READ+ vol.2 「人間失格(マンガで読破シリーズ)」

こんにちは。
佐々木です。
本日は昨日とうって変わってかなり寒いですね。くれぐれも体調にはお気をつけくださいませ。

それでは、本日も書評を書いていきたいと思います。

      〜目次〜
  [1]本日の1冊
  [2]はじめに
  [3]内容
     [4]王道・偏見ポイント
  [5]終わりに

[1]本日の1冊  
    人間失格 太宰治 著  (マンガで読破 シリーズ)          
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[2]はじめに

本日紹介する1冊は、太宰治「人間失格」です。日本人なら題名くらいは誰でも聞いたことがあるかと思いますし、授業で読んだ方もいらっしゃるかももしれませんね。私は中学校くらいの授業で「走れメロス」を読んだくらいで、あとは太宰治の本は読んだことはありませんでした。

太宰治って有名だけど、何回も自殺図ったりいつもネガティブなことしか言わなくてなんとなく苦手だと感じる方もいらっしゃるかもしれないですね。中学校の私もまさにそんな感じでしたので、そういう方の気持ちはよくわかります。

中学校で太宰治を読んだとき、「走れメロス」は良かったのですが、なんとなく太宰自身の人柄を好きになれませんでした。

そこから太宰の本は全く読んでませんでしたが、以前"マンガで読破シリーズ"の「雇用・利子および貨幣の一般理論」を読んだ時、原作であれほど意味わからず苦戦してたのが嘘のようにスラスラと読むことが出来ました。

太宰を今読んだら意外に面白いかも、という期待と、人間失格のマンガ版が無料で読めたので、今回読んでみることにしました。

よく、「漫画は子供じみてて、読むに値しない!」と言ってる人を見かけますが、個人的には意味わからない本を苦行のように読むよりも、少しばかり砕けていても内容が理解できるほうが何倍も有益かと個人的には思います。
(かく言う私も、中学生くらいの頃は、漫画は無益だとなぜか思っていたので、頑なに読んできませんでしたが、少し後悔しております。)

中学校くらいの感受性が豊かなときに意味わからないながらも太宰治や芥川龍之介とかの本を呼んで、大学生や社会人になった後に再度読み返した時、自分の感情にどのような変化があるのかを知るのも良いかもしれません。

[3]内容

それでは内容に移ります。
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「弱虫は幸福をさえおそれるのです」 波乱の人生を歩んだ文豪・太宰治が、死の直前に書き上げた傑作自伝的小説を漫画化!【あらすじ】「人間はなぜ生きなければいけないの?」世間を恐れ、道化を装い、周囲を欺き、ありのままの自分を隠してきた少年・葉蔵。やがては葉蔵は拒否することのできない青年へと成長していく。愛を求めながらも他者への恐怖に苦悩する孤独な生涯とは?
(amazonの説明欄より)
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...こちらがマンガで読破版の概要欄です。
そして下の文章が、集英社文庫の人間失格です。

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東北の名家に生まれた容姿端麗・成績優秀な青年が自らの“生涯"を語る。「恥の多い生涯を送ってきました」——こぶしを固く握った子供、美貌の学生、表情のない白髪の混じりの男の三葉の奇怪な写真と共に渡された手記には、その陰惨な半生が克明に描かれていた。他人の考えていることの見当がつかない気まずさをうめるため、無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代。高等学校進学のため上京したものの左翼思想に浸り、次々と女性に関わりを持つ姿。やがては酒と薬物に溺れていき……。「人間失格」はまさに自分を欺き続けた太宰治の自伝であり遺書であった。作品完成の一か月後、彼は自らの命を断つ。時代をこえて読みつがれる永遠の青春文学。
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...いかがでしたでしょうか?
原作とだいたい同じことが書かれてるかなと思います。

[4]偏見ポイント!!①

太宰がだんだんと文壇の世界で人気になってきたとき、友人の堀木が妬んだ時のシーンで太宰が言った一言が一番良かったです。

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堀木:「...世渡りだけの才能だけでは、いつかボロが出るからな!」
太宰:「自分に世渡りの才能?」

堀木:「...これ以上世間がゆるさないからな!」
太宰:「世間?世間とはなんだ? 世間とはキミじゃないか」

世間とは個人??

世間に実体などないのだ。
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「世間に顔向けできない」だったり、「世間的にまずい」だったり、私も親や友達から色々と忠告を受けたことがありますし、反対に妬みから同じような言葉を友達に投げたことも多々あります。

これまで狭い共同体の中を生きてきた私達は、「世間から排除される」ということを極端に恐れることがあります。でも、よくよく考えると「世間」は本当に実体はないのです。
僻みや妬みを相手が言ったときに使う「世間」は実は「その人自身」で、人生に敷かれたレールを外れたそうになっている子供に対して親が使う常套手段の「世間」は、その親自身です。

これから、人と違う道を歩きたくなって誰かから言われる「世間」は、実はその人自身だと考えると、すこしは気持ちがすっとするかもしれません。

[4]偏見ポイント!!②
amazonの説明文に「自分を欺いた」、「拒否することの出来ない」と書かれており、マンガの中も太宰はそのように描かれておりますが、

「それってホント??」

という感想がずっとあり、個人的にはここはちょっと腑に落ちませんでした。

なぜなら、そこまで自分を欺けるのだったら、酒や女にことごとく溺れたり、自殺未遂を3回も図ったり、最終的には家族を残して自殺してしまったり....そんなことをせず、ただひたすらに我慢して日々をやり過ごすのではないかと思うからです。

個人的には、おそらく太宰は「自分」ではなく「他人」を欺くことで自分自身を守り、卓越した文章を書くことで人々を惹きつけさせることが出来ていたのだと思います。あれだけの洞察力に富んだ文章をかけるのですから、人間の心理的な部分も容易に見透かせたのだと思います。(あくまでも個人的な憶測ですが)

個人的には、その奔放さこそが、太宰の本性だったのではないかと思います。そして、困ったことに、この本性は私達の誰もが持っています。太宰と同じ時代を生きたほとんどすべての人は、理性を保ち、自分を抑えて日々の生活をしたと思います。また、私達が生きる現代は監視の目がどんどん厳しくなり、奔放に生きることがさらに否定されます。

なぜ未だに太宰が評価されるのか考えると、やはり抑圧された社会におかれた人々が、人間の本性である自分のダメな部分を太宰自身が体現してくれているところに、一種の憧れのようなものを感じるからではないかと個人的には思います

やはり、太宰のように人間の欲望にとことん従って行動しなければ、見えてこない景色もあるのではないかと思います。これから世の中がどんどんSFのような世界になり、効率化が進み、無菌室に入れられたような社会になるとすれば、太宰のような自分の欲望に溺れた人はますます現れず、「すばらしき新世界」の登場人物のような人が量産されるような気がします。

太宰が死んでから丁度70年。まだ太宰の文学は高い評価を受けておりますが、これから50年後、評価はどう変わっているのか、個人的にとても興味があります。

[5]終わりに
良くも悪くもマンガであるので、少し物語チックであったり、本当の太宰の生涯と少し異なっているところもあります。
マンガでは、太宰は大学に行っていないとも取れるような内容になっておりますが、太宰は東大仏文科に入学しています。また、マンガでは20代までの様子しか描かれておりませんが、太宰は38歳で自殺しております。
あらすじをたどるのはちょっと限界はあるものの、それを差し引いても大変素晴らしい仕上がりになっていると思います。
時間がない社会人の方や、中学生くらいの子供がいる方は、子供に勧めてみてはいかがでしょうか?
一時間もあれば読めるので!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

明日もお楽しみに!

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