人への興味
インタビュー仕事の現場には、話の聞き手である僕のほかに何人か同席することがある。たいていは静かに話を聞き、相槌を打っている。
でもたまに、「あのう、ちょっと伺いたいんですけど……」と、遠慮がちに会話に割って入ってくることがある。その瞬間が、僕は大好きだ。
なんてことを言うと、たいてい驚かれる。「邪魔された」と腹を立てるインタビュアーは少なくないそうなのだ。僕はまったく逆だ。邪魔だと感じることはほとんどないし、むしろ、同じ部屋の中にいて人と面と向かっているのに、聞きたいことがない方が変だと思う。
インタビューの仕事は面白いもので、ついさっきまで見ず知らずだった他人の人生にズカズカと土足で上がり込み、「なんかないですかー?」と引き出しをひっくり返すことが許されている。
誰の人生も興味深いことだらけで、引き出しというより宝箱のようだ。人の宝箱を堂々と漁れるなんて、こんなに刺激的なことはないですよね。
人は、原則的に人に興味を持つ生き物だと思っている。目の前の人の話を聞いていたら、「あれも知りたい」「これも聞きたい」と思うのが自然だ。
だいたい、同じ場に一言も発しない人がいるなんて、どうにも座りが悪い。だから「私もちょっと伺いたいんですけど……」と会話に割って入られると、僕はすっかりうれしくなる
その質問が思いもよらない言葉を引き出すこともあるし、会話に別の切り口を授けてくれることもある。宝箱の奥底に眠っている輝きを見つけるためには、何人もでひっくり返した方がいい。
邪魔だと感じることは“ほとんど”ない、と言ったのは、たまに邪魔な質問をする人がいるからだ。
邪魔な質問。
「それ、本当に聞きたいことなの?」という薄くて淡い質問だ。たいして興味がないのに無理に投げかけた質問は、会話から熱を奪ってしまう。そんなことをするぐらいなら、黙っていてくれた方がいい。
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