見出し画像

夜間頻尿を前立腺肥大だとする説の多くが間違いだという 3つの理由

漢方相談において排尿トラブルは多いご相談の一つです。

中でも「夜中に何度もトイレに起きてしまう」という症状がある人は、それが主訴の場合と、他のご相談であっても確認してみると夜中(睡眠中)に2回以上排尿で目が覚めるという人を含めると実に多い。

男性の患者さんの多くは「前立腺肥大」が原因だとし、実際に薬物療法や手術が行われている。

薬物療法は、膀胱や尿道の筋肉を緩ませる「α1遮断薬」や「ホスホジエステラーゼ5阻害薬」、前立腺肥大の進行を抑える「5αリダクターゼ阻害薬」や「抗男性ホルモン薬、」などが処方されます。

大きく肥大した前立腺に対しては尿道の確保のために、肥大した前立腺の切除を行う手術もあります。

日中の排尿の状態は(少しは)改善するかもしれませんが、排尿トラブルは膀胱や尿道の治療、及び前立腺の治療が、症状の改善につながらない事が多々あるのです。

1,そもそも男性だけの疾患ではありません

冷静に考えたらあたり前なのですが、夜間頻尿でお困りなのは男性だけではありません。当店には女性のご相談も数多く寄せられます。

男女共通するお悩みに、男性だけは「前立腺肥大」の治療を行っても、夜間頻尿に関して改善するとは思えません。

2,頻尿を誘発する多臓器からの働きかけ

最も顕著なのは「心臓」と尿意の関係です。

心筋梗塞のマーカーであり、心臓や循環器に大きな負担がかかると、心臓から分泌される2つのホルモンがあります。

脳性ナトリウム利尿ペプチド「BNP(brain natriuretic peptide)」

心房性ナトリウム利尿ペプチド「ANP(Atrial Natriuretic Peptide)」

健康体であれな、夜中に利尿ホルモンが出るようなことはありません。
本来なら、睡眠中は体循環を活発に行わなくても最小限の力で血液の循環ができていればよいのですが、その最低限の循環ができないような血管状態であると、寝ている間であっても心臓の動きを高める必要があります。
そのような状態の方は、日中であっても心臓を動かすのに大きな力を必要とするはずです。
そのような場面になると、心臓から利尿ホルモンの分泌が盛んになります。

次に「脳」との関係があります。

抗利尿ホルモン「バソプレシン」

腎臓では血液から尿を作り、老廃物を尿から排泄しています。

だからといって、尿が垂れ流しになってしまうと、血液の栄養であるタンパク質や糖質のみならず、ミネラルの排泄も多くなってしまいます。

そうならないように、尿は出過ぎないようにも調節されています。
尿が出すぎないように最適な尿量に調節しているホルモンがバソプレシンです。

「尿崩症」はバソプレシンが出なくなった病気で、小便から栄養が垂れ流しになってしまうので、ものすごく喉が渇く病気です。

多臓器から夜間頻尿の働きかけがでるのはよっぽどのことなのです。

心臓への負担は、疲労の蓄積、老化などによるので、患者様の生き方やご性格がとても影響していると感じています。

良かれと思って頑張っている事が、知らず知らずの内に、自分自身の体に負担をかけていた、ということです。

どこにも悪気は無いことではありますが、自分をもっと大切にしていただきたいな、と常々感じています。

3,臓器由来の頻尿を誘発する働きかけを起こす要因について

そもそも、心臓から利尿ペプチドが分泌する要素は何なのでしょうか?

心臓自体の問題

狭心症や心不全、弁膜症、心筋症など、心臓自体に問題があるとしたら、丁寧に心臓のサポートをすることに終止します。

急性期に漢方でできることには限りがありますが、慢性的な心機能の低下に対しては、現代医学の血管拡張や、交感神経抑制、イオンチャンネルの抑制、レニンアンジオンテンシン系抑制や、血液凝固抑制系では、薬物制御はできたとしても回復へサポートは困難です。
病状にもよりますが、これらの薬剤を使い続けている限りには、真の回復はみられませんので、栄養サポートや漢方によるサポートをしつつ、病状の安定化に伴い、かかりつけの医師の先生に助言を求めながら減薬を敢行していく事ができたら理想的です。

細胞レベルでの疲労回復、エネルギー状態の向上に努め、栄養の補給をしっかりと行い続けると、血圧などのコントロールも良くなる事が多々あります。

感染症やがん治療などで二次的に心臓に負担がかかっている場合

感染症もひきはじめでしっかりと治れば夜間頻尿にはならない事のほうがおおいです。

しかし、感染症にかかってはいるももの、上気道炎や鼻炎、咳嗽、頭痛、悪寒、発熱など、いわゆる風邪のような症状が現れないケースもあります。

腰痛や寝違いによる関節痛、夜間頻尿が主体なんていうケースもあるのです。

抗がん剤に代表されるがん治療では、細胞毒性によって体中への負担が多くなります。

結果として夜間頻尿が現れるケースを多々経験しています。

がん治療のサポートにもなるので、栄養療法を中心に患者様の体力回復に努めますと、夜間頻尿もよくなってきます。

尿の問題=膀胱や腎臓が治療のターゲット
という思考は変えていこう

体の様々な連携と、治療法への視点は、機械論的な西洋の治療では限界があります。

漢方だけでも簡単ではありません。

関連付けて考えるのは広くは東洋的な視点がとても役に立ちます。

治療法は、生薬だけに頼らず、回復や修復、効率アップに役立つ「栄養」での治療補助がとても有効です。

これは「夜間頻尿」だけに限ったことではありません。

検査で大きな問題はないけれど、自覚症状のレベルで本質的な問題に対処していくのが、本当の「未病」だと思います。

「未病」とは、体から発信している「兆候」「兆し」を読み取り、問題点を改善していくプログラムなのではないでしょうか?

漢方では、名医ほど本質からアプローチして、病気が具現化する前に手をうつのです。


よろしければサポートお願いします。 いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます。