見出し画像

雨と野蛮人

 最近、突然の雨が多い。多分、私が天気予報を見ていないだけで、実際は突然でもなんでもないんだろうけどそう感じる。今日も朝方の短い時間だけ雨が降っていて、傘を持たずに出かけた私はしっとりと濡れてしまった。まあ、別に構わないけれども。
 個人的に雨は結構好きだ。帰り道限定なら、濡れることも悪くないと思っている。帰った後に浴びるシャワーが気持ちいいし、傘の群れの中で一人むき出しのまま歩いていると、なんだか昔を思い出すからだ。どうしても欲しいゲームを買いに豪雨の中を突っ切った日、びしょびしょの姿で受けた大学の追試の日。主な移動手段が自転車だった地元での記憶を。
 こういう言い方をするとイキっているみたいで恥ずかしいが、実際のところイキっているのでしょうがない。大衆に歯向かっていると、特別な強い自分になれるような気がしたんですよね。実際はただの野蛮人なんですけど。
 でも、そのスピリッツは今でも私の心の中に残留している。だから、嘘泣きみたいなレベルの雨で騒ぐ奴は軟弱者だと思っているし、「風邪引くよ」などとアドバイスをされると「引くわけねぇだろ、この俺が」と思ってしまう。文明人への道は遠いぜ。
 天気予報によると、明日もまた雨が降るらしい。先日、折りたたみ傘が壊れて以降、私の家には傘が一本もない。どうしよう、今のうちに補充をしておくべきだろうか? あの憎っくきビニールのあいつを。消費期限一日未満、雨が上がれば腐りだし都会の片隅に打ち捨てられるあいつを。
 そんな事を考えている内に、また雨が降り出してしまった。大人しく、明日また雨に濡れることにしよう。いつまでたっても、野蛮で子供な私にはきっとそれが相応しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?