/30に全国公開となる『愛に乱暴』が、森ガキさんの3作目のメガホンとなる。

詳しくはフクリパで書きたいと思っているのだけれど(そう、まさにこれがお盆中の仕事のひとつ)、森ガキさんと話していて、改めて知覚したことを今週は書いてみたい。

さて、この『愛に乱暴』、原作は『悪人』の吉田修一先生。
森ガキさんの作品の考え方には社会派のテーマをエンタメでどう見せるか、という軸があり、本作も、「マイノリティ」へのまなざしを切り取った作品に仕上がっている。
試写で先に拝見したのだが、観る人の立場によって、心がきゅう、となるシーンがそれぞれ違うと思う。

そしてこの作品は、チェコのワールドプレミアにもノミネートされ、快挙を獲得している。チェコ人の解像度の高さに、話を聞いてちょっとびっくりした。
(というあたりも、林田の告知をお楽しみに)

という中、フクリパでの一般的な記事には書かない(書けない)筋が一本あるので、ネタバレにならない範囲で書いてみたい。

本作は、主演が江口のりこさん。
今、飛ぶ鳥を落とす勢いの彼女だが、森ガキさんは彼女が注目される前から「この作品は江口さんしか考えられない」と信じており、本作の主演としてオファーしたそう。
その理由は、観るとよくわかる。
情感的な演技ではなく、本当に、まゆひとつの表情で心理を語る演技。
戸惑いと葛藤を無表情のまま演じられる人は、そうそういない。本人には感情があるのだけれど、それが表情にはなかなか出ないという心理に陥っている(つまりは本人は自覚がないけれども追い込まれている)人の様が見て取れるのだ。

さて。ネタバレにならないと書きながらも、どうしても触れないといけないことが少しだけあるので、「作品を先に観たい」という方はここから先は劇場を出たあとに読んでいただきたいのだけれど(ちなみに原作を先に読まないことを森ガキさんは推奨されている)、それは何かと言うと女性が子どもを産む・産まない問題に帰結する。

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