吉田五十八 No.2
線を消す為の技術
鴨居と障子
和室の間仕切りの障子を設ける場合、必ず鴨居を付けなければならない。
更に鴨居上に欄間障子を付ける事もある。
普通なら、鴨居が垂れないように、吊り束などで補強する物です。
ただ吊り束を設けると、束の線が邪魔になるし、何より下の障子と格子のラインがズレてしまう。
そこで、吉田五十八先生が考え出した方法が、ネジ式の真鍮のパイプを作り出し、真ん中ではなく、真ん中から左右の障子の重なり部分に設け、パイプを回して鴨居を吊る事を開発しました。
障子は殆どは真ん中を開ける物だから、その位置だと全く邪魔にはならないという考えだそうです。
吉田先生はそれだけでは満足しないで、敷目天井の目のラインも障子のラインと揃えてしまう程、線へのこだわりはすごかったみたいです。
それ以外に鴨居すら無くしてしまい、天井までの建具とし、鴨居ラインから上を開いた状態の障子を作ってしまった事もあるのです。
本当に当時の職人は泣いていたか、次はどんなアイデアを出すかワクワクしてたか、どっちかだったかもしれません。
化粧梁の形
近代になるに連れ、突板(木をスライスして集成材に貼る板)の技術が上がっていき、化粧の梁見せる場合、無垢の木の梁を使うより、突板を組み合わせて梁に見せる方法が増えていきます。
突板を使う事により、ねじれも無い、長い梁を作る事が可能となっていきました。
そのにより、吉田五十八設計にも突板の材料は多く使われるようになり、設計の幅も広がりました。
長尺の化粧梁
間口8mの鴨居ラインの梁を上から何も吊らずに納めるという難題があったそうです。
そんな時は、突板の梁を使います。
箱形に梁を組み、側板の裏に弓状に反らした真鍮パイプを埋め込み、補強したうえで納めたそうです。
こういう細工は、吉田五十八さんが1人で考えたわけでは無いんでしょうね。
その時の大工の棟梁と何度も打ち合わせして、実験もして、本番の施工をしたんだろうなって想像します。