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ジュニアアスリートメディカルサポート通信Vo.10 〜昔ながらの鉄下駄を使ったトレーニングを科学する。ウェイトベストのメリットとデメリットから考察する〜

ジュニアアスリートメディカルサポート代表の宮田大揮です。我々は、小中学生のアスリートをサポートして5年ほどが経ちました。2024年7月から、クローズされていたサポート体制をウェブ上にオープンしました。具体的には、医学の力をジュニアアスリートの能力を最大限引き出すためにフルコミットする形で使っていこうというのがコンセプトで、アジアから世界に誇れる選手を様々なスポーツで輩出することを目的としています。

 第10回は、「昔ながらの鉄下駄を使ったトレーニングを科学する。ウェイトベストのメリットとデメリットから考察する」を話題にしてみたいと思います。
 今の方は、鉄下駄などはご存じないかもしれませんが、文字からも重たい下駄であることは推測がつくと思います。昭和のアニメでも「巨人の星」などでも使っていた「大リーグ養成ギブス」はまさに昭和の子供たちの憧れで、あれを着けてトレーニングをすると魔球が投げられ、プロ野球選手になれると思わせてくれたものでした。
 あるyoutubeの動画で、サッカーの松木安太郎さんが学生時代にトレーニングの一環で鉄下駄を履いていたとコメントしておりましたが、もちろん、科学的ではないとコメントがありました。では、本当に非科学的なのでしょうか?確かに足だけに負荷をつけることで、アキレス腱や足首、膝関節などに過大な負荷をかけるため、怪我のリスクを高めるので推奨されるものではありませんが、現代でも同じようにウエイトを着けて走ることでスピードを高めたり、ランニング中のバランス能力向上を求めているアスリートは一定数います。どうしてもトレーニング内容から母集団が少なく、有意差を出せるほどのトレーニングメニューではないのですが、現代では着るタイプのウエイトベストについての考察が少しずつ論文として発表されるようになりました。海外の論文もいくつかありますが、このnoteではわかりやすいために日本語の論文を引用したいと思います。

https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/db/seeds/descente12_11_tamura.pdf

もし、もう少し論拠を必要とする方は、2012年の「The Journal of Strength and Conditioning Research」で発表されたものを参照されると良いかもしれません。  結論としては、体重の10%程度のウェイトを身体につけることで、スピードやバランス能力の向上につながることを結論としています。
もちろん、デメリットとしてランニングフォームが崩れることや前述のように怪我のリスクが高まることも述べられており、極力ウェイトを左右均等に着けてラインニングフォームを崩さないようにするウェイトベストを装着することが良いと言及しています。
 実際に、少数ですが我々の施設でも希望があったためにウェイトベストを用いたトレーニングのサポートを行いましたが、装着時のトレーニングと外した後のトレーニングで、ランニング時の感じ方が異なることを確認しており、「とても軽くなった感じがある」「いつもより風を切って走っている感じがある」とのコメントが聞かれています。ただし、負荷の設定はかなり慎重にやらなくてはならず、脊椎の負担には気をつけなければなりません。

 実際のスピードとしては、速度上昇では有意差は出せず(母集団の少なさと実測値の上昇がないケースもあるため)、本当の意味で速度上昇があるのか?どうか?は不明ですが、第2回の通信で述べたように、ジュニアアスリートにとって良い意味での認知の誤認は重要で、「自分は速く走れる!」という誤認は重要で、その一つの方法としてウェイトベストを利用する方法が挙げられます。ランニングのトレーニングやスイミングの際にチューブを用いて、引っ張ってトレーニングする事で、使用前と使用後で大きく認知が変わり、それが最終的なパフォーマンスの改善につながることもわかってきているため、チューブトレーニングのみでなく、ウェイトを用いたトレーニングという方法も決して非科学的とは言えないと我々は考えています。なにより、子供たちはこのようなアニメのようなトレーニングを意外に好んでやってくれますので、モチベーションの高いトレーニング方法とも言えます(医学と一緒で推奨度が高いわけではないが、意味はあるといったものでしょうか)。

このようなことに医学的にフォローすることは日本の保険診療ではできませんので、小児科などで相談することができない側面もあり、我々は2024年7月からジュニアアスリートメディカルサポートとして一般向けにオープンいたしました。ご興味のある方はぜひとも下記サイトもご覧ください。


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