【リーダシップの旅編11:返礼の旅~私たちは常に支えられている~】
*本マガジンのこれまでの投稿は上記に入れています。
40代で、ある大企業の関連子会社の社長である健は、就任2年目を迎えています。1年目の業績は振るわず、戦略構築・マネジメントでも試行錯誤しているところのようです。そんな時、本社で取締役で元上司の哲也にたまたま出会います。健が現状の悩みを相談しているうちに、”リーダーシップの旅”を紹介されます。この本についてオンライン勉強会をする流れになり勉強会を開いています。本日は最終章の第5章「返礼の旅」の解説になります。
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🧒;おはようございます。いよいよ最終章ですね。
👨🦳:ああ、そうだな。長いようであっという間だったな。さて、進めていこう。
◆なぜリーダーは歩みを止めるのか
👨🦳;今、この国には若手や中堅の骨太のリーダーが少ないと言われている。創造と変革の必要性がこれほど叫ばれていても、三十代前半から五十代前半の人たちの中から、明日の日本を背負って立つと周囲がはっきり期待できるようなリーダーが、経済界にも政界にもなかなか現れてこないと言われている。
🧒;でも結構頑張っている人もいるじゃないですか。
👨🦳;ああ、たくさんいるが、もう一段ステージを上がり、社会全体をリードするまでには今ひとつ至らないんだ。そう感じているのは私だけではない気がする。
🧒;かなりのリスクを負い、大きな活動をして、たくさんの人を巻き込んでいた人たちでもつまずいてしまうということですよね。。それよりも、自分がリーダ一シップを発揮しようとした時は停滞などしない、失速などしない、挫折などしないと言い切れないですよね。
👨🦳;ああ、それに何か一度うまくいってしまうととの安定にとらわれて成長を止めるということもあるからね。
🧒;自分で縮まってしまうということですねよね。
👨🦳:この本では、「すごいリーダー幻想」にとらわれてはいけないと何度も繰り返してきた。
🧒;はい。リーダーシップの旅はだれの前にも広がっていて、一歩を踏み出すことから始まる。そして、その旅の一歩を踏み出す原動力は人それぞれだとも書いてありました。
👨🦳:ああ、その動機は利己的なものであってもいい。力強く歩みだすことが大事だ。そして、歩みだしたら大きな覚悟が必要になるし、考え方の変化を問われる時期が来る。
🧒;考え方の変化ですか。
👨🦳:例えば、会社は、設立を決めた瞬間は創業者のものだ。けれども、瞬間的にそうであるだけで、他人からお金を借りたり、商品アイデアに賛同してくれた人から出資を受けた段階で、早くも創業者個人の所有物でなくなる。「働きたい」と言ってきた人を雇い、「商品を買いたい」と手を差し伸べてくれた取引先に出荷し、最終的にはお客さんが「これ、いいね」と買ってくれる。要するにさ、自分の考えだけで前に進めなくなってくるってことさ。
🧒;確かに、中には、金もうけが夢だと明言する創業者もいるでしょうけど。ですが、実際にはそういう会社が長くもたないことは様々な事例によって明らかですよね。
👨🦳;そう。長く存続する企業では、創業者の思いがステークホルダーによって連鎖的に裏書きされ、企業活動が拡大するに伴って、支援もまた拡大していくんだ。初めは自分が「見えないもの」を見て、夢の実現に向かって一人で行動を始めたとしても、振り返ると人がついてきてくれて、巻き込む人数も増えていく。その結果、リーダーになるのだが、同時に、人についてきてもらったという経験が、原動力を利己から利他へと転換させる。
🧒;結局、利己的なものから利他的な考えに変化することが必要になってくるということですね。
👨🦳:そうそう。リーダーシップの旅を歩む人は、自分の「内なる声」を聴き、一歩を踏み出す。その声が真摯であればあるほど、人はそこに共感してくれるんだ。そして支援と協力の輪が広がっていく。
🧒:そうなると、自分が先頭に立つから人がついてくるのではなく、人が後押ししてくれるから自分が先頭に立てる、やっていけるとなりますね。
👨🦳;自分が他人を支えているのではなく、他人が自分を支えてくれている。己と他の境界線は溶解し、利己と利他は渾然一体となる。これこそ「自分の夢がみんなの夢になる」ということなんだ。利己と利他のシンクロナイズが最も大事なんだ。
◆サーバント・リーダー
👨🦳:それと、利他も利己になるということがある。例えばこんな話がある。
地獄では大釜の中でうどんが湯気を立てて煮えている。ところが、それを食べるには、長さ一メートルほどもある長い箸を使わなればならない。地獄に落とされた人たちは、その長い箸で争うようにうどんをつかもうとする。しかし、箸が長すぎるので、うまく口に入れることができない。みんな自分が真っ先に食べようと争うが、うどんは飛び散ってしまい、だれも食べられない。
極楽にも同じような大きな釜がある。うどんが煮えており、長い箸を使うのも地獄と同じだ。ただ、大きく違う点が一つだけある。極楽では人々はうどんを長い箸でつかむと、釜の向こう側にいる人たちに「どうぞ、お先にお召し上がりになって下さい」とすすめる。釜の向こう側の人はそれをいただき、「ごちそうさまでした。今度はあなたにお返しさせて下さい」と相手に食べさせる。だから、極楽では全員がおいしいうどんを食べられる
🧒:これは面白いですね。なるほど、結局利他が利己に戻ってくるわけですね。
👨🦳:利己と利他に関しては、「サーバント・リーダー(奉仕型指導者)」という概念も参考になる。その提唱者であるR・グリーンリーフは、リーダーとサーバント(従者、奉仕する人)」という本来一致しない言葉を同居させ、リーダーが自分たちに奉仕する、尽くしてくれると思える時にフォロワーはついていくと考えたんだ。
🧒;サーバントリーダー。。ですか。
👨🦳;サーバント・リーダーには次のような行動特性がある。
1、 サーバントだから受け身というのではなく、意識的なイニシャティブ、率先して示す。
2、 何がやりたいのかが分かっている。その行き先を示すビジョナリーなコンセプトを抱き、それがあるからこそ、奉仕する対象の人たちと究極のコミュニケーションができる。
3、 傾聴と理解。アラビアンナイトの物語『アラジンと魔法のランプ』に出てくるサーバント(ランプの魔人)が「ご主人様、お呼びですか。何をお望みで」と尋ねるように、主人(フォロワー)の期待、要望、お願いに耳を傾け、理解する。
4、 ある種の先取り能力、先見性も求められる。サーバント ーダーはフォロワーに見えないものを見て、知りえないことを知り、予見しえないことを予見する。
5、 控えることを知っていること。役立ち、尽くし、その存在が人々の癒しともな
ること。そのような行動があってこそ、サーバント・リーダーは成り立つ
🧒;なるほど。でもなかなか難しいですね。ただし、いくらリーダーがフォロワーの望みに耳を傾け、奉仕しても、描くミッションや至高のものがなければ、サーバント・リーダーではなく、単なるサーバント (召使い)になっちゃだめですよね。現場が強すぎるとなりがちです・・。
👨🦳:そう。サーバント・リーダーシップは媚びる生き方ではなく、下僕になることでもない。ビジョン、概念化能力、さらに使命感をもつサーバントとは、お役に立ちたいという自然な感情によってリーダーが行動し始める場合なんだ。
🧒:わかりました。
◆リーダーシップの暗黒面
👨🦳;ここまでリーダーシップの本質をたどってくると、ある疑問に到達してくるんだ。例えば、ヒトラーはリーダーだったのだろうか?かだ。
🧒;なかなかきわどいところに触れますね・・・。
👨🦳;ヒトラーはアーリア民族の優越性を叫び、ヨーロッパに戦火をもたらした。それだけでなく多くのユダヤ人を虐殺した。けれどもヒトラーは「第三帝国の繁栄」という「見えないもの」を見て大きな絵を描き、途中までは領土拡大という結果をもたらしドイツ国民の心をとらえたと言えてしまう。
🧒;確かに、、ナチス党員はヒトラーの描く絵が正しいと思ったから「喜んでついていった」のだし、ヒトラーは「後ろを振り向けばついてくる人がいる」経験をしたのだと思います。やはりリーダーシップって怖いですね。
👨🦳;そう。リーダーシップには怖い側面を持つんだよ。リーダーシップがそこに存在するかどうかを見定める基準として、一つには、「喜んでついてくるフォロワーがいる
か」という問いを重視してきたんだが、ここでもう一つ付け加えないといけない。
🧒;はい。
👨🦳;二つ目の大事な問いは、「フォロワーが自律的な判断を失うことなく、喜んでついていっているのか」だ。リーダーが強力であるがゆえに、メンバーが従順になりすぎたり、自律性を欠いてしまったりすれば、問題だと思う。
🧒;なるほど、独裁者や一部の新興宗教の怪しげな教祖をもリーダーと見なす場合は、リーダーシップにはそのような「ダークサイド」陥らないことが重要なのですね。
このことからも、一番最初にあった、カリスマ論に経営者のリーダーシップ論を見出すのは危険ですね。
👨🦳;そうなんだよ。フォロワーの自律機能を失わせていないということもじゅうようなんだ。上記ではだいぶ極端な話だったかもしれないが、程度を下げれば自分が会社組織でリーダーシップをとるときも同じというわけだ。リーダーの失敗からそんな教訓を学び取ることもできる。しかし、本当に大切なのは、リーダーシップの暗黒面や失敗したリーダーを三人称で評価することではなく、「自分なら」という一人称で受け止めることだ。歴史から学ぶとは、そういうことなのだと思う。
◆ギフトを返す旅
👨🦳;さて、いよいよ最後だ。リーダーの心の中で、利己と利他がシンクロナイズし、素直な自己中心性ゆえに社会性へと回帰する。その過程で、旅はリード・ザ・ピープルからリード・ザ・ソサエティへと段階を変えていく。この段階まで旅を続けられる人はそう多くはないかもしれないが、リーダーシップの旅を完結させるものについて考えてみたい。
🧒;はい。旅の完結ですね。
👨🦳;野田さんが所属していたINSEADでは、MBAの学生による投票で最優秀教授賞を授与された教授が、これから旅立つ彼(女)らにはなむけの言葉を送る習慣があるそうだ。野田さんは何回かスピーチをする機会があり、引用したのが、映画『スパイダーマン』に出てくるセリフだったそうだ。
🧒;スパイダーマンは全部見ましたよ。
👨🦳;ある時主人公ピーターは、授かった蜘蛛の力を自分のために使おうとする。車を買うお金欲しさに、プロレスのリングに上がり、首尾よく対戦相手をやっつけます。ところが肝心のギャラは約束通りの額ではなかった。ピーターは怒る。と、突然、強盗が現れ、プロレス事務所の金を盗んでいく。ピーターは強盗を見逃してうそぶく。
🧒;そこで、ピーターは「僕には関係ない」。ピーターが外に出ると、人だかりがしていた。もしやと思って駆け寄ると、育ての親であるベン叔父さんが倒れていたんですよね。
👨🦳:そう。ピーターが見逃した強盗に襲われ、ナイフで殺されたのだ。その時、ピーターは、生前の叔父さんの、言葉を思い出す。「大いなる力には大いなる責任が伴う」
この言葉なんだ。これが野田さんが伝えた言葉だという。
🧒:なるほど。初めはジコチューだったピーターは、授かった力に戸惑いながらも、この叔父さんの言葉を胸に、一つ一つ苦難を乗り越えて、次第に自分の責務に目覚めていくんですよね。
👨🦳;私たちは、人生において色々な力を「ギフト」としてもらっている。生まれつき両親から授かったものもあるし、努力してつかんだギフトもあるかもしれない。リーダーシップの旅を歩き続け、結果としてリーダーになった人はとてもたくさんのギフトをかち取っている。しかし、自分ではかち取ったと思っていても、その大部分は周囲の人たちの協力があってこそ、手に入ったものなんだ。
🧒;すごくわかります。本当に支えられ助けられ、ギフトで生きてきています。
👨🦳;ギフトというものには、世界共通の原則があるんだ。もらったギフトは返さなくてはいけない、くれた相手にではなく、他の人や社会に対して返すという原則だ。
🧒;私たちは、自分の努力の結果であれ、授かったギフトに対して、それなりの責任を負っているのですね。その自覚が支えとならなければ、リーダーシップの旅を完結させることはできないということですね。
👨🦳;その通り。心からの熱い思いがあり、何か実現したいと夢や志を真剣に語る人に、周囲の人々は喜んで手助けをしてくれる。
🧒;リーダーシップの旅を歩む私たちは、人に助けられ、支えられる中で、自分が人を活かしているのではなく、人に自分が活かされている、そしてそのことによって、自分はさらに行動できるのだという意識をもつのですよね。
👨🦳;利己と利他が渾然一体となり、「自分のため」が「人のため」、「人のため」が「自分のため」と同一化する中、リーダーは、自分の夢をみんなの夢に昇華させるんだ。
🧒;そして、人から喜んでもらえる、感謝されるという経験が、利己と利他のシンクロナイズを加速させ、私たちの「世のため人のため」という社会への責任感、コミットメントを醸成する。その中で、暗黒面に陥ることはなかっただろうかとフォロワーの自律、自分自身の姿勢を問い続けることが肝要となる。
👨🦳;そう。リーダーは、リーダーシップの旅の中で、大いなる力というギフトを授かる。旅を歩み続けられること、それ自体ギフトでもあるんだ。私たちは、もらったギフトを他人と社会に返す責務を負う。その意味で、ノブレス・オブリージュとは、旅を歩み続けたリーダーが自発的に背負う責務感になるんだ。ギフトを社会に返す中で、私たちはさらに真の意味での社会のリーダーへと成長していく。是非ここを目指してほしいんだ。
🧒;わかりました。まず、勇気をもって、旅の第一歩を踏み出そうと思います。
👨🦳:そう思ってくれたなら、今回の解説の意味があったということだな。積み上げてきた信頼と夢をつないで是非旅を進めていってくれ。
🧒;ありがとうございました。
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本書の解説はここまでです。同じような内容を何度か繰り返す5章ではありましたが、利己的でなく利他的に、結果的に利己になっていくというところはやはり実感としてわかりますよね。そして、暗黒面が現れる可能性があることは気を付けていかなければならないですね。そして、何よりギフトという意識をしながら日々精進していきたいものだなとつくづく感じました。
さて、今回で各章の解説は終わりになります。次回、まとめの投稿を行い。本マガジンを終了したいと思います。
ぜひ、スキ・フォローいただければ幸いです。
*なお、下記の固定記事に私のnoteの全体コンセプトを記載しています。
(初期のコンセプトからいろいろ飛躍していますが・・)
これまでの複数マガジン(書籍解説)を作成してきましたが、一覧と位置づけは下記です。(一つでも興味がおありでしたら、上記【導入編】のリンクを載せているので覗いてみていただければ嬉しいです。)
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