高度実践看護学実習

本学には、実は大学院修士課程で高度実践看護師(Advanced Practice Nurse)の養成課程がある。APNとは日本で言うところの専門看護師(Clinical Nurse Specialist: CNS)やナースプラクティショナー(Nurse Practitioner: NP)そしてかなりさりげなくではあるものの、当研究室の竹屋先生と山川はその担当教員である。先月、山川が担当する一期生の実習があり、初めてなのでかなり緊張した。現在の学部の領域別実習を創ったときも緊張したが、それよりもなによりもAPNの実習なんて私に組み立てられるのかな、という不安でいっぱいだったが、実習施設と学生さんの熱意によって素晴らしい実習になった。
本学のAPNのコースは、プライマリケアのエキスパートを養成するというものであるが、全部で4つの実習があり、私は2番目の実習を受け持った。それまでは、在宅、それ以後は特定行為もするので、そのトレーニングに主眼がおかれるが、私の担当するのは、地域包括ケア病棟での実習だった。APNの実習ということで是非地域包括ケア病棟でやりたいと願っての実習だったが、本当に素晴らしい実習になった。最後日のカンファレンスをきいて、疾患からのアセスメント、治療の妥当性や薬剤の詳細な特徴を理解した上での改善案の提案、不足している検査項目の提案など、さすがという医学的知識は全て患者さんの生活という視点の上にできている。退院後の生活も見据えた上での家族の役割や家の環境、社会資源、その流れるようなアセスメントをうっとりと聞いた。
APNの中でも特にNPだと、タスクシフト/シェアの絡みとともにミニドクターみたいに医者の代わりみたいに扱われて、当のNPも医者のかわりだもんね、みたいな振る舞いをする。処方権だとかそういう子供の陣地取り合戦みたいな幼稚な話が国ではされてるみたいだが、患者からすると、しっかりとした知識や技術、そしてこの人がいてくれたら安心ということが担保されたら誰でもいいんじゃないかと思う。
看護師は生活をみる職能だ。私が尊敬する医師が「診察室のドアを出て行ったあとの患者の暮らしが理解できないといけない」といっていたが、看護師はさらに踏み込んだ生活の様相をしって、そこにつながる「今」の看護実践がどれくらいのできるのかどうか、だと思う。そのための臨床推論、特定行為だと思う。
今回の実習はまさに看護の本質を可視化したものだった。私は特に指導なんぞ大それたことはできていないが、こんな実習をオーガナイズできて看護の深淵に触れることになった。この高揚感をなんて言ったらいいんだろう。自分のこれからの研究や教育にも大いに影響を受けるだろう体験をできたことに感謝。
(文責 山川みやえ)

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