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『サンセン』-南区内田橋商店街-

国道247号から東へ少し脇道へ入ると見えてくる内田橋商店街。
地下鉄名城線「伝馬町駅」から徒歩9分ほど。
青いアーケード屋根が続く昔ながらの商店街に佇む『サンセン』さんからは昭和の雰囲気が漂ってきて、入る前からワクワクとした気持ちになる。
何と言ってもその外観から筆者好みで、外のショーウィンドウには魅力的な食品サンプルが並ぶ。

外観。商店街にはアーケードがあるので雨の日でも安心。
昔はタバコ屋も営業していたようだ。ディズニーがお好きなのかな?
店前のショーケースは見ているだけでも楽しい。

外観やショーケースの中だけでも見どころ満載であっという間に時間が経ってしまう…。

店内ショーケースにも魅力的なラインナップがいっぱい。

さらに入店すると驚くことにこれまた大きなショーケースがお出迎え!
お邪魔した平日の午前9時には他のお客さんはおらず貸し切り状態だったので、少しだけ店内を撮影させてもらった。

ショーケースは脚までかわいいデザイン。

扉の奥が気になりマスターに尋ねると、元々奥は『内田橋ストアー』という市場へつながっており、その隣で始めた喫茶店が『サンセン』の始まりだったそうだ。市場の他の店は店主の高齢化とともに閉店してしまったようで、昭和の景色を残すことの難しさに物悲しさを感じてしまう。

『サンセン』メニューはこちら。

元々は菓子店だったということもあり、甘味メニューも充実している。
ランチタイムのメニューもお値打ち価格でそろっている。

さっそくアメリカンコーヒーでモーニングセットを注文。

モーニングはパン一枚とゆで卵付き。

固めのゆで卵とマーガリンたっぷりの食パンとコーヒーはホッとする組み合わせ。これぞ〝王道モーニング〟を味わう至福のひと時。
昭和レトロな空間を眺めながらいただくコーヒーはまた格別な気がする。

じっくりと店内を見渡しながら味わっていると、壁に貼られた昔の地図が目に入った。
とても気になるものだったので再びマスターに声をかけさせていただき、当時の貴重な話を伺うことができた。

赤丸で囲んだところが『サンセン』の前身である菓子屋の『山泉堂』

こちらは昭和28年頃の内田橋辺りの地図で、たくさんの商店や民家が立ち並ぶ町であったことが想像できる。
よく見ると内田橋劇場と南映劇場という二つの映画館があったり、小さなパチンコもある。たくさんの人々がにぎやかに生活していたのだろう。手書きで詳細に記録されたこんな貴重な地図が残っていることに感動する。
そして驚くことに『山泉堂』の前の道は馬車道だったらしい。
つい70年ほど前には名古屋にも馬車が通っていたのだ!

だが、これらの町は今の内田橋商店街とは同じ場所ではなく、馬車道があった場所は今では247号が走っており、現在の内田橋商店街へ数年をかけてスライド移動する形で移転してきたという。
多くの人たちが集って町を作り、みんなで地域を盛り上げてきたのだろう。きさくなマスターのおかげでこの地域の歴史を知ることができた。

さらに、お会計に向かうときにショーケースの話題になると、なんと飾られている食品サンプルはマスターの手作りだということを知ってびっくり!
それもプラスチックで作るのではなく、グラニュー糖、ショートニング、ゼラチンなどすべて食べられる材料で作られているそう。

アイスクリームはショートニングで、コーヒーの着色には醤油を使用するそうだ。

この技術は、『サンセン』の開店のためにマスターが横浜・伊勢佐木の不二家で修業をしていた時に修得したものらしく、防腐剤などは入れないため現在でも5、6か月に一度のペースで作り直しているのだそう。
マスターのこだわりとお店に対する深い愛情を感じる…。
さらに店前の外にあるショーケースの飲み物は日光などの影響で劣化が早いので3ヶ月に一度のペースで作り直しているというから言葉が出ない。
「全然話題にならなかったけどね」と笑いながらマスターは仰っていたが、こうして地道に信念と愛情を持ってお店を守ってきたマスターをかっこいいと思ったし、もっと私たちはこういった方たちに敬意を表して注目するべきだと強く感じた。

今の場所へ移転してきて52年。
商店街には新しい店舗もでき始める中、『サンセン』はひっそりと、でも確かな存在感で内田橋の日常を支えていた。

サンセン
名古屋市南区内田橋1丁目5-4
日・月曜定休
営業時間6:00-17:00
モーニングサービスはAM10:30まで
商店街の共同駐車場有(有料・100円のサービス券)

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