映撃で目にしたもの

2022年2月5日 上田映劇にて行われたMOROHA「映撃」。

”武道館ワンマン前の地元凱旋公演” などと表現できない(いや、してはならない)、””映撃””という表現が最もふさわしい2時間であった。

私がはじめて『三文銭』を聴いたときのそれとはベクトルの全く異なる、脳天を突き抜ける衝撃を受けるものであった。

どうにかこうにか自分の言葉で、この日に何が起こっていたのかを残したい。そんな衝動に駆られるがままに記録として書き綴ろうと思った次第である。(あくまでも個人のフィルターを通った記録であるため、事実との乖離があるのだろうな…と思いつつ)

はじまりは『一文銭』。
息つく暇もなく『二文銭』に続く。

「文銭」シリーズは全曲聴けるのだろうな…と感じていながらも、鳥肌が止まらなかった。
MOROHAのライブ自体数年ぶりだったので、よくわからない緊張を覚えたが、彼らの世界に引き込まれるのに時間など必要なかった。

『上京タワー』

高鳴る鼓動 突っ込んだ東京

歌いだしがここからだったのは、純粋に歌詞が飛んだからなのだろうか。
(最近のライブのデフォルトなのか…?無知でごめんなさい)

生まれも育ちもいわば田舎
緑豊かで広い空
は?それらが何してくれた?
はっきり言えば恨んでた
どんくせぇ街どんくせぇ空気
明けても暮れてもジャスコジャスコ
フードコートでマクドナルド
ずっとこの街で年をとるの?
絶対嫌だ 行くならば今だ
経験 感性や可能性
無闇に信じ飛び出した故郷
膨らむ希望というより 只々ひたすら
腹立つ位に綺麗な星空が輝き全部奪ってくような
そんな感覚が怖くて 星降る夜の地面を蹴っ飛ばす

飛んだ歌詞の中には明確に故郷の描写があることもあり、アフロさんの意図という可能性を捨てきれない。
「映劇での上京タワー、あの歌詞だしヤバいよな…」という心持ちは見事にかつ爽快に蹴っ飛ばされた。

『恩学』

同行者が「グッときた。泣きそうになった。」と口にした曲。

「身近な人への感謝」がテーマの曲に心を動かされた経験が乏しく、(私には人の心があるのだろうか…)と思いながら生きてきた。

この曲がまっすぐに刺さるのは、「感謝とかそういうことじゃない」次元にあるからなのだろうと感じた。

上田の高校生から、SNSのDMで「音楽でご飯を食べていくにはどうすればいいのか」という問い。
アフロさんの出した答えは、
『俺のがヤバイ』

毎回不意打ちをくらって聴くことになるこの曲、「ヤバイ」以外の語彙を失う。
曲名を叫び歌いだす前のMCを含め、『俺のがヤバイ』は完成形になることをまざまざと感じた。

畳みかけるように、
『勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ』
ギターがどこまでも切なく力強く、静かに背中を押してくれる曲。

「リキッドルームワンマン」が「武道館ワンマン」に変わった歌詞。
武道館ワンマンの実現は、彼らの言うところの「勝ち」なのだろうか。

もしそうであっても、この曲を歌い続けるMOROHAは、間違いなくこの先何度も私を救ってくれる。

『tomorrow』

どうしてもMVに主演されている俳優さんの顔が浮かび、「自分が(俳優さん)だったらどんな心の動きをするだろうか…」と想像するという歪んだ聴き方をしてしまった。

その結果、深めの擦り傷に大量の塩をこすりつけられているような気持ちになった。どういう感想だ…。

『バラ色の日々』

情景が浮かび上がる日常。
口に出すとちょっと恥ずかしいような、くすぐったいような心象風景。
終盤にかけて畳みかけるあまりにも切なく苦しい、それでも現実を生きる描写。

めちゃくちゃなラブソングなのに胃もたれしない、すべてがあまりにも素晴らしく美しい名曲。

『三文銭』

はじめて聴いたMOROHAの曲。

当時の私は聴くたびに泣いていたが、涙の代わりに目をかっぴらき、「上田映劇での三文銭」による衝撃を全力で受け止めたい。
そんな感情を持ちながらこの曲と向き合った。

MCを挟む。ほっこりという表現は的確ではないが、温かい空気が流れているのを感じた。

〇上田でどのように過ごしたか?
UKさん:実家に帰省。上田のショッピングモール内のペットショップで犬猫に癒される。→「相当疲れているのか?」とアフロさん。
アフロさん:スタッフさんと蕎麦を食べた。路地裏で野良猫を見かけた(UKさんのエピソードに対抗し)。

〇差し入れのじまん焼き(上田映劇近くにあるお店の名物 大判焼きのような美味しい食べ物)
UKさんはあんこ、アフロさんはクリームを食べたそう。
「顔的には逆(UKさんはクリーム顔、アフロさんはあんこ顔)じゃない?」

UKさんが(おそらく演奏用にセットされていた)コンデンサー型のめっちゃいいマイクを使って喋っていた。アフロさんはやや嫉妬。

MC後は『スペシャル』から始まった。
「なんでもない日々」を生きる人々を丁寧に描く。MOROHAの真髄が詰まった曲のように捉えている。

UKさんのギター、鼓動や歩みのようなパーカスが劇場中に響き渡り、どこまでも心地よかった。

この曲に限らず、一瞬本当に「無音」が形成されるMOROHAの「間」。
自らも思わず息を止めてしまう。

『革命』
下記の歌詞が、いつもより印象的に聴こえた。

ヒップホップもロックもジャンルじゃない
それは魂の名前だ ギターが一本マイクが一本
俺等は俺等の道を行くだけ
俺は生きているって感じていたい
俺はここにいるってわかって欲しい
居場所はいつまでも原点
その点をでかくして行くだけ

代表曲としてメディアで何度も演奏されているにもかかわらず、いつどこで演奏しても魂が揺さぶられる、凄みをまた映劇でも感じた。

『四文銭』

「お願いします」で深々と頭を下げ続けていたアフロさんの姿。
「君の大好きなライブハウス」は「君の大好きな上田映劇」に。

すべての瞬間が脳裏に焼き付いて離れない。
一番涙を流した、一番好きなMOROHAの曲。

『GOLD』

『四文銭』のあとにコレは………(涙腺ダム決壊)。
歌詞のひとつひとつに、(自分に向けられている…)と錯覚する不気味野郎と化してしまった。

上記の2曲演奏中、己の嗚咽によるノイズだけは発生させたくない、その一心で静かにボロボロ涙をこぼしていた。

傍から見たら「真顔でものすごく泣いている人」だったのではないだろうか(なんたる恐怖映像)。

『Salad bowl』
穏やかなギターで始まり、どんどん世界が広がり壮大になる曲構成が歌詞とリンクしている。とんでもないエネルギーを持っているヤバすぎる曲。

アフロさんの叫びを小さな劇場で受けた体験、忘れることはできない。

「あと3曲、俺たちは全力で演奏するので全力で受け止めてください。」

MOROHAのライブには決して存在のしないアンコール。
アフロさんのMCに応えるべく、最後の3曲に全力で向き合った。

『五文銭』
追いかけ続ける 問いかけの答え
何度も言葉のナイフでぶっ刺され続けているような曲。

鳥肌が立つを超えて寒気のような「ゾワッ」という感触をずっと覚えていた。えげつない。

『主題歌』

コロナ禍において、どうしようもなく押し寄せてくる(きた)哀しさ・やるせなさ。
自らの記憶を思い出し、涙が止まらなくなった。

今の世界をまさに「鏡」のように映し出しつつ、それらをすべて包み込む優しさを持ち合わせている。
タイトルの持つ意味を考えずにはいられない。

『六文銭』

追いかけ続ける 問いかけの答え

その答えは、

あなたがいた だから名曲

すべての「文銭」シリーズがこの歌詞につながる。ヤバすぎる。

「六文銭」の意味するところ、リリースのタイミングなどすべては彼らの折り込み済み。

曲の背景や魅せ方を含め、とんでもない「名曲」を最後の最後に体感できた。

映劇で受けたMOROHAの魂は、確実に自分の魂に憑りついて離れない(※ものすごくいい意味)。
今までも、そしてこれからも、己の魂が完全に消えないように火を灯し続けてくれる存在であると感じている。

そして、もう一度といわず何度でも、この会場で演奏するMOROHAを見たい。

うまく言葉で表現できてない感がすごい…。
とびきりの母国語マスターになりたい。

MOROHA『映劇』セットリスト

一文銭
二文銭
上京タワー
恩学
俺のがヤバイ
勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ
tomorrow
バラ色の日々
三文銭
スペシャル
革命
四文銭
GOLD
Salad bowl
五文銭
主題歌
六文銭



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