ショートショート 「寿命」

 もしかしたら、とんでもない事をしたかも知れません。僕がこんな話題を切り出したのがきっかけでした。



「自分の寿命を自分で決められるとしたら何歳にする?」

「あー、要するに何歳まで生きたいってことか…30かな」

「マジかよ。お前今24だろ、後6年でいいのかよ」

「うん、特にやりたいこともないしな。
でも急にどうした?こんな質問して」

「夢で見たんだよね。知らない人が悪魔みたいな奴に『お前は後どのくらい生きたい』って聞かれてて、そいつは3秒って答えたの。そしたら本当に3秒後に死んだっていう」

「ふーん。じゃあさ、自分が決めた寿命の年数が自分じゃなく、世界のどこかにいる他人に反映されるとしたら、お前は何年って答える?」

「例えば、俺が1年って言ったら俺の知らない誰かの寿命が1年になるってことか?」

「そう。でも、その誰かは自分の寿命が残り1年って知らない」

「う~ん、1000年。面白そうだし」

「さすがの性格の悪さだな…
じゃあさ、自分が指名した相手の寿命を決められるとしたらどうする?
もちろん、指名した相手は自分の寿命を知らない」

「あー、それなら1か月にするかな。自分の寿命が残り1か月と知らないで、どれだけ無駄な時間を過ごすか観察したいからな。
もちろん、指名するのはよくつるむ奴だ。例えば、お前とかな」

「…まぁいいや。じゃあ、お前が決めた寿命が全人類に反映されるとしたら?
例えば、お前が10秒って言ったら10秒後に世界中の人が全員死ぬ。もちろんお前も。
例によって、世界中の人は残り寿命が10秒と知らない」

「あー、ちょっと待ってね…よし、決めた。2週間。ちょうど2週間後誕生日だから」

「2週間ね、リョーカーイ…」

 そう言うと、煙の様にすっと消えました。

「えっ?あれ?山田?どこ行った?」

「おーい、こっちこっち。ごめん、寝坊しちゃって」

 少し遠いところから聞こえる山田の声。

「えっ?山田?じゃあ、さっきのは誰?」

「ん?どうした、びっくりした顔して」

「え?」

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