自転車

1人で夕暮れの学校内を歩く。高三の秋の始まり。過去を振り返るように、僕を殺していく。
思えば、3年間色々あった。でも、言葉にするとあまりにも小さくて陳腐で在り来りな話になってしまいそうで。
高校一年生の頃に、好きになった女の子。高二の時に振られちゃったけど、まだ好きだよ。なんて、言えたら楽だろうか。友達がきっと出来ると言ってくれた君。正解だったね、思っていたよりも多く友達ができたよ。
卒業までに、手を繋ぎたかったななんて、軽々しく言えない所が、僕が振られた理由なのかもしれない。
こう書いている今も、誰にも分からない君のことを思っている。ラブレターにも似た、遺書。笑えないような、くだらない話。
言葉はいつだって僕を僕たらしめてきて、君に届かないように君は努力している。かわいいね、なんて。いつか、君も結婚して子供を作ったりするんだろう。僕の見えない場所じゃないといいなって、くだらないね。
忘れられない思い出と、忘れたい感情。
どこまでも消えない悲しみと、いつまでも消えない愛。
愛は、夏の終わりにさらわれていく。ねぇ、奇跡ってなんだろうね。全ては必然なのに。
急にひとりになりたくなったり、君を抱きしめたくなったり。付き合えてもいないのに、きもいね。笑ってよ、笑ってくれよ。
僕はどうしようもないんだからさ。君にかけられた呪いが溶けずに今まで生きてきてしまったんだ。誰かを傷つけて、誰かに傷つけられて。僕がいつか君を忘れてしまった時に僕は死ぬんだろう。
消えてしまいたい夏と、来て欲しくない秋。
少し早く来てしまった感傷の波に呑まれながら、いつか隣に来てくれると祈っています。
そんな、センチメンタルなLINEを送れるほど馬鹿じゃないよ。私小説、死傷説。私の言葉が誰かに届いて、誰かの言葉が私に刺さる。
みんなひとりぼっち。終わらない歌を歌おうよ。終わってしまう今のために。サヨナラなんて言えないように。終わるってことはまた始まってしまうんだ。
馬鹿みたいに。

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