ドライブスルー
子供の頃は親に連れられて、「何にする?」と聞かれて一生懸命考えて選んだ末にいちばん無難なものを伝えていたが、兄や父の頼んだものが凄くおいしそうに見えきて、あ、こっちにすればよかったかも、と後悔したりした。
今こうして大人になり、ドライブスルーに来ている。
お目当ては、最近話題になっているマックの「月見」シリーズである。
人よりも水分の摂取量が多い私は、水筒ひとつでは全然水分が足りずに毎日喉を枯らせながら帰路を辿っている。ものぐさなので、職場に支給されているものを水筒に入れかえてこようという気にはならない。しかし今日は、何となくドライブスルーで飲み物と何か買っていこうという気持ちになった。
ドライブスルーのワクワク感といったら、これを他に代替して表す方法が考えられないほどに堪らない。車内から一歩も出ずに注文、支払い、受け取りができることにちょっと感動する。久々、ということもあるが、初秋の夕暮れの中、カフェラテを片手に車を走らせるロケーションもとてもいい。
「いや、絶対混んでるよ…」
お店に着く直前、それももう右折したら入口に着くところで、そんな予感がふっと胸の中をよぎった。しかし、それは杞憂だった。
すぐに注文ができて支払いを済ませ、待っているときには「少々お待ちくださいね」ととても若い店員さんが優しく対応してくれた。いつも思うが、マックの店員さんは人あたりがいい方が多い気がする。
月見パイは、とてもおいしかった。
もちろんカフェラテを飲み生きた心地がしたが、今助手席にあの「月見」シリーズが居るんだ…と思うと私は耐え切れずに、別の買い物の用事があったお店の駐車場で一口食べた。少ししょっぱい餅と粒の大きい餡子、それを包むバターがふんだんに使われているであろう厚いパイの風味が口いっぱいにわっと広がって、感動した。
明日の事とか、もっと先の事とか、過去の後悔を考えると悶々としてしまうが、そのときだけはちょっとだけ気分がよかった。それが幸せということなのか。
いい気分転換になった。
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