「外」から招かれた少女達。

——ローゼ・ドナード。

  穏やかそうに見えてお転婆な娘である。ポムフィオーレ寮所属している三年の女生徒だ。ポムフィオーレ寮に選定されたことが不思議な位だわ、と寮長であるヴィル・シェーンハントは語っていた。ローゼの選定には闇の鏡も悩んでしまったらしい。「外」つまりは「前世の記憶持ちの転生者」であり、ツイステッドワンダーランドの人間ではない娘だからだ。気品や品格、マナーの心得も持っているし、探究心も強いローゼは可能性の幅が広かったというのが正しいかもしれない。戦闘力が強く周囲への理解力や適応力も高い為、どの寮でもソツなくやっていけるかもしれないと——“あの”闇の鏡を悩みに悩ませた娘である。


——シンシア・セレナーデ。

  自分自身に自信が持てない。シンシアは優しい。けれど、優しいと甘やかすのでは意味が違ってくる。ただ『優しい』のではない。厳しい時には厳しく、怒る時には怒らなければメリハリがつかず、示しがつかない。ただ怒る、叱るではない。あくまでも言葉は静かに大きな声を出すのではなく声質な重圧的な重みをのせて相手に訴えかける。彼女も「外」からこの世界へ迎えられた娘である。彼女は過去に自ら自殺未遂をはかっており、肉体に後遺症を負ってしまっている。海に身を投げて流れついた先がシンシアが住む世界とは違う“この世界”だったのだ。泡となって死ぬ運命にあった人魚姫。許されぬ愛を抱いてしまった彼女は、消えてしまいたいと自殺をはかったそうだ。——王子と実兄に恋心を抱いてしまった罪と罰。自身の感情が許せなかった。足や喉に後遺症が残ったのも、恐らくは償いをせよとの海の魔女からのメッセージだったのかもしれない。

  アーシェングロット家に保護されたシンシアは、セレナーデ家の養女になる契約を交わし、恩人であるアーシェングロット家には家庭教師として通っていたらしい。子息のアズールを弟のように可愛がっていたそうだ。年齢は、シンシアの方が年上である。三つしか差はないのだが、シンシアは落ち着いていて、飲み込みも早く周りから聖母のようだといわれていた。男子校であるナイトレイブンカレッジに通っているのも不思議な事だが、彼女の元にも馬車が来たのである。アズール達より先に入学したらしく、ローゼとは入学式に知り合っていた。

——ひばり。

  例えるなら——嵐のような、台風が過ぎ去った後のようなものだろうか。`考えるよりも行動あるのみ、猪突猛進なトラブルメーカー、オンボロ寮の監督生は負けず嫌いな頑固者。ヒロインよりもヒーローが向いてるかもしれない。永遠の主人公とも呼べる。男子校であるナイトレイブンカレッジの中でも怯む事なく男子生徒に混ざって授業を受けている。幼少時代は男子に混ざってサッカーに明け暮れるパワフルな過去を持つ。脅威のスタミナを持ち、性別で比較や侮蔑されるのを酷く嫌った。


  この三人に共通しているのは皆、異世界、或いは「外」からの記憶保持者など、問題児を抱える少女達である。捻れた歪みはバラバラであり、ローゼやシンシアのように十代ではないが、学生として学ぶの女生徒も存在する。「外」から来た女子生徒は総じて、留学生の扱いである。それなりに課題も多く、特待生のように免除を受ける為には試験をクリアしていかなくてはいけないらしい。ローゼとシンシアは己の試練と受け取り、なんなくクリアしている。