サングラスはじめて買った

朝焼けの色が紫だと知ったのは16歳になる前だった
住宅街のガレージの縁石に座り込み一晩中話し込み、一体何を話したかなんて一つも覚えていないけど。
少しずつ黒から紫になるのを覚えている。
綺麗だねって言ったのか、綺麗だねって言われたのか、そもそも朝焼けの紫について話したかも覚えていない。
本当に少しの時間だけ紫だった空は、何事もなかったように青く染まって新しい日を迎えていた。
青くなった空と家族がそろそろ起きてくる時間に追われて、君の家の前から退却したような。
あれから随分と時間が経って君とはもちろん一緒に居ないしお互いの生活は数少ない共通の知人から漏れ聞くくらいだ。
それでも稀に朝焼けの紫を見るとその日と君を思い出すよ。
仕事柄朝に家に帰ることが多くて沢山の朝焼けを見てきたけど紫の朝焼けを見れるのは珍しい。時間帯とお天気ともしかして季節も大事なのかもしれない。
朝まで外で話してたんだから真冬じゃなかったんだろう、そういえば真冬は会えない場所にいたり、つまらない喧嘩のせいで会わなかったりに君と一緒だった記憶はあんまり無い。
きっと真冬にだって君との思い出はあるんだろうけど覚えているのは春の日や夏の湖といつもの川縁と君ん家の向かいの狭いガレージ。
朝焼けが紫なことは覚えているのはきっと僕だけで君は忘れているだろうけど、未だにあの色の話を他の女の子にしたことは無いんだ。

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