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『貝の建築学』をこどもと観てきた

小石川植物園にある「東京大学総合研究博物館小石川分館/建築ミュージアム」で開催中の特別展示『貝の建築学』を子どもと観に行ってきた。

木々が覆い茂る植物園は土地の傾斜を上手く使ってその向こう側のビルを上手く隠している。ここが都内だということを忘れさせてくれる数少ない場所だ。

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その片隅に佇む東京大学総合研究博物館小石川分館は、国指定重要文化財である旧東京医学校の建築を活用したミュージアム施設で、100年以上前の明治時代に志ある学生たちが切磋琢磨した学舎が現存している。この風景は当時の彼らが観ていた景色なのだろうと思うとちょっと胸が熱くなる。

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目当ての展示は貝の構造を建築的に見せるキュレーションで、様々な巻き貝の断面が特に圧巻だった。自然界に存在する数学的な美を堪能できる。展示ケースも巻き貝よろしく渦を巻いているにくい演出だ。壁面には貝の構造を示す数式が並ぶのだけれど、これは僕にはさっぱりわからない。

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この博物館は驚くべきことに入場無料です。

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この日、子どもにはスマホを一台渡して「面白いモノを見つけたらたくさん写真を撮ってね!」と「まちの探検隊長」を命じてあった。
道中いろんなモノをパシャパシャ撮っていて、ミュージアムの中の貝も「観て!観て!」などと言いながらたくさん撮っていた。

三年くらい前にシドニーの水族館で生きているオウムガイを一緒に観たのだけど、展示ケースの中で真っ二つになっているオウムガイの貝殻を観ながら「この貝は生きている本物を観たことあるんだけど、覚えてる?」と聞いたら、「覚えてるよ!」と言っていた。
オウムガイそれ自体よりも、生きているオウムガイを観て大興奮している親の僕らの騒ぎっぷりを覚えているのかもしれない。

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簡単にはコピペできない時を重ねたアカデミックな本物が空間を引き締める。

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子どもの「まちの探検隊長」にはもうひとつ役目があって、知らないまちの水先案内人でもある。

次の目的地は茗荷谷駅。だいたいの方向を教えて「まずはあの高いビルの方にいってみよう!」と目印を決める。あとはどの道を通るか完全にこどもに任せる。
一応交差点の度に真っ直ぐ行くのか、右と左とどっちに行くのか?こどもに聞いてみる。好きな道を歩いてもらう。
人に付いていかず、自分で決めた道を自分が先頭で歩くといろいろな発見がある。その度にスマホで写真を撮る。自分のペースで歩く。僕も彼女に付いて行きながらいろんなモノを写真に撮る。
明らかに目的地と反対方向に進んでいる時は立ち止まって、一緒にもう一度目印のビルを探して地図を見てみる。

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ふだん彼女が暮らしている千葉の田舎は完全なクルマ社会なので子どもの目線とスピードでまちで迷子になったり、予期せぬモノにまち中で出会うセレンディピティな体験がなかなかできないのだ。

東京みたいなまちに一緒に行く時はこの「探検」しながら「寄り道」したり「迷子」になったり、という「探検隊長」ごっこを時間の許す限りしばらく繰り返してみようと思ってる。
彼女を健脚な好奇心を持った散歩好きに仕立てるのが僕の野望でもある。

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好奇心を燃料に自分のエンジンを好きなだけブン回せるようになれば、自分の足でどこにでも行けるようになる。

久しぶりにあのあたりを歩いたけれど、大学のある茗荷谷界隈は良い空気の流れるまちだったな。
植物園にミュージアム、そして大学。豊かなまちのヒントはでかいショッピングモールにあるわけではないのだ。


東京大学総合研究博物館小石川分館/建築ミュージアム
特別展示『貝の建築学』
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/architectonica/kai.html

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