勝手にアナリストレポート Vol.1005:ispace(9348 TSE-G)
今日のお題はispace(9348)の株価急落について。ファンダメンタルズを考察したアナリストレポートではありません。スポンサード記事でもなく、本当に「勝手に」書いたものです。
2023年4月12日、月への物資輸送サービスをはじめとした月面開発事業を手掛けるispaceが東証グロース市場に上場しました。目論見書記載価格244円、仮条件234~254円という条件に対し、公募価格は仮条件上限の254円に決定されました。上場初日は値付かずで終了し、翌13日に初値1,000円で売買が開始されました。その後も活発な売買を背景に4月19日には2,373円という高値を記録しました。上場予定日の4月12日に「民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1のランダー(月着陸船)の月面着陸予定日時を最短で4月26日1時40分(日本時間)に設定した」と発表されたこともあり、期待と思惑から株価は上昇したものと考えられています(株式価値がたったの1週間で10倍になるって、失敗ディールだよねと私は考えちゃいます)。
https://ispace-inc.com/jpn/news/?p=4584
しかしながら、ランダーが月面高度約5kmまで接近したものの、月面への軟着陸には至らなかったことが伝えられると(詳細の成果報告は5月26日、https://editor.note.com/notes/n706583aa2b3b/edit/)、株価も大きく下がることとなりました。その後、株価は1,500円前後で一進一退の推移をしていましたが、10月10日の主要株主の異動を伝えるリリースにより、株価は再び大きく下落してしまいました。
リリース内容は以下の通り(https://www.release.tdnet.info/inbs/140120231010564269.pdf)
2023 年 10 月 10 日、当社の主要株主である IFSPV2 号投資事業組合の組合員に対し、当社株式が現物分配されたことから、IFSPV2 号投資事業組合の所有株式数が 0 となることとなりました。この異動が発生した旨について、2023 年 10 月 10 日、IFSPV2 号投資事業組合の運用者であるインキュベイトファンド5号有限責任事業組合より報告を受け、また、2023年 10 月 10 日付でインキュベイトファンド5号有限責任事業組合の業務執行組合員である赤浦徹氏より大量保有報告書(変更報告書)が関東財務局に提出されることにより、主要株主の異動を確認したものです。
この報告を受け、需給悪化を懸念した株式市場は売りが先行し、株価は急落です・・・
IFSPV2号が所有する9,842,500株(発行済み株式数に対する割合12.24%)、約25億円は新規上場時に親引けで取得したものです。組合員に対し株式を現物分配する=投資事業組合の所有はゼロになる≠組合員が売却する、にはならないはずですが、市場ではロックアップ解除で株式を現物分配された組合員が売却すると考え、需給悪化を想像したのでしょう。
リリースにも記載の通り、治療保有報告書は投資事業組合の代表者である赤浦徹氏の名称で提出されてはいますが、インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合、IFSPV1 号投資事業組合、IFSPV2 号投資事業組合の業務執行組合員として提出したものであり、赤浦徹氏個人の所有株式数の変動に起因するものではありません。 IFSPV2 号投資事業組合の現物分配による株式数の変動によるものであることから、インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合、IFSPV1 号投資事業組合の株式数にも変動はないと明記されています。赤浦氏個人には現物分配もされているようですが、リリースには丁寧に「今後も安定株主として長期保有する予定である旨、社外取締役として引き続き企業価値向上に資する旨の報告を受けた」と記載されています。
10月10日12時にリリースが公表され、翌日以降の出来高は11日3,286千株、12日6,658千株、13日3,092千株と高水準の取引が続いていますが、あくまでも需給悪化を材料にした空中戦と考えた方が自然でしょう。大量保有報告書の提出期限は報告義務発生日の翌日から5営業日以内であることから、その報告有無によって、株価も落ち着いてくることになると個人的には思っています(現物分配された人が売却していない前提にはなりますが)。
個人的には、リリース内容に問題はなかったと思います。かなり丁寧に書かれていたので、しっかりと読めば脊髄反射的な株価動向にはならなかったのかなと思ったりします。強いて言えば、12時に開示されたことで、反射的に対応するしかなかったということはあるのかなと思います。タイムリーディスクロージャーの観点では、12時開示も致し方なしだと思いますが、需給だけ考えたら、引け後に開示して、しっかりと内容を周知させたいところでした。開示って難しいですね。メディアは何の分析もなく、需給悪化懸念で株価暴落と報じるだけでした。だから、メディアは嫌いです。
FTの記事だったり、ispaceは何かと話題提供してくれますが、夢広がる宇宙関連企業として、大きく羽ばたいていってほしいなと思います。IPO時の親引けに関しては思うところもありますが、これはispaceというよりはSMBC日興マターですし、このようなオープンスペースで書くべきことではないと考えています。ただ、IPOに関してアドバイスをする立場としては、色々と考察していきたいこともあります。
決算発表も相次いでいますので、ファンダメンタルズに基づいた勝手レポートの執筆も頑張ります!
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