詩を書いてみる 「空を」

暗闇に紛れる
見つからないように
息を殺して
月明かりすら恐れる臆病な体
優しく流れる冷たい風が
そっと
通りすぎた

不思議と時間の経過の感覚は無く
流れる風だけが時間の証明を唱えていた
「誰にも見つからぬように」
との祈りは虚しく
月明かりのスポットライトはすぐそこに
何から逃げたいのか
何に守られたいのか
アスファルトに転がった体は分からず
目を閉じても睨む
黄色く丸い光の残影に怯える
触れたアスファルトの冷たい窪みに握手して
夜の匂いは今日も此処に

星を消した空
いつもより暗く見える
その先の光景は知る由もなくて
ただただ冷たく
ただただ優しい
夜の空間
流した涙も大きいだけの体も
アスファルトが誤魔化した
何かを隠した空を仰ぐ
誰も知らない静かな今

不思議と死へ近づいている自覚は無く
静かな鼓動だけが生の証明を唱えていた
「誰にも見つからぬように」
なんて祈りも忘れて
たしかに来る朝を願う
何から逃げていたのか
何に守られたかったのか
今はそんなこと思い出せもしなくて
目を開けても消えぬ
空に響き渡る遠い闇に怯える
触れたアスファルトは少し温もりを帯びていて
生の証明は此処にも

青を消した空
他には何を消し去る
消えた青の居場所は知りもしなくて
冷たく優しい
温かく恐ろしい
月明かり
いつの間にか影を薄めた手も振らずに
勝手に帰っていった
何かを隠した夜空を仰ぐ
少し白む

闇を薄めた空
もっともっと白め
遠のく夜の匂い近づく朝の気配
薄い夜空
薄い青空
薄い月
朝を告げる小鳥たちの「おはよう」の声
この耳にも届いた
何かを隠した薄い空を仰ぐ
今日は星を見せて下さいね

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