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月刊 QはA #3 「飾らない方のレコード」

これは、Stiffslack Monthly 2021年6月号に掲載されたコラムのアーカイブです。

レコード好きです。僕はどちらかというと(収集しているいくつかの領域を除いて)、リスナーって立場にこだわって楽しむタイプかなと思っています。レコ屋でもDJでもコレクターでもなく、ただ聴きたいだけのリスナーやもんなって感じの自分勝手な流儀で楽しんでます。レコードってけっこう高いモノなんで、買うからにはきっちり楽しませてもらいまっせ的な感覚が根底にあるかもしれない。興味のある方、こんな人もいるんだなくらいのノリで読んでみてください。

15、6年前から、買ったレコードの音はほぼすべて自分でデジタルデータ化しています。新品でも中古でも、DLクーポンやCDが付いていても、既に持ってる音源でもやります。24bit48kHz程度で録ってALACにしてライブラリに所有します。データは曲毎にカットして、曲名などの細かい情報も整えて管理します。なぜそうするかと言うと、買ったレコードの音を家でしか聴けないのは音源としてコスパが悪いなと思っちゃうからですかね。出先でも買ったレコードの現物サウンドをそこそこ高音質なデジタルデータで聴くのは楽しいなと。こないだ買ったあのレコ、あんまいい音してないんやなーなどと電車の中で気づくこともよくあります。

あ、音を録る前に、必ずジャケットをスキャンしますわ。新品でも落書きがあってもそのままスキャンして自分で作ったデジタルデータに付けるアートワーク画像として使います。ネットに画像が落ちていない作品もあるからって理由もひとつですが、それ以前に、この音はあのレコードから録った音なんだと、音とジャケをちゃんと対(つい)にしておきたい気持ちがあるんですよね。音盤としてレコードはある意味ですべて一点モノですし、例えば、ネットに落ちてるやたらハイコントラストでじゃきじゃきにシャープのかかった商品画像を、僕の買ったレコード音源のアートワークとして組み合わせられるわけがないやんといった感じです。文字通りソースとして音源を買ったわけなので、デジタルだとかアナログだとか関係なく、音源は自分なりにちゃんと扱っておきたい気持ちが働くんだと思います。レコードブームとも言える昨今、レコードは、ソースとしてではなく、むしろお飾りやお土産物としてフィジカルである利点を買われているんだと思いますが、僕はそのブームには参加できていないんだと思います。

あと、家で針を落とす機会の少ないレコードを長いあいだ自分のレコ棚に入れたままにしないタイプですわ。ぱっと売却してしまうことが多いです。ド趣味の世界なんで、自分のレコ棚にはジャンルを問わず自分の好きなサウンドの音盤だけを収納したいです。それに向けてふるいに掛けつつ結果的に精鋭レコード達が手元に増えていくのが楽しいんです。自分にとってまあまあなレコードに執着する時間もスペースもないですし、リスナーとして自分本位に音盤の価値を決めたい。理由はなんであれなかなか手が伸びない音盤はドライに手放して次の資金に換えます。

買った音盤を簡単に手放さない方がいい、持っておけばいつか必ず聴きたくなる時が来てあなたを救ってくれるんだよ的な意見がツイッターなどで支持されているのを見かけたことがあります。まあそりゃそうだろうよとは思いますけどね、そういう意見を表立って言う人はきっと中古レコ屋が閉店するニュースが流れれば引用リツイートして、とても残念ですとかなんとかコメントするんだろうなと予想します。僕は中古盤の文化も好きなので、中古屋さんを通じて積極的に次のユーザーに引き渡す派です。中古はフィジカルの世界でしかあり得ない形態でもありますし、今後も文化として残っていって欲しい。

手放して入手してをさんざん繰り返しつつ自分にとって大事なレコードってなに?みたいなつまらん迷いの積み重ねが透けて見えるような、そんなレコ棚が家にひとつ出来上がったらいいなと僕は思ってます。買った音源がただ全部並んでるタイプのレコ棚や、特定ジャンルのディスクガイドがまんま並んでるようなレコ棚には、魅力を感じないんですよね。おしまい。

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