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500文字小説コンテスト:αにしてΩ、あるいは桜色のダ・カーポ

ニュースサイトを見ていたら、こんなコンテストを見つけた。
丁度『サクラノ刻』を徹夜でプレイした翌日で、春について思いを馳せていたところなので丁度いい。

ということで、書きました。
500文字以内の超短編ということだったので、小説というよりは詩に近い内容ですが、良かったら読んでいただけたら嬉しいです。

◆αにしてΩ、あるいは桜色のダ・カーポ

――春。それは出会いと別れの季節、円環状に織られた時間の始点にして終点。
暦では1年は1月から始まるが、学校・会社などは4月を起点とする。
これは何故か?
普段当たり前のように従っているリズムだが、よくよく考えてみれば妙な話である。
米国や欧州諸国では、9月入学が多いと聞くし、そもそも全て1月開始とした方が自然だ。
調べたところ、明治頃に国の会計年度を4月開始の3月締めと定めたことがきっかけらしい。
では、130年以上前から、今なお規則が変わっていない理由は何か?
実態としては、多くの企業を巻き込む面倒さ故に変更してないのだろうが、咲き誇る桃色の花びらを見ていると、それが4月始めとする理由なのでは、とも思う。
鮮やかな桜は世界のリズムを指示する反復記号のようだから。
いつか来る終わりまで、咲いては散ってを繰り返す。その姿はどこかボレロを思わせる。
大人の生活は変化に乏しい。生きるのに絶望したくなる程に。
桜は去年も今年も美しい。そしてきっと来年も。
大人が生きていられるのは、その未来への予感があるからなのかもしれない。何故かそんな事を思った。
タン、タタタ、タン、タタタ、タンタン。
……ああ、また一年が始まる。



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