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2021年に読んだ本

今年読んだ本から印象的だったものについて適当に記す。 

美徳のよろめき   -三島由紀夫

『金閣寺』のような思惟的な美文で書かれているわけでないが、娯楽文学として滅法面白かった。スノッブな登場人物にイライラしたが、なるほど、三島はこんなのも書けるのかとやけに感心した覚えがある。今年は「三島由紀夫とデヴィッド・ボウイのイコノグラフィーにおける共通点」なんてことも考えた。いつか発表できればと思う。


実力も運のうち 能力主義は正義か?   -マイケル・サンデル

ハーバード大学やMITに通うような輩の多くは、自分の努力が功を奏して良い学歴を手に入れたと思っているが、実際はそうではなく、生まれついた環境に大きく左右されるという。日本でも状況は同じだろう。用意されたレールの上を走ることを「努力」と勘違いをし、大学に入れば、「四年間を楽しもう」という風潮が蔓延し、紋切り型の青春に溢れているように思われる。そして、学生は、その「有意義」な生活の合間に専門教育を無自覚に受け理論武装していき、その居心地の良い世界の終わりに外界からの過剰な褒め言葉を真に受け、理論武装した自分を高貴な存在だと思い上がり、平気で世界平和を願っているような顔をする。「持たざる者」の存在は無きものとされる現状を見つめ直し、克服していくのが、幸福にも高等教育を受けることの出来る者の義務だと私は考えている。



流体力学    -杉山弘ほか

突然の専門書である。私は電気系出身だが、色々あって流体力学を勉強する必要に駆られたのでこの本で勉強した。扱っている範囲は意外と広かったので、基礎的な内容だけ何度も繰り返して読んだ。高度な内容(圧縮性流体)などは眺めているだけでも楽しかったので買う価値はあったと思う。


パンツの面目 ふんどしの沽券   -米原万里

下鴨神社の古本まつりで買った。米原万里が書いたのならと、何の気なしに手に取った自分を褒めたい程には面白かった。なるほど、パンツをこんな切り口で見つめ直せば、様々なことが見えてくるのかと感心した。


シネマでヒーロー    -永瀬正敏 三上博史など

俳優のインタビュー本である。これも古本市で買った。永瀬正敏の「ションベン・ライダー」出演時の裏話や、ジャームッシュとの関係など映画ファンなら嬉しい。


他にもいろいろ読んだはずだが、特に思い出せない。蓮實重彦の本は今年も大量に読んだが、それは別の記事にまとめる予定である。来年は三島文学を深掘りすることと、田崎統計力学を熟読することが目標。あと、全く知らない分野の本も読んでみたいなんて言っておくことにする。

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