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やっと、肘を怪我できた

レクリエーションで年甲斐もなく、はしゃぎ過ぎて、大転倒して肘から出血までしてしまった。笑
未だにズキズキ痛む肘を気にしながら、この文章を書いている。

事前に聞いていたのは、「嫌いな自分と向き合う2日間」になるということ。

そして実際に感じたことを、そのまま表現すると「反吐が出るほど嫌いな自分と思いっきり向き合う2日間」になった。

ZaPASSコーチ養成講座 Advance

先週末、5月29日~30日でZaPASSの合宿があった。

いろいろなことがありすぎて、すべてを書くことはできないが、この2日間を通して感じたことを書いてみようと思う。

冒頭に書いた通り、この合宿に参加する前から聞いていたことがある。

「嫌いな自分と向き合う2日間」になるということ。

それは自分の中に潜む、目を向けたくない本当の自分。

目を向けてないだけで確かにそこにいる。過去の体験から自分の中に作り出されたもう一人の自分。インストラクターのたけさんは「モンスター」と表現していた。

それは大体の場合、過去の苦しみや痛みとセットで生まれたもの。

例えば、大勢の前で恥をかいた体験が。

例えば、友達と喧嘩した体験が。

例えば、両親に見捨てられた体験が。

自分の中にモンスターを産み落とし、数々の行動を制限する。

人前に出ることをやめ、本音を言うことをやめ、誰かを愛することをやめたりする。それはモンスターの仕業だ、とたけさんが言ってた。

これを乗り越えるためにできることはたった一つ。そのモンスターが生まれた理由となった思い出したくもない過去ときちんと向き合うこと。そしてそのモンスターの存在を認知し、上手に付き合っていくこと。

今回の合宿はそんな、つらい過去と向き合うのが一つのテーマだった。

ともに向き合う仲間

今回の合宿の参加者は11人だった。

年齢も性別もバラバラの11人。モンスターと2日間向き合い続けることだけが僕らの共通点だ。そしてこの体験を一緒に乗り越えた11人とはずっと繋がっているんだろうとも思えた。戦友といったほうが近いかも?皆さんありがとう。大好き。

カリキュラムの詳細は割愛するが、11人でいろいろなワークやアクティビティを経て自分と向き合っていく。初日の夜を迎えるころには心も身体もボロボロだった。

ZaPASSのコンテンツがとても好きな理由の一つが、お互いの気持ちのシェアの時間があること。

それぞれがコンテンツを通じて、自分と向き合っていく気持ちのシェアをする。もちろん楽しいことばかりではなく、時には言いたくないであろう辛い過去の話や、隠したいであろう惨めな自分の姿なんかも。

みんな歯を食いしばっているんだ。嫌いな自分と向き合い続けているんだ。そう思うと、日常生活では気づいても気づかないふりをしてる情けない自分像がゆっくりと輪郭を持ち始めた気がした。

失望されることに、おびえる日々

昔からそれなりにいろいろできた。

勉強も、スポーツも、人間関係も。大した努力もしていない。なんとなく人よりも、ちょっとだけできた。

だんだんと周りからの自分への期待に気づく。「しんごならやってくれそう」「しんごはできるやつだから」。

最初は実績を出して、人から評価されていた。気づいたら順番が逆転していて。周りから期待され、失望されるのが怖くて、実績を出した。こうやって何とか作り上げた「できるやつ像」が崩れるのがとにかく怖かった。

そして気づいたら、周りからの期待は自分の実力の遥か上をいくようになる。もう後戻りはできなかった。

自分でも気づいていなかった

勉強しなくても点数がとれちゃう自分。練習しなくても試合で活躍できる自分。かっこいいと思っていた。泥臭くやることよりも、スマートにできちゃうほうがずっといいと思っていた。

何より、頑張って、努力して、「できない自分」を証明するのが怖かった。

「できる自分」への執着。それこそが僕のモンスター。

振り返ると、自分が誇りに思っていた過去の様々な挑戦はすべて、自分の弱さを塗り隠すための挑戦ばかりだった。

一人で一か月、インドにバックパックをしに行ったこと。

一人でヒッチハイクをしてみたこと。

サークルを立ち上げる話に乗っかったこと。

数十万をかけてコーチングの講座に申し込んだこと。

僕の挑戦はすべて「何に飛び込んだか」であり、「何を成し遂げたか」ではなかった。

そして、僕が逃げてきた挑戦もたくさんある。

中3の夏休み、塾で受けた模試では早稲田の付属高校にA判定の印があった。舞い上がった。周りに自慢もした。

最終的に僕が進んだ進路は、中央大学の付属高校。もちろん偏差値は早稲田より低い。「共学だから」とか「自転車で通えるから」とか適当な理由をつけて、自分で選んだ振りをしたが、僕が本当に進路を変えた理由は違ったはずだ。今でも覚えている。冬の最後の模試でB判定に下がったからだって。きっとあれだけ豪語した早稲田に落ちるのが怖かったから。

就活もそう。周りが大手企業にこぞって進む中、「大手に行く意味を感じない」と30人規模のITベンチャーを選んで新卒で入社した。大手企業は面接を受けもしなかった。

仲のいい友達が大手企業に受かる中、自分だけ落ちるのが怖かったのだと思う。そして無意識のうちに、他人と違う選択をすること負けを回避していた。

負けたくない

勝敗のつくもの、合否の出るもの、点数が出るもの、評価がつくもの。

すべて自分にとっては、必死で着飾った自分の衣服をはぎ取られ、何もないスカスカな自分が露わにされてしまう避けるべきイベントだった。

そうして、いつしか他人と違う選択をすることで負けを回避するようになった。

「俺は大手とか興味ないから、そのレースから降りるわ」こう言って、周りからの評価は保てていた。周りに流されず、かっこいいとまで言われた。

これは僕が誰よりも負けたくないからこそ、絶対に負けることのない「これはこれで正解」を取りに行った結果だった。

目の前の一瞬の「かっこ悪さ」を避けるために、挑戦から逃げていた。

そんな自分に気づいたとき、心の底から嫌気がさした。情けなくて仕方がなかった。人に話せばすっきりするかと思ったけど、そんなことはなかった。ショックのほうが大きかった。自分すら自分に騙されていた。「自分はできるやつ」そう思い込んでいた。「たくさんの挑戦を乗り越えてきた」そう思い込んでいた。実態は違った。誰よりも逃げ続けて、だまし続けて、隠れ続けたのが僕だった。

そんな自分が何よりかっこ悪いことに気づくまで、10年以上もかかってしまった。

しっぽとり

もやもやしていた。昨日の夜、気づいた自分は本当に情けない。こんな自分が居たなんて、ショックで仕方なかった。つらい、苦しい、うざい、だるい、しんどい。

もやもやの残るまま、カリキュラムは2日目を迎えた。

「今日はしっぽとりをやりましょう」

びっくりした。でも心も身体も疲れ切っていたので、少しうれしかった。いいリフレッシュになりそうだ。

ルールは簡単。ビニールひもで作ったしっぽを4人で取り合って、最後までしっぽがついていた人が勝ち。参加してるメンバー以外は端で見ていましょう。といった感じ。

僕の番が来て、しっぽを装着する。たくさんの仲間が4人の試合を横から見ている。僕の頭の中は「どうやって観客を笑わせてやろうか」しかなかった。

最初から勝つ気なんてなかった。どうせ遊びだし。勝ち負けにこだわるより、ウケ取って、爪痕残して、それで負けたらなおさらオイシイ。そんなことを考えていた時にハッとした。

(今までずっとこうだったじゃんか)

勝ち負けのラインから外れて、「笑いを取る」という自分なりの正解を見出していた。「人と違う選択をして、負けを回避する」今までの僕そのものだった。

絶対勝つ

そう気づいた瞬間、頭の中で何かが弾けた。

(絶対勝たなきゃ。)そう思って、必死に頭を巡らせた。

まずは4人。遠巻きに様子を見ながら3人で戦ってもらってる間に、こっそり1人分後ろからスッととっちゃおう。これで3人。今度は2人が僕のほう向いた隙に、1人に目配せしてもう1人のしっぽとってもらおう。これで2人。1:1ならフィジカルで僕に分がありそうだな。あとは力づくでとってやろう。

作戦は大失敗だった。

1人分はしっぽをとれたものの、すぐに二人に囲まれて、間をすり抜けて逃れようとしたその時に、足をもつれさせて派手に転んだ。岩場に思いきり身体を打ち付けて、転んだ隙にしっぽも取られて、肘に怪我までした。血が出た。

盛り上がってたレクリエーションが、一気に静かになる。「しんご大丈夫?」「めっちゃ痛そう」「絆創膏あるよ」「消毒したほうが…」

惨めすぎた。こういうシチュエーションは苦手だ。(見ないでくれ、恥ずかしいから…)(もうゲーム進めててくれ)(構わないでくれよ…)ずっとそう思っていた。

たかがレクではしゃぎすぎて、すっころんで、しっぽも取られて、流血までして、あまりにも無様だった。そして、右肘は激痛だった。

ゲームに負けて気づいたこと

負けてしばらくして、ぼーっと考えていた。

そりゃ惨めだよな。恥ずかしいよな。思いっきり怪我したんだもん。

なのに、なぜか誇らしかった。きっと今までの僕はこのシチュエーションを避けてきたんだ。

負けたら惨めだし、かっこ悪い。怪我までして、本当に無様だ。

でもそれができなかった。今までこれが怖くて、笑いに逃げていた。

今日の僕は、ちゃんと勝敗のレールに乗って、ちゃんと挑戦して、ちゃんと失敗して、ちゃんと無様で、ちゃんと惨めだった。その姿はとってもかっこ悪かった。

「かっこ悪い」って、かっこよかった。

やっと、肘を怪我できた。

逃げるなよ

逃げるなよ。

評価から逃げるなよ。合否から逃げるなよ。点数から、勝敗から逃げるなよ。

負けたらかっこ悪い。でも、かっこ悪いってかっこいい。

惨めってかっこいい。無様ってかっこいい。かっこ悪いってかっこいい。

痛んで学べ。傷ついて学べ。苦しんで学べ。

鎧を脱ぎ捨てろ。着てる服を脱ぎ捨てろ。着重ねて、かさばって、大きくなった気になるな。

服を脱ぎ捨てたお前はちっぽけだ。認めろ。

お前を磨け。己を磨け。服を着重ねて大きくなった気になるな。筋肉をつけて自分自身が、でかくなれ。丸裸のお前で、でかくなれ。

これが僕が避け続けてきた価値観。

逃げ続けてきた価値観。

死ぬまで向き合いたいかっこいい価値観。

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