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大切なファミリアへ

欲しかったエネルギー。
欲しかったゴール。
そして、欲しくて欲しくてたまらなかった、勝利。

6月4日、ギラヴァンツ北九州を相模原に迎えてのJ3リーグ第11節。
"勝利"がもたらすエネルギッシュな空気が、相模原ギオンスタジアムを包んだ。

リーグ戦の勝ち星から遠ざかること、早2ヶ月超。
ハマらないピース、運の悪い展開、色々な要因が絡み合い、SC相模原はとても苦しい期間を過ごしていた。

選手やチームスタッフを信じたい。けれども、プロである以上、結果が全てであることもまた理解しなければいけない。

先月には高木琢也前監督が解任された。
昨季チームを降格させた以上、もう一度チームを押し上げるのが責任の取り方だと話していた監督の解任は、とても胸が苦しくなるものがあった。本当はもっと高木琢也監督の思い描くフットボールを見たかった。
今思い出しても、悲しくて、寂しくて、悔しい。

しかし、結果と時間は僕たちを立ち止まらせてはくれない。勝負の世界に身を捧げたサッカー人としての矜恃を汚すことは、僕にはできない。
監督との出会いと、残してくれたサッカーや言葉。それを大事にしまい、僕たちはまた前を向かなければいけない。

時間は進んでいく。
この試合、相模原にもまた新しい"風"が吹いた。

新加入のFW加藤拓己がボールを収めると、そこから前線で面白いようにボールが回った。DF石田崚真の攻守に渡る機動性、そしてMF藤本淳吾のポジショニングと視野の広さ、そして圧倒的な足元の技術。
SC相模原の選手達が本来持つプラスの個性が、存分に生かされた試合展開で、試合前半を非常に優位に進めた。

その中でセットプレーからゴールネットを揺らしたのは、DF鎌田次郎とDF藤原優大のセンターバックコンビだった。

共にゴール前でボールウォッチャーにならずにアグレッシブにボールに向かえる加入2年目の2人に、待望のSC相模原での初得点が生まれた。
大きな体と大きな声でチームを引っ張り続ける鎌田、そして、その鎌田と水本裕貴という偉大なセンターバックとコンビを組み、今年も相模原で凄まじいスピードで急成長中の藤原。
去年からたくさん思い出を積み重ねてきた選手の弾けるような笑顔が見れて、とても嬉しかった。

2点目、ゴール前での競り合いを制してゴールを決めたのはFW船山貴之だった。
なかなかFW陣にゴールが生まれない中、ずっとピッチを駆け回り続けたストライカーに、待望の初ゴールが生まれた。

今日もフルタイムの出場となった船山は、終盤、何度も自分を奮い立たせようと疲れきった足を触っていた。他の選手も、必死の形相でボールを追いかけた。
試合終了の笛が鳴るまで、皆が必死にボールを追いかける姿に、勝ち負け以上の熱いものを感じた。

試合終了を告げる長い笛を聞いて、真っ先に抱いたのは安堵感だった。

やっと勝てた。やっと選手の頑張りが結果に結びついた日が訪れたと、ほっとした気持ちになった。

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きっと、僕たちは勝っても負けても、懸命に戦う選手達に心打たれている。
けれど、皆で笑って選手を労い、少しの間だけ喜びに浸り合う時間をもたらすのは、チームの勝利に他ならない。

皆で笑っている時に、気持ちが伝わっていると、頑張っているのも知っているんだと、また前を向いて頑張ろうと伝え合える時間がどれほど貴重か、この2ヶ月で思い知った。

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選手一人ひとりが、サッカー人生をかけてSC相模原にやってきて、日々プレーしている。

同じチームとは言え、誰かにとっての幸福が、違う誰かにとっての不幸に繋がることがない世界ではない。
勝っても様々な課題を抱える選手や、素直に喜べない選手もいると思う。

けれど、Jリーグが無かった町・相模原で汗を流してプレーをしてくれている以上は、そういった損得勘定を抜きにして、選手全員を応援したいし、何も考えずとも気付けばSC相模原の選手が皆大好きになっている。

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La familia。
選手は家族のようなものだと、最近感じることが増えてきた。

良い時も悪い時も、スタジアムでもそれ以外の場所でも、ユニフォームを着て彼等の戦う姿を見たりそれまで歩んできたキャリアを知ると、選手一人ひとりの頑張りが報われてほしいと、本気で思うようになった。

良ければたくさん称えたいし、駄目ならばまだまだ行けるぞと背中を押したい。
放っておくことなんか、誰一人できない。

勝った日に、またこうして皆で何もかも忘れて飛び跳ねて喜べるように。
それが明日や来週を生きる活力に、そして未来に繋がる大切な瞬間になるように、また積み上げていこう。

大好きなファミリアへ。


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