Why Emory?について考える

そういえば僕がなぜエモリー大学ロリンス公衆衛生大学院に進学したのか、進学先をどう選んだのか、今振り返ってその判断をどう思うか、などについてブログに書いたことがなかった。将来出願を考えている日本人にとって有益だと思うので、エモリーの特徴なども含めて以下に記そうと思う。

進学先決定までのプロセス

そもそも僕はグローバルヘルスに関心があったので、英米のランキング上位にある公衆衛生大学院の中から国際保健学科やグローバルヘルス専攻の修士課程がある大学院をリストアップした。以下が僕が当時作ったリストである(※1)。

米国
ジョンス・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院
ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院
ワシントン大学公衆衛生大学院
エモリー大学ロリンス公衆衛生大学院
チュレーン大学公衆衛生熱帯医学大学院
英国(※2)
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院
インペリアル・カレッジ・ロンドン
リバプール大学熱帯医学大学院

当時の僕の思考は極めて単純で、これらの中からランキングが高い順に出願しようとした。しかし以前書いたように準備がバタバタだったので、いくつかの大学院へは結局出願を見送った。例えば、ワシントン大学は締め切りが12月1日と最も早く、準備が間に合わなかった。またホプキンスとハーバードは締め切りが同じ日だったため、前者を選び後者は出願しなかった。そうこうしているうちにエモリーから合格通知が来たので、エモリーに進学した。

なので今振り返ると、各校の特色について十分に理解し吟味した上で出願していたわけではなかったと反省している。もちろん各大学院の卒業生・在校生にいろいろ質問したり情報収集をしていたけどね。まぁ仕事しながらの留学準備なので、バタバタしない人の方が珍しいだろうが…

じゃあエモリーの特徴は何なのか?

この記事を初稿している状況で、エモリーに来て約一年半が過ぎた。ようやく分かってきたエモリーの特色について私見を以下に記してみる。あくまでも私見だが…

1. CDCが隣にある
ロリンスとCDCの関係は強い。CDC職員が非常勤の教員として授業をおこなったり、CDC職員からロリンスの教員に横滑りする人は多い。今の学長もCDCのHIV/AIDS部の元部長である。ロリンスの学生はREALプログラムを通じてCDCでバイトができるので(選考を勝ち抜けばの話だが)、例えば中南米でのジカ熱の調査などにも関わることができるかもしれない。さらにそこで働きぶりを評価されれば、卒後にORISEフェローなどの立場で雇ってもらえる可能性もある。これはOPTやJビザをもつ外国人も受け入れており、過去にロリンスでMPHを取得した日本人も何人かCDCで働いている。

CDCで1年でも2年でも働いたことがある、と履歴書に書くことができれば、その後の就活・進学に有利に働くことは言うまでもない。米国でMDやPhDへの進学は言わずもがな、卒業後にEpidemic Intelligence Service (EIS)オフィサーへの応募・選考にも多少は影響があるのではないだろうか?まぁEISの場合は米国籍もしくは永住権がないと、選考を突破するのはなかなか厳しいが。

ちなみにエモリーに出願する(特に米国人)学生のほとんどはCDCとのコネ目当てなので、CDCで働きたいと志望動機に書くだけでは他の出願者と差別化できない。この点は注意が必要である。

2. したがって疫学や生物統計学は強い
CDC出身の教員が多いこともあり、(特に感染症)疫係の研究・教育は非常に充実している。またCDCやエモリー大学医科大学院の臨床研究にアドバイスをする生物統計学者も豊富にいる。REALプログラムで募集されるバイトも疫学研究に関連したRAのポストが多い。なので疫学や統計学を専攻する環境としては良いのだと思う。ただし教員の多くは頻度論者であり、ベイズ統計を専門にしている人は少ないようだ。

ちなみに疫学や生物統計学を修了した学生はSTEM OPTに該当するので、最大3年間はF1ビザで就労できる。

3. 健康格差に関する教育・研究も盛ん
ジョージア州は南部と呼ばれる、保守的で、有色人種の割合が多く、社会格差が大きい地域にある。特にアトランタなどの大都市はその傾向が強い。裏を返せば、公衆衛生へのニーズが大きい。なのでロリンスでは黒人やヒスパニックを対象とした研究や、LGBTQを対象とした研究、健康の社会決定因子に関する研究が量的・質的問わず盛んである。

4. 医療経営に強い
エモリー大学にはゴイズエタという、全米でもランキング上位のビジネススクールがある。MBA/MPHをデュアルディグリーを目指すこともできるし、MPH生でありながらゴイズエタの授業を取ることもできる(詳しくはこちらを参照)。またCDCやエモリー大学病院などはデロイトやPwCなどのコンサルティング会社に多くの業務を発注しており、こうした会社もMPH修了生を雇っている。

グローバルヘルスはどうなのか?

このように書くと「じゃあ、あなたが専攻したグローバルヘルスはどうなの?」と言われそうだ。ロリンスの国際保健学科も感染症関係が強いという傾向はある。具体的には、環境衛生学科と連携してWASH(水と衛生)や動物媒介性疾患に関する教育・研究は盛んだと思う。また国際保健学科長(だけでなく学長も)がAIDSの専門家なので、AIDSに関する研究は盛んである。

とは言え、国際保健学科には実に多様なファカルティがいる。疫学者から質的研究者まで、VPDの専門家から糖尿病の専門家まで。逆に言えば、自身の興味と専門分野が合致する教員をみつけることは容易い。これは英米の大規模な公衆衛生大学院で学ぶことのメリットだと思う。ちなみに私は途上国の保健システムに興味があり、ロリンスは必ずしもこの分野で強い訳ではなかったが、それを専門にしている教員はすぐにみつけることができた。

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他に気がついたら、また付け足したいと思います。

※1:2015年度の話であり最新ではない可能性があります。
※2:後にオックスフォード大学にも国際保健の修士課程プログラムがあることを知りましたが、当時は注目してませんでした。また細かく探せば、他にもプログラムはあるはずです。

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