実写版銀魂を観に行った。

二次元を三次元で表現すること、それも現代日常や歴史など実写化しやすい世界観ではない作品の実写化はとても抵抗がある。アニメや漫画ファンであれば実写化という三文字に苦手意識を持つものも多いだろう。筆者もまた例に漏れず、漫画の実写化と聞いて顔をしかめたものだ。

何故実写化が嫌われるのか、などを延々と語るのは面白くないのでまたの機会として、端的にいうと実写映画銀魂は面白かった。良くできたファンサービス特化の実写だと思う。

実写化するにあたって最も批判されるカラムはキャスティングであると思っている。実際金を払って観に行かないとストーリーは批判できないが、ビジュアルは誰でも批判しやすい。そんな危ない橋を駆け足で渡り始めた監督の個別オファーに、よくぞ踏み切ったと称賛したい。
監督の感性がファンである我々と大差のないところにあったらしく、多少疑問はあったもののキャラクターの原型を叩き潰すようなこともなく、公開日までに山火事となることもなかった。この時点で実写化のハードルは越えられたといっても過言ではない。案外、ハードルは低いのだ。前払いなのだから。

ここからさらりとネタバレになるが、内容について触れたいと思う。一から百まで読書嫌いが書いた読書感想文のように懇切丁寧に説明するわけではないし、既に細かいところは忘れ去ってるので気になったら借りてでも一度見てほしい。気づいた頃には安くなっているはずだ。

まず何が良かったか、一番先に来るのはキャラの使い方だろう。
ギャグパートでは銀魂のキャラクター性を活かした状態で尚且つ監督らしさや俳優らしさ(一部、逆に捨て去っていたものもいたがギャップとしてうまく作用していた)も主張した絶妙な面白さがあった。所謂、原作厨過激派に所属している筆者にとっても安心して続きが見れるものだったと思う。映画は逃げ道が寝るか脱出するかの2択(後ろの中央あたりを陣取るため高確率で1択)しかないので大変ありがたい。
この点に関して、実はそこまで心配していなかった。というのも筆者は勇者ヨシヒコシリーズが好みに分類される人種であったからだ。銀魂実写化と聞いて渋い顔をしたが、福田監督と聞いた途端手のひらを返した記憶は新しい。彼であれば好きにやってくれ面白いものを作ってくれと思っていた。結果として面白いものが出来上がっていたので満足といったところだ。


では映画の「けれどいまいちに思った」点について記述しようと思う。

映画銀魂の上映時間は今時珍しく二時間を越える130分。アニメやドラマと違って映画には休憩がない。つまり、集中させ続けると面白くても客は疲れてしまうというデメリットがある。
人間が一番集中するシーンとは、シリアスシーンであると筆者は考えている。
話題が暗かったり、ギャグが入らなかったり、そういった時間が後半に詰まれば詰まるほど、見たいと思っていても眠くなってしまう。もう週1で追ってた頃より年を取ったのだ、許してほしい。

本作は、筆者にとってシリアスシーンが面白くなかった。展開を何度も何度も見て、知っていたからというのも一つあるが、何よりは俳優の演技にあると思っている。
アニメも視聴していたのだが、言ってしまえば銀時は杉田氏の声帯で、神楽は釘宮氏の声帯で、それはもう覆らないところまできている世代である。しかし実写まで声優が吹き替えしろとは流石に思っていない。俳優の演技の何が良くなかったか、それは発声にある。

アニメボイスと言われるものは少し大袈裟で、地声とは少し離れた、現実で聞くと浮く声であることが多い。マイクを通しているので余計に違和感を感じるのだが、声のみで演技をする彼らの演技力はやはりずば抜けている。今回特に目立ったのは滑舌と、声の特徴ではないだろうか。
声優ファンで恥ずかしい話だが、たまに誰が喋ったのか・何と喋ったのか分からないときがあった。俳優喋りと何となくよんでいるのだが、その特徴が悪い方向に発揮されてしまった人が多かったように感じる。

俳優が声優をやるのならまだしも、三次元の映画で三次元の中で演技していた彼らの声が何故浮いたのか、その理由は恐らく銀魂の世界だったからだ。
銀魂のキャラクターたちは特徴のある喋り方をする。それが、ギャグパートとシリアスパートで二次元と三次元を行き来しているような感覚に陥り、面白さを半減してしまっていた。わざとらしい口調が多い銀魂で、普通に喋られると違和感を覚えるのだ。
銀魂口調のツッコミというジャンルが存在するのだから、如何に特徴的であるかは分かるだろう。この点は多分誰も予想していなかったと思うし、実際筆者のように気になって気になって脳内吹き替えを実施するほどの人も少なかったろうが、それでも惜しい点として挙げたい。

とはいえ、トータルで見れば成功している方だ。空知先生の世界観で福田監督が面白いものを作っている。俳優は与えられた役割を期待以上にこなしているし、CGやセット、衣装なども中々凝っていた。そもそも銀魂という原作自体、面白くなくても面白く作れてしまうネタがゴロゴロ転がっているのだから、横展開に優しい作品であるとつくづく思う。
もう一度映画館に足を運びたいとは思わないが、初見には自信をもってオススメできる映画である。それだけに、俳優の声がキャラクターと相違があるという理由で二回目、見る気にはなれないのが残念だ。銀魂の三次元進出はまだ早かったらしい。