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ジュニアアスリートメディカルサポート通信Vo.12 〜フィジカルトレーニングと同じくらい重要なメンタルトレーニング〜

ジュニアアスリートメディカルサポート代表の宮田大揮です。我々は、小中学生のアスリートをサポートして5年ほどが経ちました。2024年7月から、クローズされていたサポート体制をウェブ上にオープンしました。具体的には、医学の力をジュニアアスリートの能力を最大限引き出すためにフルコミットする形で使っていこうというのがコンセプトで、アジアから世界に誇れる選手を様々なスポーツで輩出することを目的としています。

第12回は「フィジカルトレーニングと同じくらい重要なメンタルトレーニング」について取り上げたいと思います。このメディカルサポート通信も12回になりましたが、序章をお伝えしている形になりますので、詳しい内容に興味がある方はHPよりご連絡いただければ幸いです。
 ジュニアアスリートの世界でも、ついにストレスコーピングという言葉を耳にすることが出てきました。ストレスコーピングとは、ストレスにさらされたときにうまく対処していくことを指しており、ジュニアアスリートもストレスにさらされるためにそれらにうまく対処する必要がジュニア期から発生しています。

 個人競技では、大会でのプレッシャーやご両親やコーチからの期待などもあり、チームスポーツでは、一体感が作れて「自分たちのチームはいけるぞ!」となり、プレッシャーをはねのけれるケースがある反面、「あいつとは反りが合わない」とか「喧嘩した」「仲間外れにされている」といったストレスも実際に起こっています。今回は、チームスポーツにフォーカスを置いてお話したいと思います。

 チームスポーツの良さの代表的なものは、「集団効力感」が挙げられると思います。「自己効力感」を集団に広げたものであり、チームを構成するメンバーの個々が、このチームとして成功できると思っている状態を指しています。集団効力感を構築するのは、コーチがモチベートしてジュニアアスリートたちの気持ちをのせていく場合と、数人の競技能力の高い選手に引っ張られるように、その他の選手たちが持っている能力以上の力を引き出されることで集団効力感を生じさせるケースがあります。これらは、日々の厳しいトレーニングなどで培われることが多いので、狙ってできるものではないと我々は考えています。

 反面、チームスポーツであるとレギュラーとサブメンバーというポジションの違いが発生するため、集団効力感を全体で共有することが難しく、集団効力感を構築していく段階で、「あいつがいるから試合に負ける」「同じポジションであいつより自分の方が上だ」など、どうしても自分自身に意識が向かず、人を蔑むことで自分を高めることを優先してしまうことがあり、メンタルの崩壊が起こりやすいとも言えます。また、プレーに対する自信もメンタルに大きく影響しているため、自信が持てない状態で試合に臨むと身体に力みを生むため、思ったようなプレーができず、さらに「あいつのせいで負けた」となり、メンタルの崩壊を引き起こします。

 つまり、メンタルトレーニングは競技トレーニングとセットで考えなければなりません。プレーに自信を持てる状態まで練習しておくことで、メンタルが安定するというロジックであり、練習もある意味メンタルトレーニングということになります。これが昭和の根性練習であり、「練習だけがつらいときの支えになる」と今でも信じられている理由です。間違ってはいないので、これは欠かせない考えですが、この後記載するメンタルトレーニングを言葉の暴力や拳で行うことは現代では許容されるものではありません。
 では、メンタルトレーニングとしては何をすればよいのか?ですが、2つの方法が考えられます。1つは「問題焦点型」ストレスコーピングであり、チームに起きている問題を吸い上げ解決していくことで、集団効力感の構築の阻害因子を減らしていきます。他者を責めるような雰囲気になっているチームであれば、「なぜそのような思考になってしまうのか?」「そこを責める以外に解決方法がないのか?」などより深く思考することで解決を試みます。ほとんどの場合、いじめのような構造とは異なるため、「試合に勝ちたい」「良いプレーをしたい」というモチベーションがうまくいかないことで、どこかでベクトルが変わり個人攻撃になってしまっているケースがほとんどなので、基本に立ち戻り、「勝つために必要なこと」へフォーカスするように修正していくことが重要です。これは、コーチやキャプテンなどの導きが重要になります。
 2つ目は、「情動焦点型」ストレスコーピングであり、大きな問題が発生していても、すぐに解決できなければそこを深く考える前に一度保留にしておいたり、ストレスを回避するために気晴らしになるようなイベントやオフをしっかりとるなどの対応が考えられます。これは、一見逃げているようで良くないイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、今の現状(実力)で、その状況を乗り越えられない場合には、その問題は一旦先送りにしておいて、より試合に効果が得られるようなトレーニングに目を向けたり、練習そのものをオフにしてしっかり気晴らしをするのも1つの方法です。どちらが良いということはありませんが、大事なのは、「なぜ、この選手にはストレスがかかっているのか?」を周りの大人が認識し、問題解決できそうであれば、じっくり考え、現時点での解決が難しければ一旦先送りにすると良いと我々は考えています。

このようなことに医学的にフォローすることは日本の保険診療ではできませんので、小児科などで相談することができない側面もあり、我々は2024年7月からジュニアアスリートメディカルサポートとして一般向けにオープンいたしました。ご興味のある方はぜひとも下記サイトもご覧ください。


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