マガジンのカバー画像

君何処にか去る

8
小説「君何処にか去る」
運営しているクリエイター

#小説

君何処にか去る 第四章(2)

四    道友は、新聞に出たS教授の顔写真をとくと見た。白髪、額の広い聡明そうな顔つきであ…

芝豪(小説)
3週間前
5

君何処にか去る 第四章(1)

第四章 歳月は流水の如く 一  一週のうち、金曜日と土曜日が喜多川道友の指定した稽古日で…

芝豪(小説)
3週間前
4

君何処にか去る 第三章(2)

四    柏木幾三によると、水道屋の親父は出水の因を突きとめかねて、  ──無徳君を呼んで…

芝豪(小説)
1か月前
5

君何処にか去る 第三章(1)

  第三章 出会い         一    喜多川道友は古稀を迎えた。道友の父母は、七男…

芝豪(小説)
1か月前
5

君何処にか去る 第二章(2)

四    沈黙の時がしばらく流れた。俊雄は会うことのなかった喜多川道朋を想い、無明は一度だ…

芝豪(小説)
2か月前
6

君何処にか去る 第一章(2)

四    ありがたいことに、無明は酒が入っても乱れなかった。口の利き方は相変わらずであった…

芝豪(小説)
3か月前
7

君何処にか去る 第一章(1)

第一章 函館の古刹         一    唄口の形状からして、琴古流の尺八であることは間違いない。俊雄はその尺八を翳し、外も内部もじっくり検めた。自分の尺八よりもやや重く、黒光りを放つ。見るからに風格があった。 「これだけ艶が出ているとなると、明治期からのものかな。逸品だ」  大いに気に入った。俊雄の声の調子にそれが現われた。 「もっと前からのものと聞いております」  仙閣堂楽器店の主人は、かすかに笑みを見せて答えた。愛想笑いをする人ではない。約束を果たして、ほっとして