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グローカルコラム 240904|「租税条約の重要性について」

いつもお世話になっております。
Glocal Solutions Japan事務局の加藤です。

今週は、認定専門家(税理士・特定社労士)
北澤達夫によるコラムをお届けします。
https://glocal-solutions.org/expert/expert-2802/

国際的に事業展開するときの
税務対策の重要性をお伝えします。

是非ご一読ください。
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皆さん、こんにちは。
PSPグループ代表、税理士・特定社労士の北澤です。


国際的に事業展開をしていくと、
必ずぶち当たるのが税務の問題です。

順調に事業が上手くいっていると思っても、
税務対策をしっかりしておかないと
思わぬ追徴課税を強いられる可能性もあります。

特に課税庁は、海外取引のある企業への対応を
税務調査の重点課題として掲げ
その捕捉にかなり力を入れており、
海外展開を考えていく上で、
国際税務の備えは絶対的と言っても過言ではありません。


今回は、その中でもシンプルなのですが間違いやすい
「国際源泉税」について、
「租税条約の確認はめちゃくちゃ重要」という話をします。

<事例>

・日本法人からインド法人へ社内管理システムの開発サポートを依頼。
・インド法人は日本に恒久的施設はなく、インド国内でのみ開発サポート業務を行っている。やり取りはメールやオンラインでのみ行っている。



この場合、インド法人に対価を支払う際、
源泉徴収は必要なのでしょうか。
それとも源泉徴収は必要ないのでしょうか。


答えは、
「源泉徴収は必要です」


日本とインドとの日印租税条約第12条に規定する
「技術上の役務に対する料金」に該当する場合は、
役務提供を行った場所が国外であっても源泉徴収が必要になります。

多くの租税条約では、本事例は「企業の利得」
または「産業上または商業上の利得」(事業所得)としてとらえられ、
日本国内に有する恒久的施設を通じて
日本で事業を行わない限り日本では課税されないこととされています。

この点、日印租税条約第12条「技術上の役務に対する料金」
に該当する所得については、
事業所得として取り扱わずに、使用料と規定されています。

しかしながら、日本法人からインド法人への
技術役務の提供対価の支払いについて、

日印租税条約第12条第6では、

使用料及び技術上の役務に対する料金は、その支払者一方の締約国又は当該一方の締約国の地方政府、地方公共団体若しくは居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。

と規定されています。
※「支払者=日本法人」、「一方の締約国=日本」

この規定により、所得源泉地について
、原則の「使用地主義」から「債務者主義」への置き換えがなされ、
結果、インド法人に対する技術役務の提供は、
「債務者主義」により所得の源泉地を判定することになりますが、
債務者(=支払者)は日本法人のため、
本事例における技術役務の提供は日本の国内源泉所得となり、
インド法人への支払い時に20.42%の源泉徴収が必要となります。

ただし、限度税率が10%と定められているため(日印租税条約第12条第2)、
支払いの前日までに、所轄税務署長に
「租税条約に関する届出書」の提出をすれば源泉税率は10%となります。

「日印租税条約」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/India1989_jp_en.pdf


あと参考までに、
今回の事例の場合、
インド法人についても、当該技術役務の提供は
日本の国内源泉所得に該当するため、
日本において法人税の申告義務があります。


今回の事例を踏まえて

原則論では、
技術役務の提供が、日本の国内源泉所得に該当するかどうかは、
所得税法上は日本国内で役務提供が行われたかどうかで判定(所法161①六、所令282三)。
所得税法161条第1項第6号では、日本国内で役務提供が行われた場合に、
日本の国内源泉所得に該当すると規定しています。

ただし、例外として
租税条約に上記と異なる定めがある場合は
租税条約が国内法に優先する(所法162)という規定があるため、
実務上は所得税法だけではなく、
租税条約の規定も確認する必要があります。

※日印租税条約第12条と同趣旨の規定が置かれている条約には、
旧パキスタン租税条約があります。


このようにインド法人と取引をする際は注意点がありますので、
インドから日本に進出する法人については、
是非弊社PSPグループにご相談ください。

よろしくお願い致します。

PSPグループ代表、税理士・特定社労士
北澤達夫


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〒604-0925
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株式会社PSP Trust&Estate、㈱Scientific Language

PSPグループ代表取締役
税理士・特定社会保険労務士
北澤 達夫(Tatsuo Kitazawa)

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