乳がんを構造的に見て原因と治療方針を推論する
ごう先生のシンプル思考
「解剖図を見ながら、なぜ発病するのかをイメージする」
ガンダムっ子だった僕は、はじめて「内部図解」ものを見たときにワクワクして、トレーシングペーパーで複写することに没頭していました。
それから絵を描くことが好きになって、小学生の頃はよくロボットだったり、架空のヒーローなどを一心不乱に描いていました。
ロボットアニメ全盛時代だったので、小さい頃からおもちゃといえば、ミクロマンやガンプラ、レゴなどを使って、空想の世界に浸りきっていました。
ずーっと「あちらの世界」に旅をしていた「おたく気質」の僕は、当時スポーツよりも「空想」の世界で遊ぶのが一番の遊びだったのです。
現実の世界に全く興味がなかったように思います。
それから造形に興味が向き、図鑑・百科事典などを眺めるようになりました。
迷路のような蟻の巣や、宇宙に浮かぶ太陽系の惑星、地球の断面図、人体の解剖図、元素の周期表など、科学の世界が私に見せてくれる「造形」に、ぐんぐん惹かれている自分がいたのだと、今になって気がつくことがあります。
当時の僕に、そこを伸ばしていけば良いという頭はなく、気がついたら小学校の高学年からは、自分の好きなものから、みんなが好きなものへと同調する道を歩み始め今に至ります。
世界との関わりが、すこしだけ窮屈になり始めたターニングポイントだったのかもしれません。
前置きはこれぐらいにしてまして、「乳がん」が増えているので、さまざまな原因が情報として氾濫しています。
どれも原因として当てはまるとは思いますが、核心的な意見はいまだ無いように思います。
どれも「一般論」の延長にすぎません。
乳がんの原因として挙げられている要素
・ストレス
・食事
・運動不足
・過労
・喫煙
・アルコール
・女性ホルモン
・薬剤
原因を論じるならば、考えられる要素を全て同列で並べるのではなく、基準を設けて分類する事が必要です。
ロボットアニメ好きだった僕としては、構造的な視点という基準から、乳がんの原因を論じてみたいと思います。
冒頭の図は乳房の断面図ですが、この図を見たときに僕は「乳がん発病のメカニズムはコレだ!」と直感的にイメージしました。
解剖図鑑によると
「乳頭先端には乳腺葉にはじまる乳管が20本ほど開口している。」
「乳腺葉はさらに小葉に分けられ、小葉には多数の腺房が集合している。」
乳頭から母乳が出るのですから、そこには「管」があります。
「管」は乳房の深部まで外側から通じる道があるということです。
外からだんだんと体の内側に行くと、「乳管」は「乳腺葉」となっていきます。
乳房に存在する、外と内の堺にあるのが「乳管」や「乳腺葉」であることが分かります。
「乳腺葉」という一房は、実際には小さな「小葉」が集まったものです。
乳房の深部にある「小葉」にまで、外側から通じている管があるのです。
その先には毛細血管があります。
乳首から、乳管、乳腺葉、小葉という、外側から、乳房の毛細血管や脂肪組織という内側への接点となっていくわけです。
肺もみてみましょう
呼吸器も同じような構造をしています。
この図は「肺」〜「肺胞」のルートを示すものです。
これは、鼻や口から、咽頭、気管、気管支から、肺胞管、肺胞嚢と、外側からだんだんと体の深部へ入り極小の世界で、肺を流れる動静脈の外界と体内の接点があります。
消化管もみてみましょう
消化管においても、腸絨毛やリンパ組織(パイエル板)、といった極小の世界で、外界と体内の接点がある事とも共通しています。
人体において、外界と体内の境界にある場所では、常に外界からの敵の侵入と、体内の抵抗力とが争いを繰り広げています。
乳房しかり、呼吸器しかり、消化器しかりです。
ミクロの世界では外界と体内との狭間での攻防が繰り広げられています。
乳房と肺、消化器と子宮という、外界と体内の堺に発生するガンが多いことは、国立がん研究センターがん対策情報センターの統計による羅漢率から見ても明らかで、がんが発病しやすい部位には構造的な共通点がみられるといえます。
以前、がんをテーマにした講演会で講師を行った際に、この類の話をしたのですが、ピンと来ないという方が多いように感じました。
では、外界と体内の堺では、どのような問題が生じて発がんリスクが高まるのでしょうか。
外と内と隔てる壁(生体防御)の世界
生体防御の能力において、最も重要なのは「物理的」な壁です。
その最前線では粘膜の細胞が存在し、絶えず粘液をたたえています。
粘膜の上皮細胞は、寿命が短く、次から次へと新しく生まれてきます。
内側から絶えず新たな細胞が生まれることで、古い細胞は剥がれ落ちていく(溶けて吸収される場合もあります)のです。
小腸の粘膜上皮細胞の寿命は1〜4日ともいわれ、最も寿命が短く、凄まじい勢いで生まれ変わっていると言われています。
小腸というのは、ヒダヒダした「絨毛」に覆われておりますので、その表面積は数百m2あります。
テニスコート以上の表面積があるのです。
そこが数日で生まれ変わっている。
そんな姿を想像してみてください。
その生まれ変わりに、果たしてどれほどの栄養が、水分が、エネルギーが必要でしょうか?
小腸だけでそれがおこなわれているのではありません。
乳房においては「乳管」から「小葉」、そして乳房内の毛細血管などで、
呼吸においては「咽頭」「鼻腔」「気管支」「肺葉」「肺胞」にいたる管腔において、
消化管においては、口から肛門にいたる粘膜の上皮から、さまざまな消化液を分泌する腺、粘液を分泌する組織において、
体の表面部では、実にダイナミックな生命活動が常時おこなわれていて、外敵からの侵入を防いでいるのです。
体の外と内を隔てる壁を維持するのに重要な問題
感染症
漢方の表現では「正邪の攻防」といいます。
「正気(生体防御力)」と「邪気(ウィルスや細菌など体外からの異物)」の争いが体の外と内を隔てる場所では、日常茶飯事におこっています。
「風邪」も「がん」も「正邪の攻防」の末に生じる病なのです。
血行障害・栄養障害
心臓から乳房という位置は、肋骨よりも外側に位置しているため、末端部まで十分な「酸素」や「栄養」を血液を介して供給するのに大変な部位なのです。
細胞レベルで酸素や栄養が不足した状態が長引くと、細胞の正常な環境を維持ずることが困難になります。
過労・ストレス
持病で不調になる事も防ぎたいですが、家事や看病、介護などの負担で、体調を崩されてる方が増えています。
過労やストレスは、多大なエネルギーを消費します。
その影響は、生体防御にまで及びます。
癌化とは
生体防御の最前線である粘膜の壁。
体に無理がたたって、壁に十分な栄養を供給できなくなってしまったら。
はじめはなんとか、身体中の栄養素をやりくりして、防御壁をできるだけ維持します。
ここからは個人差になります。
ストレスの量は同じでも、その中で大丈夫な人と、負けてしまう人がいるように。
ウィルス疾患が大流行しても、感染する人と何でもない人がいるように、人によって感受性は様々です。
栄養も少なく、酸素の供給量も少なく、やりくりの限界を超えた時。
防御壁の隙間をうめる最後の切り札が「癌化」だと私は考えています。
つまり「癌化」とは、体力と生き方の限界を超えたときにも、体という一つの社会を「防衛」する手段なのであって、決して悪くしようとして生じたものではないのです。
精一杯のカタチなのです。
だからこそ、否定から入るのではなく、「癌化」の逆プロセスに入れるような肉体環境と生活環境の整備を、私は主にご提案しております。
今までの生き方を変えることが必要なのです。
癌とは、傷を必死になって治している姿に僕は映ります。
漢方には古来より、傷の修復を治すための生薬治療がいろいろあります。
現代の栄養学や、病理学、生理学を駆使して、漢方の生体観をもって、人に備わる能力を最大限に引き出す事が、私の乳がんを含めた癌治療のサポートとなります。
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