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【リーダシップの旅編7:”自分探しの旅”には気を付けて。】

*本マガジンのこれまでの投稿は上記に入れています。

40代で、ある大企業の関連子会社の社長である健は、就任2年目を迎えています。1年目の業績は振るわず、戦略構築・マネジメントでも試行錯誤しているところのようです。そんな時、本社で取締役で元上司の哲也にたまたま出会います。健が現状の悩みを相談しているうちに、”リーダーシップの旅”を紹介されます。この本についてオンライン勉強会をする流れになり勉強会を開いています。本日は第3章「旅の一歩を阻むもの」の1回目の解説になります。


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◆旅の原動力となるもの

🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳‍;おはよう。今日から三章に入っていく、タイトルは「旅の一歩を阻むもの」だ。

🧒‍:一歩を阻むものですか・・。恐ろしいですね。

👨‍🦳‍:ああ、リーダーシップの旅へと一歩を踏み出すにあたって、あなたの原動力になるものは何なのか、そして、逆に、一歩を踏み出すことを、あなたに躊躇させるものは何なのかを考えていこう。

🧒‍;わかりました。

👨‍🦳‍:リーダーシップの旅は、人生の大切な時間 人によっては二十年、三十年という長い年月を費やして歩んでいく、とても奥の深い旅だ。一難去ってまた一 一山越えてまた一山というように、歩けば歩くほど、新しい地平が目の前に開けてくるんだ。

🧒‍;はい。リード・ザ・セルフで自分をリードしようとする人は「見えないもの」を見て、あるいは見ようとして歩くが、旅の道のりは明確ではなく、行く先を見通すことなどできないです。多くの場合、見えないまま突き進むしかない。私たち「だれもの問題」であり、すべての人が少なくとも出発点には立っているということでしたよね。

👨‍🦳‍;そう。中には、気がついたらリーダーシップの旅に出ていたと感じる人もいるに違いない。組織の中で大変な仕事を任され、逃げたい気持ちに襲われながら、必死に踏みとどまる人も、踏みとどまる決意をした時点で、リーダーップの旅を歩き始めていると言っていい。

🧒‍;なるほど。リーダーシップの旅へと歩みを踏み出すドライバーは、人それぞれで ていいということですね。

👨‍🦳‍;その中で、とても大切だと思っているのにもかかわらず、その役割に疑問を呈されることが多いドライバーが「夢と志」なんだ。

🧒‍;「夢と志」ですか。確かに青臭いとか、ただの戯言だという人もいますね。

👨‍🦳‍;ああ、だがやっぱり重要なんだよ。ちょっと深堀していこう。杉並区立和田中学校で校長を務める藤原和博さんは、「たった一人の教育改革」を掲げて、民間校長へと転進したリーダーだ。知っているな。

🧒‍;はい。藤原さんはリクルートの営業マンとしてすばらしい実績を残した自称「スーパーサラリーマン」ですよね。四十歳を前に欧州駐在を経験し、帰国後、年俸契約のフェロー(客員社員)制度を社内に創出し、自らその第一号になったんですよね。

👨‍🦳‍:そう。そして、リクルート卒業にあたって、藤原さんが最終的に選んだフィールドが教育であり、公民の教科書を書き直して「よのなか科」を創設するなど、教育改革の先頭を走っておられる方だ。

🧒‍;非常に有名です。

👨‍🦳‍;そんな藤原さんだが、「中学生に夢や志が簡単に見つかるわけがない」とあっさり言ってのける。「僕は四十歳を過ぎて初めて教育改革を志した。」という。

🧒‍;確かにそんな簡単に見つかるものではないですよね。

👨‍🦳‍;藤原さんは、これまでのサラリーマン生活で、「何よりも信頼を大事にしてきた」と言うんだ。様々な仕事を任され、その都度、信頼を積み上げてきたことが、自分自身の能力の向上、人的ネットワークの構築を可能にし、それが現在の教育改革に取り組む上での土台となっている。

🧒‍;そりゃそうですよね。信頼を積み上げない限り人がついてきてくれることはないです。そして、様々な経験を経てやりたいことが見えてくるというのもわかります。

👨‍🦳‍;そう。まず信頼の土台がないとリーダーシップは発揮できない、というのが藤原さんの考え方なんだ。でもさ、信頼を積み上げてさえいれば、それでいいのだろうか。リーダーシップの旅には、やはり「夢と志」、少なくともその原型と言えるようなものが必要なはずなんだ。

🧒‍;そうですよね。とすると、その原型とはどんなものなのでしょうか?。


◆「自分探し」の迷路

👨‍🦳‍;いい、質問だね。ここで、若者の間で流行り始めた「自分探し」について議論したい。「夢と志」というと、どこか「自分探し」と似ているようにも聞こえるが、私はまったく違うからね。ここを紐解くと見えてくるかもしれない。

🧒‍;確かに。「自分探し」という言葉には、今の自分は本来いるべき場所にいなくて、自分にはもっと適した場所、適した仕事があるといったニュアンスが込められていますよね。一年半か二年ごとに転職を繰り返す人たち。放浪の旅に中途半端に出てみたものの、結局放浪から抜けられず、目の前の現実から逃避する人たち。問題を先送りにし、ふわふわと漂流するように生きながら、彼ら、彼女らは「自分」を探しているのだと言います。

👨‍🦳‍;ああ。その通り。どこか知らない場所に自分にとっての夢や宝物が隠されていて、それをだれかが代わりに発見してくれるのを待っているような安易さ、受け身の姿勢を感じ取ってしまうんだよ。自分の強い意思を感じないわけさ。

🧒‍;私も同じように感じてしまいます。

👨‍🦳‍;当然、「自分探し」が悪いとまで断言するつもりはない。そうしたいという気持ちはよく理解できる。けれども、自分の軸を見失ったまま、迷路をさまよい続けても、所詮、本当の自分は見えてこない感じがする。大切なことは、そこに踏みとどまり、現実と向き合い、目の前のハードルを一つ一つ飛び越える作業ではないだろうか。踏みとどまり、現実と向き合い、ハードルを飛び越える営みが、藤原さんの言う信頼の獲得につながる。だが私には、その際の努力を支えるのが、「夢と志」あるいはその原型のように思えてならないのだ。

🧒‍;現実向き合い、ハードルを飛び越える営み。なるほどです。

◆悪い自分探しとよい自分探し

👨‍🦳‍;だから、「リーダーシップの話で、夢とか志とか言うのはやめてくれないか」と言うのは、とても興味深いことだと思うんだ。おそらく藤原さんがそのように言われるのには、実践家としての色々な含みがあるのだと思うな。

🧒‍;わかります。実際そんな浮ついたこと言っていられないんですよ。現実では。きれい事ばかりではないですし、本当にだれも見ないものを見て、動き始めたら、しばしば四面楚歌になることだってあります。夢は大きな転機、節目にのみ語るべきで、いつもそればかりだと浮かれた人物に見えますからね。だから「夢でなく信頼を大切にしてきた」という藤原さんの言葉は実務者として非常にわかります。

👨‍🦳‍;そう。今言っている自分探しは、クイズもどきで十分間で終わるような「自分探し」とは異なる。つまりは、この種の最悪な「自分探し」と、結果としてリーダーとなる人ならば自分の声を聴き、自分という人間をより深く知る必要があるという意味での、本来のあるべき「自分探し」とを区別すべきなんだよね。後者は、そんな浮ついたものではないはずなんだ。

🧒‍;分けて考えると腑に落ちてきますね。

👨‍🦳‍;実際、野田さんもリード・ザ・セルフのためには、自分の「内なる声」を聴くことと「一人称による語り」が大事だと言っているんだが、自分の内面を見つめることにかかわってくるんだ。クーゼスとポスナーは『リーダーシップ・チャレンジ』(原著第三版、二〇〇二年)で、

リーダーシップの要諦として、まず「歩むべき旅の道を形作る」という実践課題を挙げている。その中の第一のコミットメント課題こそが、「自分の価値観を明らかにして自分の(内なる)声を発見すること」だ。

といっているんだ。

🧒‍;歩むべき道の形を作る。良い意味での自分探しですね。

👨‍🦳‍;この本では、リーダー シップとキャリア発達は車の両輪だと他の本でも述べられているが、キャリア発達の節目でよく実施される「キャリア・アンカー」(自分が一番自分らしいと感じられるキャリアのよりどころ》を知ることも、そのエクササイズがうまく実施されれば、皮相な「自分探し」でなく、深みのある「自分探し」につながるんだ。

◆信用蓄積競争の落とし穴

👨‍🦳‍;ここまでで、「自分探し」と「夢と志」は違うものではないかと前置きしたが、その上で、藤原さんから問題提起された「信頼の土台」についてもう一段深く考えてみたい。ここでは「信用の蓄積」という言葉に置き換えて話を進めていく。

🧒‍;信頼の土台ですね。実際、険しいリーダーシップの旅を歩んでいく上で、周囲からの信用はあった方がいいですよね。多くの場合、旅は一人では歩めないですから。

👨‍🦳‍;そう。また、リーダーが見ている「見えないもの」は周囲には必ずしも見えない。いくら「さあ見えるだろう」と呼びかけようと、「本当ですか」と訝しがられることもある。であるならば、やはり、信用の蓄積はあった方がいい。少なくとも「自分探し」に迷い込んでいつまでも旅を始められないよりは、着実に何かを成し遂げ、周囲の人々、組織の上司や同僚、顧客、ひいては社会全般からの信用を得ていくことの方がよほど大切だと思う。

🧒‍;そりゃそうです。現実と向き合っているのですから。それが何か悪いのでしょうか・・。

👨‍🦳‍:悪いってことはないさ。だが、信用蓄積の行き着く先には、大きな落とし穴が口を開けて待っているんだ。それは、蓄積に励むうちに、それが手段ではなく、目的にすり替わってしまう可能性があるからだ。そうすると、私たちは、蓄積した信用を土台として何を本当はやりたかったのか、信用を土台として何を成し遂げるべきかを自らに問うことを忘れてしまう。

🧒‍;え?どういうことですか?

👨‍🦳‍;よく企業や組織に就職したばかりの若者が、「まずは自分に力をつける」「実績を作って、ともかく人に対して示せるような人間になろう」などと自分に言い聞かせる。その気持ちはとてもよく分かるし、現に、私も親しい若者に同様のアドバイスをすることが多い。社会人にとって、信用を蓄積することは何よりも大切だ。実社会の中で実績を上げ、人に認知されて、信用をかち取る。その土台がなければ、「本当にやりたいこと」がやりたい時にできないのも事実だろう。

🧒‍;もちろん、そうですよ。

👨‍🦳‍;だが、組織や社会の中で信用を獲得し、蓄積するためには、組織や社会の一員として行動すること、組織や社会のルールの中に自分を置くことが前提となる場合が多い。ルールの中での信用蓄積は、比較的同質的な社会に暮らし、受験戦争の洗礼を幼少時に受ける私たち日本人にとっては、 他の競争になりがちだ。ライバルよりも大きな成果や信用の蓄積度合いが、時に給与やボーナスといった報酬額に跳ね返り、出世に反映される。

🧒‍;むむ、雲行きがおかしくなってきました。その時点で、世間の評価というものが評価尺度になってきてしまいますからね。

👨‍🦳‍;そう。「やれば認められる」「認められるためにやる」という具合いで、信用蓄積はゲーム化していき、私たちはそのゲームの中に埋没していく。その結果「本当にやりたいこと」をいつの間にか忘れてしまい、当初は何かを成し遂げるための手段だったはずの信用が目的になってしまうってわけだ。

🧒‍;何となくわかってしまいます。

◆信用から次のステップへ

👨‍🦳‍;でも、それじゃいけないよね。信用から次へのステップを考えないといけないんだよ。ここを見ていこう。「信用蓄積」(クレジット・アキュミュレーション)というリーダーシップの理論があるんだ。社会心理学者のE・P ホランダーは、エマージェント・リーダーを、 リーダーとメンバーの間の相互期待の形成過程の中にとらえようとしたんだ。

🧒‍;むむ?どういうことですか?

👨‍🦳‍;だれかがある集団に招き入れられたばかりの時、その人は新人だから、当然いきなりリーダーシップをとることなど期待されていない。組織に加入して間もない頃は、まずは今までのやり方で、それなりの成果を上げることを期待される。

🧒‍;わかる・・。外国に派遣されるとまさに当てはまります。。

👨‍🦳‍;この段階では、有能さ(コンピテンシー)を発揮してみせると同時に、これまでの集団規範に沿って忠実に行動しているという同調性(コンフォーミティ)をメンバーに納得してもらわなければならないんだ。既存の方法を遵守、あるいはそれに服従して業績達成に貢献を重ねていくことにより、信用が築かれる。信用蓄積とは、いわば有能性と同調性の証拠の集積からなるファンドなんだ。

🧒‍;まさにファンドですね。信頼の蓄積。でもその次があるということですね。

👨‍🦳‍;ある程度の信用がリーダーとして蓄積されると、必要とされる変革、従来の集団規範から逸脱するような革新的提案をリーダーに望む期待が形成されていくんだ。これをホランダーは、信用の蓄積によって期待されるようになった特異行動(イデオシンクラティック・ビヘイビアー)と呼んだんだ。

🧒‍;信用の次ってことですね。

👨‍🦳‍;この中心には、「特異性の許容」というフォロワーもしくは潜在的フォロワーからの視点があるんだ。信用を積み重ねてきた人に対し、周囲は「お手並み拝見」「とりあえずサポートしてみようか」という態度をとり、その人が現状から逸脱し、冒険するスペースを与える。
🧒‍;それは、藤原さんの言う「信頼の土台」に通じるものな気がしますね。

👨‍🦳‍;ただ、ここで重要な点は、貯金(貯めた信用)はおろさなければいけないということだ。

🧒‍:貯金をおろす、、自分の積み上げてきた信頼をおろすですか・・。

👨‍🦳‍;そう。自分が積み重ねてきたものをおろして使う。ある場面においては、それを捨てるぐらいの勇気がなければ、リーダーシップの旅は始まらないし、旅を歩み続けることもできないんだ。

🧒‍;おお、それはなかなか勇気がいる。

👨‍🦳‍;周囲からの信用による呪縛と、自分が本当にやりたいことへの思いが葛藤を生む時、リーダーに結果としてなる人は、自らの価値尺度によって決断を行い、その状況を超克しようとする。これには、痛みを感じつつも何かを選択する感覚が必ず伴う。人生はいくつもの選択肢によって構成されている。意識していようが、無意識だろうが、私たちは無数の選択を繰り返しながら生きていく。小さな選択が転機となり、結果的に人生を大きく変えてしまうことだってあるよな。

🧒‍;その通りとしかいいようがないです・・。

👨‍🦳‍;目の前にいくつものドアがあり、私たちはそのうちのどれかを選んでいるとイメージしてもらえば、分かりやすいかもしれない。どの大学に行って何を専攻しようか、いつ結婚して子供をもとうか、会社を辞めるべきか残るべきか。どのドアを選ぶかによって、私たちは人生を自ら形づくっているんだ。

🧒‍:はい。

👨‍🦳‍;大事なポイントは、目の前のドアを開けるためには、後ろのドアを閉じなくてはならないということだと思う。

🧒‍;蓄積した信用をあえて捨てるという行為は、後ろのドアを閉めることになるのですね。

◆夢の現実吟味

 👨‍🦳‍;その通りだ。その覚悟が重要なんだ。ここで「夢と志」が出てくる。ここにこだわろうとするのは、信用蓄積だけでリーダーは行動し続けられるかという問題を突いているからだろう。私もリーダーには夢・志・ビジョンを語ってほしいと思う。それができないとマネジメントをしているだけになるし、今までのやり方が通用しなくなった時に、周りの人々はおろか自らを動かすエンジンが弱くなるんだ。

🧒‍;でも、夢・志・ビジョンを語る時は、それが本当に本気なのかどうかこそが問われますよね。見透かされるというか。必ず実現するという強い意志をもたずに、ただ希望的観測を語るだけの夢、ないものねだりに聞こえる夢では人々の胸に響かないですからね。

👨‍🦳‍:そう。つまり、夢・志・ビジョンが信用できるかどうかは、それ本物かどうかにかかわってくるってこと。裏返せば、「その夢が信じられる」から信頼を生み出すんだ。キャリア発達の研究で色々な人に会ってインタビューすると、「夢なんかなかった」「夢をもっていても実現しない」と答える人がずいぶんいるらしいんだ。実際問題、夢が簡単にかなうとは限らないのだが、人生の節目に突如として夢が急浮上する場面もまたよく見られる。

🧒‍;本物が見つかるということですよね。自分は本当は何がやりたかったのかを真剣に考え始めた時、夢と現実の照合が起きることがあるとは思います。例えば人生の半ばを過ぎようとするミドルが人生の節目で「ちょっと待てよ」と立ち止まり、「俺はもっとやりたいことがあったんだよな」と振り返る時は、夢が現実と照らし合わされて吟味されていますからね

👨‍🦳‍;そう。そのまま夢に向かって進んでいけるかどうかは信用の蓄積具合にかかっているけれど、夢が目標に練り直され、絵に描いたのではない餅になる可能性が高くなるんだ。若い時に比べて。なにせ、経験と知識があり、絵に描いたものを実現できる可能性が高くなるからね。

🧒‍;なるほど。あ、もうこんな時間だ。いいところですが、今日はこのあたりにしませんか?

👨‍🦳‍;おう。そうしよう。次回は3章の続きを解説していこう。夢・志についてもう少し語っていくぞ。

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今回はここで終わりです。信頼や信用が自分を変化から遠ざけてしまう。。これも心に刺さりました。そうなんですよね。実績や信頼が高まってくるとその分、その場にい続けるようになってしまう。それを打破するために夢や志を持つことが大事なのですね。次回は、さらに夢・志について深堀していきたいと思います。
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*なお、下記の固定記事に私のnoteの全体コンセプトを記載しています。
(初期のコンセプトからいろいろ飛躍していますが・・)

これまでの複数マガジン(書籍解説)を作成してきましたが、一覧と位置づけは下記です。(一つでも興味がおありでしたら、上記【導入編】のリンクを載せているので覗いてみていただければ嬉しいです。)

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番外編もあります。



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