『パスコースがない?なら作ればいい。』を読んで敗北した話

passコース

正論か?暴論か?

観戦数=2000試合!
今最も注目される論客、小柳ルミ子。
圧倒的な「観戦力」から導き出された独自のサッカー論を、この一冊に凝縮。
サッカー愛がとまらない。

『パスコースがない?じゃあつくればいい。』
小柳ルミ子 著
東京書籍


お疲れ様です、ブルーアイズです。
今回は小柳ルミ子氏の『パスコースがない?じゃあ、つくればいい。』を読んだのでその感想をつらつらと書いていきたいと思います。

尚、この記事はまともな書評ではないのでそこのところはご了承ください。

何かと話題になりつつ実際に読む人がほぼいないこの本でしたがこの度図書館にいったところ偶然にもこの本があったため試しに読みました。

くれぐれもこの本はサッカー好きで何かしらの知識を深めるために読む人を対象にしているわけではないということをご理解してください。
ちなみに私はその層なので非常に物足りない内容となりました。

ある程度想像つくと思いますが、年間2000試合を観戦する人物が提唱する画期的なサッカー論なんて一切書いてありません。
解説なんてほぼありません。
選手の解説もわずかにありますがそれも数試合見れば、あるいはググれば出てくる程度の内容です。
はっきり言ってサッカー素人のブログかTwitterと同レベルです。

ただ、何から何まで悪かったわけでは無く、私が感じたこの本の良かった点は以下の通りです。

・サッカーのプレー経験の無い素人の意見を見られる

・サッカーと実社会の共通性への言及

・(読者自身が海外サッカーに触れていないならば)スター選手の特徴を知ることができる

とまあこんな感じでした。
思ったよりは評価できました。
繰り返しになりますが何から何まで悪かったわけでは無いんですよね。
言ってる内容も間違いでは無いと思える内容ではありました。

また、サッカーと実社会の共通性の部分は言及する書籍をあまり見ないから評価点に加えました。

ここから先はツッコミと言いますか不満点を述べます。

・素人ならではの意見を、と謡っているが経験者でも感じてるし言わない程度の内容

・選手の人間性に着目しているが主観的な意見が多数見られる

・全4章のうち第3章はただの旅行記

・ダメ出しに関してはWhyやHowの部分は一切書かれていない

・上記とほぼ同じだがタイトル詐欺とも言えるような内容

最初の方に言ったことと被るものもありますがこのようなところです。

素人ならではの~の部分は当たり前のことしか書いてません。
玄人が言われて「そういえばそうだね!」ってハッとさせられるとかそういう類のものでもありません。
後にも通じますが感じたことを挙げているだけで熟考した上で結論を出すわけでは無くフィーリングの意見が大半です。

特に気になったのは日本代表のサッカーに関してバルセロナのように個人レベルが高いわけではないのでパスをつなぐよりもゴールへ向かうことを最優先にするべきだ、という部分です。
確かに一意見としては無くはないが、ゴールへ向かうことを最優先とするサッカーとはどういうサッカーなのか?
ロングボールを蹴りこむ堅守速攻なのか?前線からのプレッシングで高い位置で奪い取ってそのままゴールへ向かうサッカーなのか?そもそもそれに合うサッカーができるのか?更に言うとパスを繋ぐサッカーはゴールへ向かうことを最優先としていないのか?
疑問が湧いてくるばかりである。

選手の人間性~の部分も著者の意見として有名な話ではある。
メッシの人間性は素晴らしい、凄い選手なのに謙虚で理想のメンタリティだ、自分を怒りっぽいと言っているがそんなことは全く思わない、などと著書の中で言っています。
あるシーンを取り上げて試合中に苛立つことが無いとも言い切ってますが、これも非常に疑問です。
彼女の眼には苛立っているところが映らないようです。

また、球離れが悪いシーンを取り上げたヤヌザイやエゴイストであると言い切ったロナウドのことなど批判とも取れる内容もありました。
とにかく主観的で好きな選手の良い部分と嫌いな選手の悪い部分しか見えていないようです。

ただの旅行記ですが、小柳氏がスペインに言ってサッカーを見たりモリエンテス選手や乾選手と会って話すなどの内容です。
ここで全4章の内容に軽く触れますと
 第1章 小柳氏の好きな選手とわずかばかりの解説
 第2章 底の浅い素人論
 第3章 小柳氏の渡西記録
 第4章 底の浅い素人論(日本代表編)
になります。
スペイン行きに興味があったり小柳氏のファン以外は飛ばしても大丈夫だと感じました。

WhyやHowの部分が一切書かれていないという部分とタイトル詐欺とも言えるような内容ですがこれがこの本の最大の問題点です。
まあそんな部分がまともに書けるわけがないと読む前から思っていましたが案の定といったところですかね。

これも日本代表のパスに関して味方や相手の状況を考えた適切なパスでは無く責任逃れのパスをしている、と言っています。
確かに状況を考慮した効果的なパスの必要性はありますが、何故著者の言及している責任逃れのパスが生まれるのか、味方を思いやったパスとはどのようなパスなのか、どうやったらそういったパスが生まれないのかの言及は一切ありません。

パスコースがない?なら作ればいい に対するアンサーは
・相手を揺さぶって翻弄すればスペースはいくらでも作れる
・ボール1個分あれば良い

これだけです
繰り返しますがパスコースが無い時のコースの作り方はこれだけです。
どのように揺さぶるのかは一切書いていないし、そのようなスペースが何故生まれるかの理由も書いてありません。
書けるわけがありません。

これに限らず、日本代表に対する言及もそのほとんどが技術が足りていないで済ましています。
そりゃあ勿論バルセロナをはじめとする世界トップに比べれば日本代表の選手の技術が足りていないのは紛れもない事実ではありますが、その一言で済ます程度のものでしか語れないということが読み取れます。


最後に一通り読んでみての感想ですが、なんとも言えない敗北感が残りました。
上述の通りサッカー素人の素人なりの意見を知ることができたという点は良い部分が無くはない、無理やり探したレベルです。
自分の興味を消費できた点も良かった点に入れられるでしょう。


しかし、読むことに費やした時間、この書評を書いている時間を浪費させられました。
そして残った物などほとんどありません。

何よりもどう考えても地雷の本を読んでしまうという出版社の思惑にまんまと乗せられたという部分に敗北感を感じました。

なのでこれを読んだ皆さんはくれぐれもこの本を手に取って読むなどという愚かな行為をしないでください。
まあ私の記事を読んでいる時点である意味敗北ではあると思いますがね。

以上、ブルーアイズでした。

『パスコースがない?じゃあつくればいい。』
小柳ルミ子 著
東京書籍


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