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『ロアール』-熱田区神宮前-

名鉄「神宮前」駅の目の前。熱田神宮への参拝客も立ち寄りやすい絶好の立地に、『ロアール』は風格を漂わせながらもどこかひっそりと佇んでいた。
隣に見える「神宮小路」という細道も味があって気になるが、『ロアール』へ続く薄暗い急な階段の方へと、スルスルと導かれるように足を踏み入れる。いささか冒険にも似た気持ちだ。

この階段を上る…!
小さな階段をどんどん上ると、目の前にオブジェのようなアート作品が現れる。
折り返してさらに進むと実家のリビングへ繋がりそうな木製のドアが!
ここを開けると正式に入店となる。
案内された中三階の席。
いま上って来た階段をガラス越しに見下ろす形がユニークだ。

ご覧いただいたように、着席するまでにパシャパシャと何枚も写真を撮ってしまったのだが、これも私の高鳴る気持ちがゆえだとお察しいただければと思う。このお店は店内はもちろんのこと、入るまでがすでにアートであり、冒険であり、アミューズメントでもあるのだ。
ちなみに、この席までの道中に常連客の方々の間を抜けてきたのだが、その間ずっとみなさんが「いらっしゃい」と笑顔で声をかけてくださって花道のようになって少し照れくさかった。

中二階の座席からの景色。低い天井と格子の区切りが半個室になっていて居心地がいい。

外観からは想像できなかったが天井の低い三層構造になっており、縦に長い面白い間取りのようだ。私が案内された中二階の上にはさらに小さな階段があり、二階へと続いていた。二階席ではサラリーマン3人がモーニングを食べながら静かに談笑していた。仕事仲間だろうと思うが、朝の早い時間から屋根裏部屋のような席でこうして穏やかに過ごせる関係性を素敵に感じた。

私が来店したこの日は寒い真冬の1月で、常連さんたちでにぎわう客席にはストーブが置かれていた。(何度かストーブの位置を変えながらみんなを温めている様子に心も温まる)
窓の外には改装工事中の神宮前駅。店内にいる人たちで工事の進捗を見守っている。常連さんたちが見てきた景色がすっかり変わっていくであろう改装工事なのに、みな楽しみにしているような雰囲気だった。
いつも来る時間になってもまだ今日は来ていないどなたかの話をみんなでしている。
すると階段を一人の男性がゆっくりと上って来る。
その気配を感じた一人の女性が、ああ、あの方だわ、と言い、長年そうしてきたように自然と合流する。

それら一連の流れが私の座る席からはすべて見えて、外野の私は勝手に一人で感動してしまう。
こういうひとときが好きで私は馴染みのない店であっても純喫茶に足が向かうのかもしれない。

モーニングはドリンク代でパン一枚、ゆで卵、ピーナツ菓子付き。

コーヒーが来るまでの間、ゆったりと店内を観察していると(この時間が一番好きだったりする。)、常連客の方々とおしゃべりをしたり相槌を打ちながらママがひとりで切り盛りされているようだった。その立ち振る舞いは大げさなところが何一つなく自然体で、すべてが流れるようで見ていて飽きない。本もスマホも手に取らずにこの時間を味わう。
しばらくすると、ママさんが私の席へと続く小さなステップをゆっくりと上がってくる。丁寧に運んできてくれた熱々のコーヒーとモーニングで、朝のお腹と心が満たされていく。

小袋のお菓子がコーヒーのお供に一番うれしい。

喫茶ロアールは営業時間が早朝5:30~10:00までというのもあって近所以外の方は早めの来店がおすすめ。少し早起きして通勤前の途中下車で立ち寄るというのもいいかもしれない。
私もその味のある外観に長年心を惹かれ続けたままなかなか訪れるチャンスがなく、今回が念願の初来店となった。
そして、想像していた以上の居心地の良さの中、常連さんとママの会話をBGMに朝の一杯を心ゆくまで堪能させていただいた。

ちなみに、帰り道も「いってらっしゃい」と皆さんに手厚く送っていただき、こしょぶったい気持ちで足早で階段を駆け下りたのであった。
これぞ人情純喫茶。

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この来店から記事にするまでだいぶ月日が開いてしまったのだが、その間に『喫茶ロアール2部』という午後営業も同じ場所でオープンしたことをインスタグラムで知った。朝とは一味違うひととき味わいに、そちらにもぜひ足を運びたいと思う。
『喫茶ロアール2部』
営業日 土・祝日13:00~16:30

喫茶ロアール
愛知県名古屋市熱田区神宮3-5-8
日曜定休
モーニング営業(月~土 5:30~10:00)
名鉄「神宮前」駅よりすぐ。近隣コインパーキング有り。

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