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『Outer Wilds: Echoes of the Eye』プレイ感想

 再び宇宙探索に行ってきました。

持病のもったいない病により、「DLCも一気に消費してしまうのはもったいない!」と、DLCの購入を半年ほど見送っていた。既プレイヤーの方々が「DLCはいいぞ」と口々に言ってくるので、楽しみにしておりました。

ちなみに、本編の感想記事はこれ↓

DLC単体で note 記事を書かないと思っていたが、あっさりと予想が外れた。この面白さは書き散らかしたくなるわ……いつもどおりの濫筆。本編の感想記事よりも文字数が多くなってしまった。


完璧な導入

 どんなゲームであれ、導入はとても大事だ。DLCの今作でもそれは変わらない。衛星写真にありえないモノが映り込む。この導入は素敵だ。Hornfels と Gabbro の会話記録が残っているのもいいね。日常ミステリーみたいな感じじゃない?小さな違和感が大きな冒険へとつながっていく予感、とてもワクワクする。マーカーとか無いから衛星まで行くの大変だなーと思いきや、信号が用意されてる!本編でも思ったけど、このゲームは本当に親切すぎる。

久しぶりの宇宙探索、大丈夫かなぁと心配してたけど、衛星まで行って角度を調べたりしてるうちに、すぐに感覚が戻った。衛星と一緒に太陽系を観察する。いきなり他のゲームでは味わえない宇宙体験。これぞ Outer Wilds。宇宙を探索するのは半年振りだったが、これですぐに火が着いた。

と思ってたら、そのあとの流れ者に入る演出ヤバすぎ。まず、辺りが暗くなったかと思いきや、いきなりなんらかの施設の内部に居ることに気付く。この時点でかなりドキドキした。光に誘われて降り立ってみると、【不明な言語】が出てくる。やべえ。未知の知的生命体の施設かここは。光に反応する機械?なんとなく先へ進んでいく。謎のインターフェイスが設置されていて、インタラクトできる。回転ってなんだ。ちょっと怖いがやってみる。

バシャーン!!

は?水?川?え?明るい?って、は?広っデカっはあああああああ?!

ぶったまげた。こんなめちゃくちゃデカい施設に入っていたのか。しかも景観もやべえ。なにこれ水どうなってんの?つーか音楽かっけえ。

この流れ者突入演出、最速で行くと初回と同じ展開にならない。別の入り口から入ることになる。衛星の角度が40°で流れ者が見えてくるタイミングで入りにいくと、あの水に落ちる演出を体験できるわけだ。巧妙にコントロールされてる。最高。入るタイミングによって出る場所が変化するし、イカダに乗って川を流れていると音楽も流れるようになっている。つまり、実際には初回突入演出など存在しないわけだが、あたかもそうなっているかのように機能している。エグい。初回は驚くし、二回目は最初と違うからまた驚く。そしてその違いから「あれ?なんで最初と違うんだ?……あ、そうか入り口が回転してるから入るタイミングによって出る場所が変わるのか」と構造に興味を持ち、理解していく。完璧すぎる……

衛星写真の違和感を解く流れで「火が着いた」と書いたけど、この突入演出でその火は業火となった。こんなことされたらもう止まらねえよ。大量の水を頭から被りでもしない限りはな!うおおおおおお!

ダム決壊

 まさかホントに被るハメになるとは思わないじゃん。なんだよあの高波は。ダイナミックすぎてビビった。視覚的なインパクトは本編も含めて随一の変化じゃないかな。人によっては遊べないだろうなこれ……爆音だから発生するたびに身体がビクゥ!ってなってた。心臓に悪いよ。

炸裂音によってダムが決壊するタイミングが分かる。高波の発生と、水嵩の変化がリアルタイムで観察できる。理屈や因果関係が明確で、一度体験すれば今後の計画がちゃんと立てられる。本編と同様に、環境に変化が起きる。

  • 行けなかった場所に行けるようになる

  • 行けた場所が行けなくなる

  • 一部のエリアに立ち止まると命の危険がある

これらの影響から、自発的に計画を立てて行動するようになる。これがホントに楽しいんだよなー!「そろそろダム壊れるから早くこのスライドリール調べないと!急げ急げ!」とか、「ダム壊れるまではここを調べて、そのあと変化が起きてそうなところを調べに行こう」とか、黙々と調査を進める感じ。地形が円環状だと、高波の影響が分かりやすい。川の流れに沿って奥へ奥へと探索を推し進める効果がある。物理的に。

増水で電線が水に浸かる→イカダに乗ってないと即死→イカダに乗って移動することを学習する。水嵩の変化で水中に沈んでいた構造物の存在に必ず気付ける。河川地帯にある施設のランタンが全部消えて、隠し通路が現れる。隠し通路の奥にある火が消える。ダムの決壊がとにかくいろんなところで変化を生んでいて、それらすべてがゲームプレイを面白くしている。

正確に測ってないので、完全に感覚で語るが、だいたい11分ぐらいのタイミングで起きるのもさすがだ。これのおかげで、時間がなんとなく分かる。本編だと、酸素や燃料が減ってきたら時間経過を感じていた。今作は酸素と燃料をほとんど気にしなくていい。本編ではこれらのリソースがゲームプレイを引き締めていたハズなのだが、おかしいな。ダムのおかげか、無くてもちゃんと面白いぞ。このディレクションもヤバいな。「酸素ゲージ消費、無くてもよくない?」で振り切る判断よ。木を生やして川を流して環境に説得力を持たせて、まったくご都合主義に感じさせない表現力がとんでもない。同様に、本編にあったような【ジェットパックを用いたジャンプアクションゲームシーン】もまったく無かった。でも面白い。どんだけ幅が広いんだこのゲームは。

 時間が分かる仕掛けと言えば、最初のほうで一瞬だけ発生する停電もあるね。あれってなんだったんだろう。一個だけ分からなかった謎だ。

欠損を活かした誘導

 素直に遊ぶ場合、流れ者の探索は川の流れに沿っておこなわれる。これにより、ゲームプレイの順番を擬似的に制御できる。もちろん僕は手前から素直に進めた。天邪鬼な人はいきなり貯水池の辺りを調べたりすんのかな。

とにかく鮮やかに誘導されるので、ひたすら感心しきりで、ひたすら楽しい。河川地帯にある最初の家屋からして、【部屋の中が暗い→ライトを向ける→扉が反応する→扉の仕組みを学ぶ】とか、一つ一つの誘導が丁寧かつ楽しい。

今作は“欠損”をよく使っている印象だ。欠けたモノを提示することで、違和感や興味を生じさせて、答えへと導く。たとえば、最初の映写機が分かりやすい。まず、河川地帯では映写機とスライドリールのみを提示する。これではまだなにも分からない。対岸の建物にはランタンがあるが、まだ結びつかない。次に、燃え殻諸島では映写機とスライドリールに加えて、壊れたランタンを横に添える。ここで答えに辿り着く。段階を踏んだうえで、【空いた穴の埋めかた】をプレイヤーが発見できるように誘導する。もう、感心しきり。楽しすぎ。めちゃくちゃ気持ちのいい接待。

というか、本編でも欠損はものスゴく効果的に多用されていた。今回、なぜ“欠損”なるキーワードが出たかというと、【焼けたスライドリール】が分かりやすく欠損を活用しているからだと思う。

焼けたスライドリールは欠損の分かりやすい例だ。完全な情報を得るまでのあいだに、行間を予想する時間が設けられる。このとき、最終的に明かされる完全な情報は、事前の予想を上回る意外な事実であることが求められる。そうでないと面白くない。「最初から全部教えとけ」と言われてしまう。いや、そんな「衝撃の事実が続々と明かされる!」なんて無理だろと思うのだが、マジでやってくる。本当に頭がおかしい。全部のスライドで「え?マジで!?」「うわーそうだったのか!!」「あーーーそういうこと?!」ってなる。しかもこれ、結局のところプレイヤーに一度に与える情報量として適切になってるんだよな。初回は焼けてる状態の情報量がちょうどよくて、二回目の完全な情報で全貌がスッと入ってくる。そもそもスライドリール&映写機とかいう表現方法、よすぎる。ガジェットを扱う面白さ、ビジュアルとしての心地よさ、欠損を焼け焦げで表現できるスマートさ、すべてが完璧に噛み合っている。こんな安っぽいこと言って申し訳ないんだけど、これもう神の御業だろ……

火を吹き消すアクションに気付かせるのも欠損を活かしたヒントやね。燃え殻諸島にある塔の隠し通路は、気付いたとき気持ちよかった。一つだけ壊れたランタンと、一つだけ灯っていないろうそく。この二つを、スライドリールの情報が結びつけてくる。「あっ!分かった!!」の瞬間が本当に気持ちいい。ゲーム内の移動が速くなってるかのような錯覚を覚えるぐらい興奮しながら目的地に向かうあの瞬間。

 今作は光をテーマにしているわけだが、ほとんどこれ一本で駆け抜けてしまうのは驚異的だ。入り口の回転扉から始まり、イカダ、扉、映写機、昇降機、点灯、ワープ、遠隔開扉、隠し扉、隠し通路、隠れ鬼。

遺物の【集中】は一応、新アクションになる。でもそれだけかな。【隠す】はフラッシュライトの点滅と同じだし、火を吹き消すのも既存アクションだ。マシュマロの火を消すだけだったハズのアクションすら、余すところ無く活用する精神が怖い。

こうやってテーマを一つに絞って進めるのは三つの利点がありそうだ。第一に、新しくアクションを覚える必要が無い。探索と謎解きに集中できる。第二に、プレイヤーの迷いが減る。「ここでシグナルスコープか?!それともどこかに道があるのか?」みたいな余計な迷走をしなくて済む。光を軸に考えればいいと分かる。第三に、各種テクノロジーが実際にありそうだと思えてくる。一貫性があるからだ。

ほとんどのギミックはシンプルですぐに扱いが分かる。イカダは最初にいきなり乗ることになるが、即座に適応できた。扉も昇降機もすぐに分かった。これらは光を当てれば即座に反応があるからだ。単純明快な反応で構成されているので、すぐに性質が理解できる。これもやはり Outer Wilds の驚異的なところだ。一つ一つのアクションは非常にシンプルなモノでありながら、体験としては複雑なことをこなしているかのように感じられる。誤解を招きそうな表現になるが、ハッタリが神懸かった上手さなのだ。

消すアクションは今作における隠しアクションのような立ち位置になっている。これの隠しかたも巧妙と言うほかない。遺物を持って意識を失うと入れる世界──模擬現実に入ると、ジェットパックやシグナルスコープといった装備が失われ、手持ちのアイテムは遺物のみになる。そのため、できるアクションが遺物の操作のみになったかのように錯覚させられている(と同時に、遺物を手放さないようにも誘導している)。なんちゅーミスディレクションや。そして、消すアクションのヒントは至るところにちりばめられている。なんとも恐ろしいことに、どこで気付いてもゲームプレイは一切の破綻が起きない。したがって、どこで気付いてもよい。最終的には、気付かないと出られない小さなスペースに閉じ込められることで確実に気付かせてくる。

 遺物を持って炎の前で眠ると別の世界に行ける?なんだその設定は。どんだけワクワクさせれば気が済むんだ。同じように遺物を持ってるミイラがいるんだけど、これはもしかして……?と期待させてくる。おどろきの連続。にもかかわらず、ゲームプレイは丁寧に段階を踏んでいくように作られている。

模擬現実での探索は二部構成のようになっていて、第一部では、無人のエリアを探索して、地形や基本的な歩きかたを覚えていく。ここの“紹介ターン”、最高の予告編。か細い光で闇の中を照らしながら進む。不気味な手のワープ装置と、浮かび上がる橋。建物内から聞こえる物音。息づかいを感じる“住人”の存在。進んだ先にある意味深な絵画。警戒ベルの対処法を学ぶ→どうあがいても照らされてしまう場所を見つけて「どうやって行くんだ?」。イカダで川を渡って暗いトンネルをくぐる。なにかが厳重に守られた構造物。全部チュートリアルで、ただ移動して、各ギミックの機能を学ぶだけなのに、ドキドキするし、ワクワクする。屋敷から聞こえてくるメロディー、めっっっっっちゃ好き。不気味さと哀愁の完璧な融合じゃん。「これあとであそこ行くんだろうな~~~!!」ってワクワクが止まらんかった。

第二部は覚えた地形を活かすステルスゲーム。隠すアクションの存在から、うすうすやるんだろうなとは思ってた。ステルスゲーム、めっちゃ苦手……ゲームにもよるけど、だいたい次のような理由で苦手に感じる。

①地形と敵配置の情報が無いので、どう動くか計画が立てられない
②計画が立てられない状態で捕まる→理不尽!て感じがち
③「どうすれば捕まらなかったのか?」が自分には分からないことが多い

てなわけで、不安でいっぱいのドキドキ隠密ゲーム、開幕!

初めのうちは「ヤバい。難しすぎる。クリアできないかも」と冷や汗を流した。明るくしていると簡単に見つかってしまうので、【隠す】をしながら進みたい。が、暗すぎて無理。明るくしているときに見つかってから【隠す】をしても、向こうから照らしてくる。逃げようにも暗いと自分の位置すら分からない。そうこうしているうちにあっさり捕まる。強い。とまぁ、手こずったものの、トライアンドエラーを繰り返すうちに、なんとかクリアできた。個人的に重要だと感じたのが、次の二つ。

①地形、とくに目的地までの最短ルートを把握する
②敵の配置を把握する

これが分かればなんとかなる気がした。今作では、ほとんどの場所で下見が可能になっている。ありがたい。星明かりの入り江にある螺旋階段の先だけはぶっつけ本番になるが、ここではゴールに明かりが設置されており、把握しづらさがあるていど緩和されている。果てなき谷では、最終的に渡り廊下を灯すことができれば、そのあとすぐに捕まってもOK。うーん、さすがの作り。

ただ、果てなき谷の最後のところ、隠し扉の反対側に待機してる番人が居る奥に行く必要があると思い込んでいて、まっっっったく意味無いのに待機場所から誘い出そうとしてた。そのまま隠し扉の奥にある見えない橋を渡ればいいだけの場所だった。それでも最終的にどうにか番人をやりすごして奥を調べることに成功したのだが、「なんもねえ!あれ?反対側調べるだけでよかったのかこれ?」ってなってた。バカすぎる。ゴールの下見、ちゃんとやってたハズなんだけどなぁ……

覆われた森林地帯は完全に謎解き分野だったな。この解法も気付いたとき、めちゃくちゃ気持ちよかった。ダム決壊時に聞こえてくる恐ろしい悲鳴のような声の正体を知って震えたわ。

全体的に見てステルスパートは少ない。ゲームプレイを飽きさせないためのちょうどよい変化っていう印象かな。というわけで、苦手でもなんとかなった。ランダムな徘徊もほとんど無いし、動きが確立できれば突破できる感じがループモノならでは。過度な緊張を強いられる場面はそんなに無かった気がする。個人的には、本編と同程度と感じたかな。単純にいきなり出てくると身体がビクゥッ!てなった。そしてこのビビる体験を何度かやるからこそ、最後の演出につながるわけだ。妨害を演出するためだけに、おどろかせてるわけじゃないんだよな。

3Dゼルダのもう一つの可能性

 いきなり別のゲームを持ち出す。今作、めちゃくちゃ3Dゼルダっぽさを感じた。超巨大で凝ったダンジョン。

今作では随所にゼルダみを感じる。「三つの錠を解錠しよう!」みたいにシンボリックな仕掛けの個数を強調して目標および進捗を分かりやすく明示するの、ゼルダっぽい。二つの世界を行き来するのは『神々のトライフォース』。隠れ鬼は『スカイウォードソード』のサイレンっぽさを感じたし、遺物の周囲だけ仮想空間になるのは時空石だ。周囲の壁に絵画が掛けられてる空間、ファントムガノンが出てくるのかと思った

『ブレスオブザワイルド』──ブレワイはノンリニアな進行を実現していく過程で、結果として謎解きの解法が複数になった。そして、スカイウォードソードまでは別解を徹底的に削いでいたが、ブレワイ以降は「解法が複数あってもOKとしよう!」で進んでいったわけだ。

Outer Wilds もブレワイと同じくノンリニア進行になっているが、謎解きの解法は基本的に一つ。結局のところ、謎解きの解法が一つであることは“問題”ではないように思えた。Outer Wilds はノンリニア進行ながら、プレイヤーを巧妙かつ的確に誘導している。その結果、「あっ!分かった!!!」となる強烈なひらめき体験ができるし、なおかつゲームの進行をゲームに制御されていないと感じられる。Outer Wilds は3Dゼルダが持つもう一つの可能性だったのかもしれない。

予想をくつがえしてくる面白さ

 塔の隠し部屋に着いた。これでパスワードが分かるぞ~と思いきや、全部焼かれてる!こーれはスゴかった。この梯子の外しかたは最高に面白い。三つの錠前を見せられたら、「ああ、じゃあこれを解錠していくんだな」と思うじゃん。

三つのエリア、その最奥に着いた。今度こそパスワードが分かるぞ~と思いきや、やっぱり焼かれてる!梯子二連続外し!!構成ヤバすぎ!!!で、「あれ?でもこの知識を使えばイケるのでは……?」と気付いてじわじわ興奮してくる。予想の外し外されからの逆転。感情の乱高下が楽しすぎて情緒おかしくなる。焼かれていないスライドリールはどれも意外な真実が用意されていて凄まじい。

船でトンネルくぐるところ、

「あ、いまロードしてますねこれは」
「いやー分かっちゃうんだよなぁ(ニチャァ…)」

ってしてたら本当にロードしてた。完っ全に手のひらで踊らされてる。よく考えたら【移動中に分かりやすくロードが入る】なんて今までやって無かったじゃん。ミスリードに容易く騙されてる。でもそのおかげでめちゃくちゃ楽しんでる。勘が鈍くてよかった~。

愛すべき馬鹿

 ゲームプレイにおいては、光をテーマにいろいろと学習して進めていくわけだが、体験としては考古学かつ文化人類学のような風情がある。スライドリールに登場する角を持つ彼らは、なにを好み、なにを恐れ、なにを育み、なにを目指し、なんのために生きていたのか?

個人的には鹿の角のような見た目が最高にカッコいい。角なのか?木なのか?なんとなく、自然を愛していそうな印象がある。これだけ科学力がありながら、木造建築だし、木を植えたり川を流したりしてるわけで。宇宙の眼を観測する際の、(°〇°)が可愛い

鹿人──鹿っぽい角を生やしている人型の生き物だから鹿人と呼称しよう──と比較すると Nomai ってめちゃくちゃ文字を使ってたんだな。絵や3Dモデルや360°VR映像もバリバリ活用している種族ではあったけど、なんだかんだで文字が多かったし。鹿人は思考形態からして違うのかもしれない。音に関してはどうか。大きい音を鳴らして睡眠状態から意識を覚醒させるのは我々 Homo sapiens と同じだ。鳴き声も活用してるっぽいし、音楽も嗜んでるのよね。やっぱ音楽って最強だわ。どんな種族でも繋がれる。脳みその形状が Homo sapiens にかなり似てる!これは親近感が湧くなぁ。

遺物を持って眠ると行ける空間は、【超自然主義的な思想&パワーで思念体が故郷にワープしてる】可能性も考えてた。だから、模擬現実なのが判明するところでかなり心が揺さぶられた。悲しいね……プレイヤーを排除するのは【侵入者だから】だけでなく、【本来居るハズの無い異物の存在を認める=幻想の崩壊】になるので、そら躍起になって排除するわな……もはや彼らにとってはあちらが現実だったんじゃないか。果てなき谷でずーっと故郷のスライド切り替えしてるヤツも意味が変わってきちゃう。最初ちょっと不気味だったのに、故郷に戻れないからせめてスライドだけでも見て想い出に浸ろうとしてる哀れな行為になるんだよな……

 宇宙の眼にリソース全部注ぎ込んでるの、申し訳ないけどちょっと笑っちゃった。ちゃんとリスクヘッジしようよ~~~。逆に破滅の可能性が見えたら、研究施設を燃やして信号遮断して引きこもっちゃうし。こうと決めたら全力投球なんだな。めっちゃ好き。別に建物は燃やさなくていいじゃん。改装するなり解体するなりしなさいよ。

「あ~故郷恋しい」
「せや!仮想空間で再現したろ!」
「いろいろバグあるけど、できたわ!」

バカと天才が同居しすぎじゃない?こいつらホント好き。ステルスパートでさんざん邪魔されるけど、恨む気持ちが一ミリも湧かないんだよな。愛おしくてしょうがない。非常事態を察知してすぐ警戒態勢に移れる組織力、何気にスゴいのでは。能力はズバ抜けてるんだよな。メンタルも鍛えろ。

ところで、流れ者があの Nomai たちの探査に引っかからなかったのスゴくない?宇宙の眼の信号をず~~~っと遮断できてるのもスゴい。もしかして Nomai よりも遥かに高度な科学力だったのか?てかなんで逆に Hearthian は流れ者を見つけられたんだ。Nomai 全盛時代よりも隠密機能が衰えた?

宇宙の眼の信号遮断を一瞬のあいだ解除した罰として幽閉!錠前三つ用意してガッチガチに固めたうえで水に沈めたる!パスワードも資料も装置も全部焼却!ほんまこいつら大好き。やることなすこと極端すぎる。てっきり模擬現実を永遠に持続させるためのエネルギーだかなにかが封印されているのかと思いきや、牢屋かい。テキトーに追放なり、殺すなり、どうとでも出来ただろうに、なんで全力投獄よ。容赦無さすぎる。

プロジェクト失敗したら関連施設と資料を全部燃やして破棄するのって、科学的思想で考えるなら絶対にやっちゃいけないことのように思える。完全に真逆を行ってて興味深い。Nomai の人たちが見たら憤慨しそう。ただ、資料を中途半端に残してたり、遮断機能のオンオフが可能になってたり、ちょっとちぐはぐなところがあるんだよな。遮断機の操作インターフェイスは投獄後に焼いたんだろうけど……心のどこかでは、後ろめたさというか、未練があったのかもしれない

 ところで、結局 Nomai の仮説は外れてたんだな。宇宙の眼は信号を発しなくなったのではなく、遮断されていたんだ。本編の謎が一つ明らかになるのは興奮した。信号を探査するのは諦めて物理的に宇宙の眼を観測しにいくアプローチに切り替えたの、ファインプレーだなぁ。Nomai ってやっぱすげえわ……

総評:本編より面白かった

 てなわけで、このDLC、本編より面白かった。だいたい以下の四つが要因として大きい。

  • 作法が身についている

  • クローズドかつコンパクトな構成

  • 大きい謎の充実感

  • テーマが好み

◆作法が身についている
 作法──つまり、Outer Wilds の遊びかたが分かっている。すぐに分からなそうなところは後回し。光っているところを調べればOK。見逃しても航行記録で分かる。頭の中で情報をつなげられるように、簡単な仮説や道筋を立てて進める。これらの【ちょっとした心構え】みたいなモノが備わっていたおかげで、過不足無く面白さを摂取できた気がする。

◆クローズドかつコンパクトな構成
 今作は本編と比較すると、狭くて小さい。そのため、手に入る情報が常に流れ者の探索に役立つ手がかりとなる。一方で、本編だと広範に散らばった情報を集めて、新たな手がかりを構築していく。離れた場所で得た情報を結びつけていくのが本編の面白さではあるが、今作のように常にすべてが結びついていく感覚も素晴らしい。今作ではどこに行けばいいか分からなくなるシーンが一つも無かった。密度の面で本編を越えていて、好きだ。

◆大きい謎の充実感
 個人的に本編は99.99点のゲームだと感じている。理由は、灰の双子星内部に入る方法や展開があっさりとしていて地味な味わいだったからだ。核心への到達が、下準備が必要なくらい大がかりな仕掛けであれば、もっとワクワクできただろうなと思う。もちろん、灰の双子星内部への侵入は宇宙の眼に至るまでの下準備であり、ここに大きな手間を求めても上手くいかないんだろうとは思う。エンディング到達がめんどくさくなるだろうし。

さておき、今作の大きい謎──三つの錠前の解錠。これ、大満足です。バグ技利用&仕様の穴を突くの楽しすぎる。悪いことするの気持ちいい

「描画バグでコリジョン可視化しますね^^」
「ロード中に船を降りることで床抜けします^^」
「死んでるとベルの覚醒効果が無効化されるのを利用します^^」

ゲーム好きにとって垂涎モノの仕掛けのオンパレード!最高すぎる。こんなにマニアックなのに、こんなにゲームに合ってるのスゴすぎる。ゲーム的であることを鮮やかに利用していることに感動してしまう。

◆テーマが好み
 今作のテーマは本編の真逆で、探求を止めた者たちが描かれる。可能性への恐怖。すべてを閉ざして、自分たちの見たい夢だけを見続ける。鹿人たちの決断は、弱さに他ならない。でも、僕にはよく分かる。辛い現実からは目を背け、いつまでも甘い夢に浸っていたいのだ。こういう弱さが描かれる作品は大好きだ

 というわけで、本編より面白かった。ただし、本編より面白かったというのは、本編を遊んだからなのだ。見れば分かるとおり、作法を覚えられているのは本編を遊んだからこそだし、他の要因も本編との比較で面白さを実感している。この面白さは本編あってこそ。つまり、最高のDLCってことだ

夜明け

 さぁ、最後になにが待ち受けているのか。火の灯った遺物……?うわあああああ!あ……?ここで襲い掛かってこない演出イイね~。この一瞬のために何度も捕まってきたと言っても過言ではない。あなたは誰?Solanum と会ったときみたいに、この異星人交流がワクワクするんだよな~。ビジョントーチ!名前かっけえ……

たった一人で、いったいどれだけの時間を、この狭くて暗い部屋で過ごしたのだろう。囚人が発した声は、慟哭なのか、雄叫びなのか。彼が禁忌を犯さなければ、Nomai がこの星系に来ることは無かった。Hearthian が宇宙に進出するのも間に合わなかったかもしれない。もちろん、主人公が宇宙に出ることも叶わなかっただろう。Outer Wilds の裏主人公じゃん!投獄されなければ解放されることも無かった。数奇な因果だね~。パラドックスじゃないけどパラドックスっぽい。こういう構造、好き~~!!

自分のビジョンを見せるシーンでメインテーマが流れ出すうわああああああああ!断片的だったすべての情報がつながっていくような感覚。この超新星爆発的映像体験最高!!小さい頃から宇宙に行くの憧れてました!(存在しない記憶)本編では量子周りの遊びで、一人称視点ゲームの特徴を活かしていた。今作では【ゲーム中に映らないプレイヤーの表情を映す】という演出を最後の最後に持ってくる。切り札の使いかた、上手すぎませんか?

すべてを諦めて眠りにつく鹿人たちと、諦めず目覚めを繰り返す主人公。この対比が素晴らしい。闇の中を進む恐怖に屈して、ゲームプレイをやめてしまえば、それは鹿人たちと同じである。彼らと共に、闇の中で眠りにつくのだ。二度と目覚めることは無い。もしかしたら、模擬現実はずっと夜なのかも。そう考えると、最後に見せてもらえる夜明けのビジョン、こっちも完璧な対比だ。やっぱ今作のテーマ好きだわ。僕は彼らの弱さを肯定する。そして、夜明けの美しさに憧れる。僕らは独りじゃない。


イカダを押して、夜明けを目指すんだ。


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