日本への一時帰国が長期化している場合、日本で課税されます
日本から海外子会社に出向している社員が、新型コロナウィルスの影響により日本に一時帰国し、現地に戻れずにそのまま日本で現地業務を行っているケースが増えています。
このような場合、次のような課税リスクがあるので注意が必要です。
・駐在員個人の給与に対して20.42%の課税がされる
・その駐在員がPEとみなされ、駐在先の法人が日本で課税される
20.42%の課税
2020年7月1日現在、日本は73か国・地域と租税条約を締結しており、その条約において日本と締結国間で、法人や個人が二重課税とならないような措置が取られています。
例えば、多くの租税条約で「短期滞在者免税」という取り決めがされており、短期間の出張者に対しては、出張先で課税しないこととなっています。
日本の親会社に在籍する社員が米国に出張する場合、日米租税条約のつぎの条件をすべて満たせば出張先(米国)で課税されません。
・年度を通じて米国への滞在日数が183日を超えないこと
・その出張者の給与は、日本の親会社から支払われていること
・その出張者の給与は、米国に所在する拠点で負担されるものでないこと
日米租税条約第14条2
ところが、日本の親会社から米国子会社に出向している社員が、米国から日本に出張する場合、この「短期滞在者免税」が適用されず、滞在日数分の所得税が日本で課税されることがかなりあります。
なぜなら、日本からの駐在員は、海外勤務中も日本の社会保険を継続するため、日本の親会社からその駐在員に対して給与が支払われことがほとんどだからです。
つまり、現地口座への給与とは別に、日本の口座に親会社から給与が振り込まれている駐在員が日本に出張する場合は、日本の滞在日数分について20.42%の税率で源泉徴収が必要となります。
これは、日本に一時帰国している駐在員が、コロナウィルスの影響により、当面、日本で勤務することになる場合も同様です。
駐在先の業務を日本で行うことによるPEリスク
PEとは、Permanent Establishmentの略で、日本語では「恒久的施設」と呼ばれています。
これは何かというと、駐在員が現地に戻らず、日本で駐在先の業務を行うことになると、駐在先の子会社が日本に支店を持ったとみなされ、日本で法人税の課税を受けるというものです。つまり、駐在員が支店とみなされるということです。
ただ、PEとみなされるかどうかは各国と締結している租税条約の内容によりますので、個別での検討が必要となります。
また、OECDは2020年4月に「COVID-19の租税条約と課税に与える影響に関する分析」を発表し、「COVID-19感染拡大による混乱による、雇用される場所の例外的・一時期的変更は雇用者にとって新たなPEを創出されるものではない」としました。
OECDの勧告は、加盟国の税法に直接的に影響するものではありませんが、OECDのこの発表を受けて、各国で何らかの通達等が出る可能背は考えられますので、今後の動向を注視する必要があります。
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