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月刊 QはA #8「ヴァイナルリイシュー」

Stiffslack Monthly 2021年11月号に掲載されたコラムのアーカイブです。

レコードって、道の駅で売ってるちょっと美味そうなドレッシングのような位置づけで流行してるんじゃないかなと、僕は勝手に思っています。ちょっと高いけどせっかくだから記念に買おう、普段づかいの味ではないけども、こういうのを買って楽しくなれる感じって良いよねみたいな。「せっかく」の中に込められた諸要件は、人それぞれ違うんだと思いますけど、少なくとも、聴いてつまんない音源だったら即売りますよって心持ちでレコードを買ってる人達がレコードブームを支えてるわけではないだろうなと想像しています。

まあでも、音源としてレコードを買ってる人もいると仮定して、、僕、たまに気になるんです、ヴァイナルリイシュー盤の曲順が。CDからのヴァイナルリイシュー盤って当たり前のように既発の音源の曲順通りに曲が並んでることが多いと思うんです。が、リイシューされたレコードを音源として買って初めて聴く人を想定するとすれば、内周の音のマズいところにこの曲は違うなとか、B面1曲目に良いやつキメてやろうとか、そういう工夫って考えないんだろうか?ってちょっと不思議に思うんです。

レコードやカセットのような表面と裏面のあるメディアでは、当たり前ですが、音楽は各サイドのアタマからいちいち始まり直すわけで、しかもリスナーには、各サイドが終わるたびに手でメディアをひっくり返す手順も課せられる。音楽を受け取る時の心境のようなものは、当然CDやデータ、サブスクで聴く時のそれとは、同じはずがないと思います。同じはずがないのに、違いは考慮しないとは、どういうことなんだろうなあって意味合いです。少し話はそれますが、ヴァイナルリイシュー音源で、たまにCD音源に使っていた10数センチ角のブックレットがそのままレコードジャケットに放り込んであることがありますが、ああいうのも似たような体質を持ってるんじゃないかなと思ってます。このレーベルにとってレコードってなんなんだろうなと、疑問に思っちゃうんですよね、僕は。

例えば、Gang Of FourのEntertainment!で「I Found That Essence Rare」がB面の1曲目じゃなかったとしたら、話はだいぶ変わってくると思うんです。もしも「I Found That Essence Rare」がA面の最後の曲になっていて、お気に入りのこの曲を聴こうとする時、A面の最後付近の溝に針を置いて聴くわけですけど、その時、内周で音が少し歪んだり、他の曲と比べて音量があまり出てなかったりしたら、僕はイヤだなと思います。また、「始まり直す」って観点で言うと、やっぱり「I Found That Essence Rare」で始まり直すB面は最高にかっこいいし、そのままB面の続きも聴いてやろうと思いやすいんじゃないかなと思います、僕は実際そうです。StiffSlackっぽいところで言うと、Pilot To Gunnerの1st、僕、B面の1曲目「Bring It Live」がけっこう好きなんです、ブルーチップみたいでけっこうアガるんです(褒めてます)。CDでは6曲目のようですけど、この曲、普通そんな順番に置かないと思うんですよね、なんとなく。ああきっとこれはB面の1曲目ってことなんだろうな、とか。

CDのジャケ違い仕様のようなノリで続々とレコードでリリースされるリイシュー盤の中には、音源として、なんでレコードでリイシューしたのか意図が見えてこないようなブツがままあるなと思うんですって話でした。概してレコードだったらなんでもいい層に向けてレコード商品を作るバンドやレーベルが増えてきてるような気がしてます、善し悪しはさておき。おしまい。

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