必然

高校の旧友と東京で会った。
5年以上も前、大学時代に会ったきりだった。

薬指には光る婚約指輪を付けていて、結婚の話は何となく想像がついた。
大学の頃に出逢った人との婚約だろう。
そのことを尋ねると「もうこんな年なんだね私たち」と言い、笑った。

高校時代は最寄り駅が近かったものあり、よく一緒に下校していた。
自信がなく内気。周りの人とうまく人間関係を築けなかったあの頃の私に、「何やってんの笑」と真っ直ぐ笑って話しかけてくれた唯一の存在だった。
彼女の笑った顔があの頃からずっと好きだった。

今こうして社会に出た者同士で話としていると、お互い仕事に苦労していながらも、それなりの年相応のプライベートを過ごしていることがわかる。
学生時代には共有することのなかった、社会への考えやものの価値観を素直に伝えあうことができる。

一年前、家族、友人、職場、どの環境でも思うようにいかなかった。
一人になりたい時、カフェに本を読みに逃げ込んでいた。
もっと遠く、私のことを誰も知らない世界に行きたい。そう思っていた。

最近、友人は本を読むようになったそうだ。

「何か、何となく一人になりたい時間ってあるよね」

物心ついた頃から群れるのが好きではなかった。
そんな中、ほどほどの距離感で関わってくれた彼女の口からその言葉が出てきて、自分にしかないと思っていたその感情の真意を少し共有できた気がして、それがこの上なく嬉しくて、涙が出そうだった。

高校一年生の頃、帰り道が偶然同じだっただけの出逢いは、偶然なだけではなかったのかもしれない。そう思った。

好きな人が幸せになることは、とても幸せだ。
結婚おめでとう。



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