ポビドンヨード研究の誤解を解きたい

今回の発表は「研究自体の内容」と「応用の可能性」の区別がつきにくく、多くの誤解が生じているように感じられます。

そこで、誤解を解くために「研究自体の内容」について解説を行います。

※筆者は専門家ではありませんし、論文化されていないこともあり詳細な情報が不足しています。内容の保証はできかねます。

ソース

吉村知事・松井市長・松山センター長による会見動画
研究内容説明資料
会見で用いられたフリップ

この解説はこの3つを見ての私なりの解釈に基づきます。他にも公式に発表された資料をご存じの方は情報提供していただけると助かりますm(_ _)m

超重要ポイント

①本研究は大きなプロジェクトの第一段階にあたる研究。プロジェクト全体の研究目的は「軽症→重症 を防ぐ重篤化防止方法を発見する」。

②本研究個別の内容は「ポビドンヨードうがいは軽症者の唾液中のウイルスを殺すことができるか否か」で、結果は「殺すことができた」。「唾液中のウイルスを殺せば重篤化が減ったり何かいいことがあるか」は未研究。

③PCR検査は目的ではなく手段。唾液中のウイルスの量が減ったかを調べるために使われたと思われる。からだ全体として治ったか否かは研究対象外。

よくある誤解個別回答

Q1. 健康→罹患 を防ぐ予防効果がある
Q1'. 軽症→健康 になる回復効果がある

A1. 研究対象外なので不明です。「軽症→重症 を防ぐ重篤化防止方法を発見する」ための研究です。

Q2. 風邪予防においては 水うがい>ポビドンヨードうがい なんだが?

A2. だから予防は関係ねーつってんだろ すでに軽症なんだよこっちは
仮に予防だとしても風邪とコロナで同結果になるって保証あんの?

Q3. ポビドンヨードで殺ウイルスしてんだからうがい後の唾液PCR検査が陰性になるのは当然だろ

A3. 一体いつから───────ポビドンヨードが唾液中で殺ウイルス効果を発揮できると錯覚していた?

今回の研究はまさにその点、「ポビドンヨードは軽症者の唾液中のウイルスを殺すことができるか否か」の研究です。

Q4. みんなこれやったら唾液PCR検査偽陰性増えるから逆効果なんだが?

A4. 誰も「府民全員ポビドンヨード使え」とは言っていないし従来の鼻咽頭PCR検査には影響はありません。指定された方々だけポビドンヨードうがいをやってください。PCR検査の方は検査機関に「該当者は唾液ではなく鼻咽頭PCR検査を実施せよ」とかお達しが出てるんじゃないですかね多分。

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Q5. 唾液PCR検査だけ陰性になっても全身が治るわけではない

A5. んなことぐらい知っとるし誰も治るなんて言ってねえだろ

Q6. じゃあなんで唾液PCR検査を使ったの?全身にウイルスがいるか調べるものでしょ?

A6. 前者については、会見によると「唾液中のウイルスの量が減ったかを調べる」のに安定して使える方法が唾液PCR検査ぐらいしかなかったようです。そもそも罹患してるか否かというざっくりした判定すらPCR法でウイルスを増殖させないとできないわけですし。

そして後者ですが、必ずしも唾液PCR検査=全身にウイルスがいるか調べるものではありません。我々一般人とこの研究とでは唾液PCR検査の結果の捉え方が異なります。手段は同じですが目的が違う。

■我々
目的:唾液の持ち主が罹患者か調べる
手段:唾液PCR検査
基準:一定量超えたら全身にもウイルスがいる=罹患者とする

■本研究
目的:唾液内のウイルスが減ったかどうか調べる
手段:唾液PCR検査
基準:一定量超えたらウイルスが減ってない=殺ウイルス効果なしとする

あくまで私の理解ですが唾液PCR検査は結果としてウイルスの有無が分かるだけで、その結果の用途(解釈の仕方)は別に罹患者か否かの判定のみに限られるものではないと思ってます。

Q7. 唾液の殺ウイルスができる=飛沫感染しなくなるんじゃ

A7. その可能性はあると一般人も研究者も知事も思ってますが、現段階ではあくまで可能性であり誰も保証はできません。ポビドンヨードうがいで唾液殺ウイルスができることは分かりましたが、唾液殺ウイルスすると何ができるか・起こるかはまだ誰も研究していません。重篤化に効果がないかもしれませんし、逆に予防に効果があるかもしれません。


研究経緯まとめ

誤解を解くだけならここまでで十分な気もしますが、一応研究について解説します。細かい説明は後で行うとして、経緯を簡単にまとめると

軽症者の唾液を殺ウイルスすると症状悪化防止できそう
→実験したい・・・けど唾液を殺ウイルスする方法がまだない
→じゃあまず殺す方法を研究しよう
→ポビドンヨード使ってみたら結構殺せた
→「唾液を殺ウイルスする方法」として論文化(※今ここ)

研究自体はたったのこれだけです。

研究背景

先述の通りこのプロジェクトのゴール地点は「軽症→重症を防ぐ重篤化防止方法を発見すること」であり、今回のポビドンヨードうがいの研究はその第一段階にあたります。

しかし一体なぜポビドンヨードうがいが重篤化対策に繋がるのでしょうか?
これは一気に解説すると長文になってしまうので、

 ・ウイルス入り唾液と重篤化の繋がり
 ・ポビドンヨードうがいとウイルス入り唾液の繋がり

の2つに分割して解説していきます。

ウイルス入り唾液と重篤化の繋がり

繰り返しになりますが、最終目的は重篤化防止です。
会見によると、重篤化の過程について以下の知見が得られているようです。

 ①軽症から重症に変化する患者は肺炎になってる人が圧倒的に多い
 ②ほとんどの肺炎の発生原因はウイルス入り唾液の誤嚥によるもの

これらを逆の意味で捉えると、このような考え方ができます。

 ①軽症から重症に変化する患者は肺炎になってる人が圧倒的に多い
  →肺炎を減らせば重症者が減るのでは?
 ②ほとんどの肺炎の発生原因はウイルス入り唾液の誤嚥によるもの
  →ウイルス入り唾液の誤嚥を減らせば肺炎が減るのでは?

あとはこれらを組み合わせることで、「ウイルス入り唾液の誤嚥を減らせば重症者も減るのでは?」という繋がりに辿り着くことができます。

ポビドンヨードうがいとウイルス入り唾液の繋がり

次に「ウイルス入り唾液の誤嚥を減らす」の具体的な方法についてですが、今回は「唾液中のウイルスを殺す」方法が選ばれています。(他の選択肢に関しては資料がないため自分で考えてみましたが、唾液そのものを減らす・誤嚥を減らすなどに比べれば素人目でも現実的に思えました。)

・・・ところが、この「唾液中のウイルスを殺す」方法が存在しません。

故に、まず先に「唾液中のウイルスを殺す」の研究をしないと本命の研究に進めないわけです。

唾液中での方法は存在しませんが、幸いにも試験管(おそらく水)での研究で、コロナウイルスに対して抗ウイルス効果を発揮したものがありました。ありとあらゆるものを唾液に使ってみるより、まずこれを使ってみるのがよさそうですね。

で、これが何かというと、ポビドンヨードだったのです。

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論文漁れば他にも抗ウイルスできるものはあるのでは、とも思いますが、ポビドンヨードは入手も使用も容易というのもポイントだったのではないかと。「硫酸に抗ウイルス効果が!」ってなっても口に入れられないし。

また、あまり触れられませんでしたが、インフルなどが耳や喉で増えるのに対してこれは舌の周りで細胞が増える特徴的なウイルスであるようです。ポビドンヨードの使い方もいろいろありますが、誰でも簡単に舌全体にポビドンヨードを当てられるという面からうがいが選ばれたのだと思います。

長くなったのでおさらいすると、

・ポビドンヨードうがいで唾液の殺ウイルスができれば
・ウイルス入り唾液の誤嚥による肺炎が減って
・肺炎による重篤化が減るかもしれない

ということになります。背景については以上です。

研究内容

背景のところでほとんど話してしまったので、内容・方法・結果についてはサクッと書きます。

ポビドンヨードは
人体の口内環境でも
唾液に対して
殺ウイルス効果を発揮するか

研究方法

ポビドンヨードの使用方法:うがい。ただし今回は口内(特に舌)に当てるため、通常の正面・上向きのうがいに加え下向きのうがいを実施する
ウイルスが減ったか否かの確認方法:唾液をPCR検査にかけ、陽性なら減っていない、陰性なら減ったと判定する。

研究結果

ポビドンヨードは
人体の口内環境でも
唾液に対して
殺ウイルス効果を発揮した・・・と思われる(※未査読のため保証不可)

応用の可能性

唾液の殺ウイルスを軽症者に行えば肺炎が起こらず重篤化が防げるのでは、というのがもともとの応用方法だったのですが、ほかにも様々なことに使えそうです。

例えばウイルス入り唾液が原因で飛沫感染が起きるわけですから、健常者や無症状病原体保有者が行えばマスク無しで会話してガンガン唾液を飛ばしても飛沫感染が起こらなくなる可能性があります。

また、ポビドンヨードうがいによって喉の細胞が剥がれているかもしれないという話も会見中にありました。これが本当なら喉の細胞を巣に増殖している最中のウイルスも細胞ごと除去できるので、そういう理由から重篤化だけでなく回復・予防に効く可能性もあります。

水うがい

上の方でそもそも比較にならんわと書きましたが、どうもこの研究では殺ウイルス効果という観点で多少調べてはあるようです。結論としてはただの水が当たるだけなので「殺ウイルス効果はない」のですが。

ただし「唾液への殺ウイルス効果」ではなく「口内のウイルス量を減らす方法」という観点では有効です。最後にペッと吐き出すことで水+ウイルス入り唾液が排出され、うがいしないよりはウイルス量は減ると。

部屋に湧いた虫に対してその場で殺す(殺ウイルス)か、窓を開けて外に追い出す(ウイルス入り唾液を吐き出すか)か、って感じですかね。

買い占め

研究と関係ない範囲なので書くつもりなかったんですが、あまりにもアレなので・・・

あえてボロクソに言いますけど、感染者増やして工場と病院で過労死発生させて税金使って、私はそこまでしてでも私1人を救う(かもしれない)うがい薬が今すぐ欲しいですってアピールですからね?買い占め行為ってのは。

ポビドンヨード入りうがい薬は

・薬事法に触れるので転売目的の購入はない
・マスクと違ってもともと国産
・国とメーカーに話はつけてあるのでライン増強も簡単
・なんなら経産省がメーカーに補助金も出す
・そもそもポビドンヨードうがいの励行対象は特定少数の府民だけ
・薬事法に触れるので府が配布することもできない

なので、他人を思いやる気持ちがある方はまず本当に必要な励行対象者が自分で買えるようにしてあげてください。

1日に数人と外ですれ違う程度の貴方が買うことで、1日に多人数と濃厚接触する接待を伴う飲食店の従業員が買えなくなり、クラスターが発生します。

そして「ライン増強簡単ならガンガン買ってガンガン生産させればええやん」と思うかもしれませんが、経産省の補助金の原資はもちろん税金ですし、工場の人たちは残業過多でぶっ倒れたり免疫低下で感染してしまうかもしれません。

そこまで他人に迷惑をかけてでも我が身が惜しい、我が身にそこまでの価値がある、という方はどうぞ一刻も早く多数お買い求めください。

終わりに

ここまで読んで僕の言ってることが1つでも正しいと思いましたか?

この意見とは異なる↓のような意見もありますが、どっちが正しいと思いますか?医学素人な僕個人の記事と自称皮膚科医の1万RT&いいねツイート、どっちが信頼できますか?

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・・・会見動画、自分で見てみませんか?



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