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inaugural member 時事英語 #12

by 古家

メジャーリーグ、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の快進撃が続いています。そう、今回は野球ネタです。史上初の50-50という歴史的快挙を達成した、1試合6打数6安打、打点10、ホームラン3本、盗塁2というマイアミでの試合を伝える英文記事から、気になる表現を拾ってみました。

まずは最終スコア4-20というrout(「大敗」。あるいは勝ったドジャースから見れば「大勝」)を喫したマイアミ・マーリンズの側から記されたMiami Herald紙の記事から。

https://www.miamiherald.com/sports/mlb/miami-marlins/article292626724.html

大谷選手の50号ホームランについて、マーリンズのSchumaker監督(日本のスポーツ新聞では「シューメーカー」と「シューマッカー」の2種類の表記が見られます)は、
I wish I was in the stands rather than the dugout seeing it.
「ダッグアウトにいるよりもスタンドで(観客として)見ていたかったよ」というコメントを残しています。
I’m proud of the guys that were attacking him and not scared of him.
「うちの選手たちが彼を怖がらずに勝負に行ったことは誇りに思う」とも。

一方、この記念すべきホームランを打たれたバウマン投手は、こんなことを言っています。
It wasn’t necessarily where I wanted it. That’s my best pitch. I’d throw it again. I tip my cap. It was a really good piece of hitting.
「僕が望んでいた結果とは違った。あの1球は僕のベストピッチ。なんなら次も同じボールを投げる。脱帽だよ。あのバッティングは素晴らしかった」
ここでのキーフレーズはtip my capです。直訳すれば「(かぶっている)帽子を傾ける」。
相手に敬意を示すジェスチャーを指すので、日本語では「脱帽する」でいいと思います。

次に、ドジャース側から報じているLos Angeles Times紙の記事から。

書き出しからこんな調子です。
Superhuman. Otherworldly. Incomparable.
Fans are running out of superlatives.
「超人的。この世のものとは思えない。比類のない。
ファンは最大級の賛辞を使い果たしている」

ここで注目したのはsuperlativeという名詞です。この語を初めて目にしたのは文法用語の「最上級」としてではないでしょうか。comparative「比較級」といっしょに習うやつです。fast、faster、fastestとか。この文脈では大谷選手のパフォーマンスをたたえる表現という意味ですから、「最大級の賛辞」としてみました。
この記事ではほかにもinsane(もともとは「正気を失っている・常軌を逸している」ですが、口語では褒め言葉として「ヤバイ」とも訳せます)とかunexplainable「説明できない」などの賛辞が出ています。

三つ目はCNNの記事です。

日本で放送されている番組のticker(画面下端を流れる文字ニュース)でも使われていましたが、
Shohei Ohtani etched his name in Major League Baseball history, becoming the inaugural member of the 50-50 club. という文章がありました。
「大谷翔平選手が50-50クラブの創設メンバーとなり、メジャーリーグの歴史に名を刻んだ」
50-50クラブとは、もはや今年の流行語大賞になるか?というぐらい知れ渡っていると思いますが、1シーズンに50本塁打と50盗塁を達成した選手だけが入れるクラブ。日本語だと「名球会入りした」というのと類似の語法です。
SNSではThank you Ohtani for inventing the 50-50 club. というような表現も見かけました。初めてだから「発明した」と言ってもいいわけです。

さて、このinauguralは形容詞で、動詞だとinaugurate、名詞だとinauguration。これがなかなか興味深い単語で、辞書を引くと類語としてinitiate、commence、beginなどが挙げられています。政治の世界でinauguration speechと言えば「(大統領などの)就任演説」。inauguration ceremonyで「除幕式」という用法もあります。スポーツではinaugural gameで「開幕戦」。いずれにも共通するのは「ここから始まる」という意味ですね。

さきほど引用したLos Angeles Times紙の記事にも
Ohtani achieved MLB’s first 50-50 season, founding a once-unfathomable club that now has a membership of one.
「大谷選手がメジャーリーグ初のシーズン50-50を達成し、かつては想像もできなかったクラブを創設、唯一のメンバーとなった」と書かれています。このfoundも「創設する・設立する」です。

ついでにcommencement speechといえば、大学などの卒業式における「来賓挨拶」。学生たちの卒業=社会人としての船出にあたって、著名人などが「ここから始まる」人生の旅路に向けて、はなむけの言葉を贈ります。一方、graduation speechだと卒業生自身による「答辞」あるいは「卒業の言葉」。この違いは覚えておいて損がないです。
参考

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