尚学学園 理事長らに対する訴訟 遺族Q&A

本投稿の目的

 前回投稿した内容に対し、一部知人等を通じ、ご質問をいただきました。現時点で可能な範囲で、ご質問に回答することで、前回投稿の目的(下記①、②)達成の一助とするとともに、皆さまへの説明責任を果たしたく、本投稿をいたします。

① 遺族としては一刻も早い問題の解決を望んでおり、我々が把握している事実を問題ない範囲で公表することで、被告等に解決に向けて努力する意思を持っていただくこと

②  本件の利害関係者の方々に、我々が提訴に踏み切った経緯・目的を正しくご認識いただくこと

 前回投稿した内容と同様、下記に記載される内容はあくまでも原告が確認した事実に基づく解釈であり、法的な部分については、一部、見解が分かれる可能性があることにご留意いただければと思います。
「」内は全て録音を文字起こししたものから引用しております。


【提訴の目的について】

Q1:
 本当に損害賠償が最終目的ではないのか?

A1:
 損害賠償が最終目的であれば、尚学学園を被告に含めて提訴した方が、金銭の回収可能性の面で有利となります。しかし、前回投稿で申し上げた通り、我々の目的は学園の健全化・父の名誉回復であり、それらを求めるために、結果的に皆さまにご迷惑・ご心配をおかけしていると思われますが、学園に損害を与えることは一切望んでおりません。また、提訴に至るよりも前の各段階で、話し合いによる問題解決に至るべく、我々としては最善のアクションを取っていた認識です。


Q2:
 被告等とその代理人弁護士は、遺族の目的を、学園の乗っ取りだと主張していると聞いたが、その意図はないのか?

A2:
 『学園の乗っ取り』を具体的に定義すると、『尚学学園の意思決定機関である理事会において、協力者等を用いて過半数の議決権を獲得し、学園を意のままに操ること』になるかと思われますが、我々にそのような意図は全くなく、むしろ、健全な理事会の実現を求めるところです。
 健全な理事会とは、多様な専門性(教育・経営・会計・法律 等々)と高度な倫理観を持つ理事たちにより形成され、学園(生徒・保護者・職員の皆さま)の利益を考えた合理的な意思決定が成される場だと理解しております。
 現行の理事会の状態は、健全な姿からは、かけ離れているように見受けられます。理事長である名城政次郎氏の「こんな理事長に対して逆らうなんて、俺から考えたらもう客観的に見てキチガイとしか思えないよ」という発言や、その妻による「理事長にね、あの、反対するような人っていうのは理事になる資格ないよ」という発言をふまえると、両者は、理事長のイエスマン以外は理事として受け入れられないと思考している可能性があります。実際に、父の死後2週間程度で、大城美穂子氏含め、尚学院と関係の深い方々4名が新たに尚学学園の理事として選任されました。理事長のどのような意見に対してもイエスが求められる理事会は、健全ではないと認識しております。
 
 被告等及び、その代理人弁護士が、我々の行為を乗っ取りと主張しているのは、示談交渉の段階において、我々の代理人を通じ、口頭で、理事・職員としての選任・採用プロセスの適用を提示したためだと解しております。
 その意図は、あくまで、正式な選任・採用プロセスを適用することを求めたものであり、実力を度外視した縁故採用を求めたり、いわんや学園の乗っ取りを画策したりするものではありません。我々は、現在、各々が就業しており、今すぐに無条件で、理事・教員として選任・採用されることを望んでいるわけではありません。将来的に学園に就職する機会を得た際に、被告等に妨害されず、正当な選考過程を経て採否が決せられることを望むものであり、被告等及びその代理人弁護士は、我々の意図を曲解されていると思われます。
 この要求を提示した背景には、2020/9/13の名城政次郎氏の妻の発言があります。将来的には沖縄尚学で勤務したい旨を伝えた際に、名城政次郎氏の妻は、「だからおじいちゃんが心配してるのはね、とにかくあの母親に育てられてるから心の問題でおじいちゃんを尊敬していない。しかも本当に病気だったっていうのを本当に信じてくれない限りはって言ってるの。」と発言されました。さらに、2020/7/26に名城政次郎氏は、「今お父さんの頭が変だとわからんの俺信用しない」と発言されました。
 我々としては、沖縄尚学にて掲げられているグローバル教養人の育成に貢献することを目標として、これまで進学・留学・就職等のキャリアを形成してきました。我々は、その目標のため、各々中学・高校の教員免許を取得済であり、経営学及び教育学を専攻し、決して長くはありませんが、社会人としての経験も積んできました。そのことは、祖父母である名城政次郎氏及びその妻もよくご存知のはずです。その過程が、『父の頭がおかしいことを認めないと沖縄尚学には入れない』という被告等の方針で途絶えることは、非常に苦しいことでした。
 
 なお、被告等及びその代理人弁護士が曲解しているとの話を受け、上記の旨を、2020/10/21に明確に文書で被告等に送付しております。その文書に対して、被告等の代理人弁護士からは、2020/10/22に「大胆かつ赤裸々な要求」「甚だしい思い上がり」との回答をいただきました。我々の真意を説明してもなお、上記のような回答が示されたため、意図的にこちらの問題解決へ向けたコミュニケーションを破綻させようとしているのではないかと疑問を感じております。
 繰り返しになりますが、我々の目的は、学園の健全化と父の名誉回復にあります。我々自身はまだまだ未熟な存在ではありますが、自身の能力を最大限に活かし、学園の健全化に少しでも貢献できるのであれば、幸いではあります。しかしながら、優先すべきは、現状の問題を解決することであり、我々自身の進路に拘るつもりは、全くございません。


【ハラスメントについて】

Q3:
 名城政一郎が、ハラスメントを受けても仕方のない非行をしていたのではないか?

A3:
 父も人間であり、当然、欠点や至らぬ点等はあったと認識しております。しかしながら、被告等が、父の生前に、非行として主張していたことは、我々が認識している範囲においては、事実ではない部分が多くあります。さらに、被告等が主張する通り、父を副理事長職から早急に降ろす必要があったと仮定したとしても、先日投稿した内容に含まれる被告等の行動は、正当化できない/すべきではないと考えております。


Q4:
 ハラスメントだけが自死の理由なのか?

A4:
 前回投稿いたしました通り、我々としては、被告等の一連の行動・発言及び、父の死の前日の理事長の発言が父を追い詰めたと認識しております。
 父としては、何とか名城政次郎氏と協力して、学園を運営していきたいという意思があったため、歩み寄る精神をもって前日にも名城政次郎氏と会話をしております。
 一方で、被告等の代理人弁護士からの回答書には、(父の死の原因が被告等の行為であると主張することは、)『故政一郎氏が叱責に耐えかねて自死を選んでしまう未成熟な児童と同等であるかのような、誤った印象を世間に与えてしまう恐れがあるのではないか』『当方といたしましては、故政一郎氏が、父からのハラスメントや叱責により自死をお選びになるような、ナイーブで脆弱な一面を強くお持ちであったとは認識しておりません』との記載があり、違和感を覚えております。


【利益相反取引について】

Q5:
 学校法人における利益相反取引とは何か?

A5:
 令和元年改正(令和2年4月施行)の私立学校法40条の5が引用する一般社団・財団法人法84条1項2号は、「理事が自己又は第三者のために学校法人と取引をしようとするとき」を利益相反取引としています。尚学学園の理事長は名城政次郎氏、尚学院の理事長も名城政次郎氏であることから、尚学学園と尚学院の取引は、形式的に利益相反取引に該当します。
 利益相反取引は、一般的に、一方の利益のために他方に不利益がもたらされるという不当な取引等が起きやすいため、取引時にはその合理性や決裁プロセスに特に注意が求められると考えられます。


Q6:
 利益相反取引は違法なのか?

A6:
 ①手続きのプロセス、②取引内容の妥当性の2点で違法性が議論されると理解しております。

① 手続きのプロセス
 学校法人において実際に利益相反取引を行う場合、手続き上、当該取引について重要な事実を開示した上で理事会の承認を受ける必要があることが私立学校法40条の5が引用する一般社団財団法人法84条1項2号にて定められていると理解しております。

② 取引内容の妥当性
 利益相反取引の実行の前には、取引内容が学校法人の損害となる恐れがないか、理事会で十分に議論されるべきだと理解しております。取引の実行前に、損害の発生可能性を完全に予見することは容易ではありませんが、少なくとも、取引によって得られるであろう利益・メリットと、取引の金額とを照らし合わせた際に、その合理性が客観的に示されるべきと考えます。
 特に、学校法人は、理事、監事、評議員、職員等の関係者に対し特別の利益を与えてはならないとされています(私立学校法 26 条の 2)。この条文は、令和元年の法改正(令和2年4月施行)で明記されたものですが、これまでも学校法人から法令や寄附行為、内部規程・手続き等に基づかない利益供与は善管注意義務違反であり認められなかったことを明示したものとされています(文部科学省の法改正説明資料)。このような観点からも、取引内容の妥当性が十分吟味される必要があると理解しております。


Q7:
 利益相反取引は金額が少なければ問題ないのではないか?

A7:
 いくら少額であったとしても、理事会承認のない利益相反取引は、手続き上違法であると認識しています。また、いくら少額であったとしても、学校法人として本来負担すべきでない支出があったとすれば、やはり問題が生じうると考えます。
 適切な例ではないかもしれませんが、例えば「10円のガムであれば万引きしても問題ない」という理屈が社会的に通らないことと同様に、取引の違法性は金額によって決まるものではない認識です。
 当然ながら、保護者の皆さまは、沖縄尚学での教育の対価として、学費を納入されています。その資金が、沖縄尚学から他の法人へ、適切な検討過程を経ずに流出するということは、いかなる金額であろうと、あってはならないことと考えます。
 父というストッパーを失い、理事会の構成メンバーにも変化があり、両法人の理事長が同一であるのみならず、尚学院の副学院長という要職にある大城美穂子氏が、尚学学園の副理事長に就任したことから、現状に対し、一層の不安を感じております。


最後に

 10/30(金)に理事会が開催される予定であり、これまで被告等のコンプライアンス違反を諫めていた理事2名の解任が、議案に含まれていると聞いております。実際に解任が議決されるのであれば、学園の最高意思決定機関である理事会は、実質的に、被告等の意見が議論なしに全て通るものになってしまうのではないかと危惧しております。

 父が亡くなった後、理事以外にも、以下の体制変更があったことを確認・聞いておりますが、生徒・保護者の皆さまに体制変更の報告、変更の意図等の説明はされていないと認識しています。
・新副理事長の任命
・理事長補佐の解任
・新理事長補佐の任命
・統轄教頭職の設置/任命
・相談役の任命(辞任済み) ※父が亡くなった後任命されているが、10月中に辞任
 上記は全て、学園の根幹を成す重要な職務ですが、前副理事長(父)が亡くなった後の短期間で変更されていることをふまえると、生徒・保護者の皆さまへの紹介に加え、各々がどのように学園に貢献していくのかが説明されると、皆さまがより安心するのではないかと考えております。

 重ねての表明となりますが、生徒・保護者・職員の皆さまにご心配、ご迷惑をおかけしてしまっていることに対し、大変心苦しく感じております。
 一刻も早く事態を収束させ、皆さまに安心いただけるよう、被告等と学園の健全化に向けたコミュニケーションを取れるよう努めてまいります。

文責:名城政秀 (故 名城政一郎 長男)