「利他的」であることについて

ある所に書いたけど、日の目を見なかったのでこちらに。

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経済学者のジャック・アタリ氏が、何かの番組で「いまこそ人は利他的にならなければいけない」と発言していた。もちろん僕もそう思う。

ここ数十年、「利己的」に振る舞うことがいたるところで奨励されてきた。政治も経済も教育も、他者を蹴落とし勝者が多くの利益を得ることこそ正しいことだと言う人が少なくなかった。利益を得るのは成功で、成功者は常に正しく、貧しい弱者は自己責任。今もそういう「本音」や「真実」を語る人が多い。しかし新型コロナウイルスは、人を選ばない。それは、結局のところ人類が運命共同体であることを、改めて示唆しているように思う。

数ヶ月前、海の向こうの悲劇を自分ごとと捉える人は少なかった。自分たちと無関係な「武漢ウイルス」。そんなことより我が国のオリンピックが大事だと思っていた。しかし対岸の火事は日本へもやってきた。運の良い人は家へ引きこもることができるが、働かなくてはいけない人や、正しい情報を得られない人がいれば、ウイルスはさらに拡散する。「馬鹿が感染するのは自業自得」「貯蓄のない奴は自己責任」。そういうこれまでの理屈は通じない。誰かが感染するほど、人類の、すなわち自分自身のリスクが高まっていく。僕たちはいまこそ利他的にならなければいけない。買い占めを控え、外出を自粛するなど当面のことだけでなく、もっと大きな意味で利他的な社会をつくらなければならないと思う(なんて当たり前の意見なんだろう!)。それは、理想論でも綺麗事でもない。冒頭のジャック・アタリ氏は、利他的であることこそ、真の意味で利己的なのだとも述べていた。



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